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よもやま情報館
災害時だけではなく日常業務における質向上にも非常に役にたつ
ロジスティック研修
医療法人ロコメディカル 江口病院
理事長 江口有一郎
2026年2月28日(土)13:00〜17:00まで全日本病院協会主催の「AMATロジスティック研修」に参加して参りました。
事前にオンラインで10分程度の短時間の2つの動画を視聴して、当日、本番の研修への参加となります。研修では救急・防災委員会の委員長の上村晋一先生による開会挨拶を賜り、講師はDMATなどでこれまでも全国、海外での災害派遣での活動経験が豊富ないわば百戦錬磨の先生方によるご講演やファシリテーションによる実習があります。講師、ファシリテーターの先生方はAMATの白いベストを着用されており、緊張感を醸し出します。参加者は医師以外にも一般事務職の方や看護師、臨床工学技士、医師事務作業補助者など多職種にわたっていました。
研修の構成は、全日病の災害派遣医療チームの構成におけるロジスティックスのポジションや役割がよく分かる講演の後、4〜5名に分かれての班としての演習があります。そこにも講師の先生方がファシリテーターとなって、演習の取得をご指導、ご支援してくださいます。
災害時に実際にログインして訓練モード画面でオンライン入力するEMISやクラウドに置かれたスプレッドシートに情報等を随時、アップデートしていくDSSTの入力演習やディスカッションがあります。そして非常に勉強になったのは「寸劇」と言われる実際の派遣の想定演習です。それぞれの班に分かれて、各班の演習エリアを区切るパーテーションには、貼り付けタイプのホワイトボードに実際に手書きで災害の状況が記載され、被災地の地図も貼られ、そこで情報収集をして、支援場所に向かうという構成で、車のハンドルが印刷された模擬災害派遣自動車に乗り降りしながらの本番さながらの実習となります。そこではチームの活動記録や活動中に得た情報を記録する「クロノロジー」と呼ばれるしっかりした作りの「LEVEL BOOK」という小型の手帳を参加者全員に一冊ずつ渡され、チームのCSCA(※)確立のためのロジスティックス活動としての災害本部等での情報収集の演習として、その手帳に適宜、重要な情報や経過について記録を取りながら演習は進んでいきます。そして、その記録が派遣時に適切に役に立つ情報が記録できているかなどの振り返りがあります。またロジスティックスを含む災害支援に向かうチームを様々な事項で支える「後方支援の重要性」について、それから実際のAMATによる災害派遣での示唆に富む事例や困った事例が記載されたシートを各受講者が読み上げ、ファシリテーターが解説してくださるという構成の研修でした。平時に医師として働いているだけでは、災害の現場では全く役に立てないことが実感されます。
研修はもちろん災害時にAMATロジスティックスの隊員として活動するために開催されますが、講義や実習では日常診療の現場において多職種で営まれる日常業務でも大変、参考になる内容でした。わたくしは、98床、約180名の職員で構成される佐賀県にある病院の理事長として、また内科医としての立場での参加でしたが、いつ、どこで災害や戦乱が起こるかもしれない日々に備えるだけではなく、医療機関としての多職種を尊重しながら、それぞれの強みを最大限に活かしながら取り組む本来業務の質の向上のためにも職種を超えて交代交代で受講させるべきであると感じた素晴らしい研修でした。
最後に、ここまでのクオリティの研修会の開催に向けて準備から研修会本番までを支えてくださいました講師、ファシリテーターの先生方、そして救急・防災委員会の先生方、全日病事務局の方々に深くお礼を申し上げます。
「AMATロジスティック研修」、超おススメの研修会です!
※CSCATTT:災害発生後にとるべき行動である7つの基本原則
C:Command and Control (指揮と連携)
S:Safety(安全)
C:Communication(情報伝達)
A:Assessment(評価)
T:Triage(トリアージ)
T:Transport(搬送)
T:Treatment(治療)
のそれぞれの頭文字であるCSCATTTは、CSCA(組織体制の原則とも言われるロジスティシャンと呼ばれる業務調整員が最低限行うべきいくつかのこと)とTTTに分割して考えられます。実際の災害現場での医療活動では、多くの命を救うために、まずトリアージ(Triage)を行って、限られた医療資源を投入するべき傷病者を選別し、治療(Treatment)や搬送(Transport)の順位を決定します。これらの医療行為(TTT)を効果的なものにするためには、組織的に活動するためにCSCAを確立し、医療チームが医療支援ニーズを解決へ導くためにロジスティックス担当として医療活動以外の全てをマネジメントすることが求められます。