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よもやま情報館
物価高騰の中での病院栄養科の奮闘記
医療法人ロコメディカル 江口病院
理事長 江口有一郎
2025年4月、本来は米どころである佐賀県でもお米の販売価格が約2倍!また病院経営におけるほとんどすべての物品の値段が高騰しています。そのような中、病院給食をマネジメントする栄養科はどのような工夫をしているのか、早速、科長で管理栄養士の平川美智子が率いる栄養科チームにインタビューをしました。そこでは涙ぐましい努力がきめ細やかに徹底されていましたので、その中の一部をご紹介します。
- 1)ストックを置かない。食材購入時にも相見積もりでの選定だけでなく、ストックにならないように使い切る分だけを購入している。
- 2)旬の野菜や果物を取り入れるようにはしているが、その時期の天候や自然災害等の影響で例年よりも価格が高騰している場合があり、月間献立や週間献立を職員複数名で確認して、栄養価の許す範囲で安い食材に代用できないか工夫している。
- 3)毎日納入して下さる、なじみの八百屋さんが発注書を受け取った段階で「正直この野菜は価格が高すぎるから今、注文するのはもったいない、他の野菜に変えた方が無難だよ」など消費者目線の耳寄りな情報を時々教えて下さるので柔軟に対応している。
- 4)使わなかった食材などで衛生上も返品できる材料は可能ならば返品している。返品できる食材を意識的に選ぶことも。
- 5)お魚や野菜は使いなれた種類で旬のもので価格が抑えられている食材で、できれば地元で入手でき、さらに調理に応用が効く食材を使い切れる量だけを購入している。
- 6)キャベツの芯や人参の皮などクズ野菜をまとめて週2回スープのだしに利用している。
- 7)にんにくなどから芽が出始めた場合は皮をむいて冷凍、刻みパセリやトマトソースなどを多く作り過ぎた場合も冷凍し、後日、別の料理に活用している。
- 8)朝食時に提供する牛乳が飲めない、または誤嚥する患者さまにはヨーグルトを提供するので、ヨーグルトは毎日使用している。品質は落とさないように配慮しつつ単価を安いヨーグルトに変更した。
- 9)発注係はローテーションでやるが冷蔵庫や冷凍庫をみて、在庫分でできるメニューをご提供し、新たに購入は控えている。
- 10)冷蔵庫掃除を週1回行うスタッフが期限の近い食品リストをボードに書き出して献立担当者へ周知し、何を作るかではなく、何に使えるか?でメニューを考案しているなど、厨房内「全体を見回して、今、あるもので美味しいメニューを考えるような意識もしている。」
- 11)手洗い時の手拭きペーパーは2つに折って1枚のみを使用する(これは院内全体での取り組みで年間20万円の節約効果)。
- 12)破損した食器の補充に関して、対応可能であれば100円均一などで乗り切る。
- 13)入退院や食事内容の変更者リストの紙を毎食毎に印刷するが、その際必ず裏紙を使用。検食用の週間献立表も裏紙を使う。
- 14)ミキサーやフードプロセッサーを終業前に次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒しているが、消毒後の溶液を床掃除や排水溝掃除などに利用している。
さらに圧巻の工夫は、もともと部署の年次目標としてSDGsの観点からも「フードロスの工夫の実践」を掲げていましたが、その取り組みの一環です。下膳の際に、洗浄係が残食をチェックし、例えば「Aさまは大きめのお野菜は召し上がらない」や「Bさまは米飯がいつも残されている」、「Cさま栄養補助食品を召し上がらない」といった情報を記録して傾向が分かれば、必要あれば患者さまの病態を把握し、さらに直接、面談し、次回の食事の際にはその方が食べやすいような形態でご提供したり内容を変更できることをご提案して「ちょうどいい量で完食いただけるお食事」をご提供しているそうです。
そして節約よりおいしさを優先させたこだわりもありました。それは「ご飯」です。米は元々はブレンド米を洗米機で洗っていたそうですが、機械の故障による修理代、洗米のための大量の水使用による水道代、米や洗米機自体洗う手間などの課題から約3年前に無洗米(佐賀県産ブレンド米)に変更していました。しかし患者さまからの評判は今一つであり頭を悩ませていたそうです。2024年11月より米の納入価が1.8倍と大幅に高騰したことから「どうせ値段が上がるなら、少し高めでも美味しい“さがびより”の無洗米に変えるのはどうだろうか?と検討し、米屋さんからサンプルを頂き両方炊いて試食を行って自分たちが納得した上で決めさせていただきました。おかげで患者さまからも美味しいとのお声を頂戴しています。」とのこと。
日本航空さまにご指導いただき「日本一美味しい病院食ご提供プロジェクト」で病院食の質を高めようと頑張ってくれた栄養科のスタッフは、そのプロジェクトでも学んだ「特別メニューのご提供のためにも節約するところは節約する」ことを今も日々、意識して実践しているという涙ぐましい努力を聞かせてくれ「感覚的にだが、1〜2割の節約はできていると思う」とのことで、まだまだ続く難局に立ち向かうとのことでした。これを聞いて感謝の気持ちに満たされました。他の医療機関などではどのような工夫が施されているでしょうか?「うちの節約自慢」もお聞かせください。
なお、病院給食の一部は、インスタグラムでもご紹介しています。
https://www.instagram.com/locomedical_eguchi_hospital/
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