全日病ニュース

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厚労省「介護療養型医療施設の機能は確保していく必要がある」

厚労省
「介護療養型医療施設の機能は確保していく必要がある」

【介護給付費分科会】
15年度介護報酬改定
「廃止問題は別途の議論」―介護療養型の組換えを示唆

 2015年度介護報酬改定に向けた議論を行なっている社会保障審議会介護給付費分科会は、8月7日の会合で介護老人保健施設と介護療養型医療施設を取り上げた。
 事務局(厚労省老健局老人保健課)は、両施設に関する論点(別掲)の中で、看取り、ターミナルケア、一定の医療的処置など、「介護療養型が担っている機能は今後も確保していく必要がある」との認識を示した。
 この認識は「介護療養型が担っている機能」の存続の必要に触れたものではあるが、介護療養型そのものの存続を認めたものとは言い難い。したがって、それら機能の報酬評価を存続させた上で介護療養型の「転換・再編」を進める方針を示唆したものと思われる。
 委員からは事務局の考えを支持する意見が相次ぎ、分科会は事務局提案の方向で議論を進めることで概ね一致した。
 介護療養型の廃止・存続に関して、迫井老人保健課長は、「廃止を撤回するのか、存続期限を延長するのかなど制度上の議論は介護給付費分科会では行なわない」と述べ、制度改正については介護保険部会の議論を見守る考えを述べるにとどまった。  

 事務局によると、介護療養型医療施設の数は、療養病床再編が施行される直前の2006年4月の3,038(うち病院は2,186)から14年4月の1,532(1,183)へとほぼ半減。病床数も06年4月の12万700から13年4月の7万1,328へ、4割も減った。
 その間、介護療養型の入院患者に占める医療区分1の割合は、05年の57.9%から10年の72.6%に増加、一方、医療療養病床では53.0%から12.8%(20対1)もしくは36.0%(25対1)へと下がり、介護療養病床と医療療養病床の機能分化が進んだ。
 その一方で、介護療養型における要介護4・5の割合は90%弱(13年)と高く、しかも、増加傾向にある。
 分科会に提出した資料で、事務局は、(1)喀痰吸引、経管栄養、排尿時の処置などが介護療養型老健より高い頻度で実施されている、(2)看取りやターミナルケアの実施人数が介護老人保健施設と介護福祉施設に比べるときわめて多いことを紹介、介護保険施設の中で介護療養型の機能が重要な役割を果たしていることを明らかにした。

医療・介護提供実態の横断調査結果も見て検討

 介護療養型医療施設は、06年6月に成立した医療制度構造改革法で2012年3月31日の廃止が決まり、老健施設等への転換が促されたが、その後転換が進んでいないことが調査から判明、11年の介護保険法等一部改正法で、現在ある介護療養型の転換期限を6年延長し、2018年3月31日までとすることが決まった。
 その際の附帯決議は、介護療養型の廃止期限の延長については「3年から4年後の実態調査の結果に基づき必要な見直しについて検討する」とした。
 この日の議論で、委員からは「医療と介護をどちらも提供でき、ターミナルに対応できる施設がどうしても必要」と、後期高齢者の増加や合併症をもつ認知症患者に加え、重症者に特化していく医療療養から転入してくる患者が出現するなど、医療機能を十分に持つ介護施設は不可欠であるという認識からの発言が続いた。
 その一方で、介護療養型そのものの存続を訴える意見もあった。この意見に対して、迫井課長は「廃止という制度上の位置付けと、現にある施設にどのようなサービスを提供あるいは継続してもらうのかという現実論とは全く別のテーマだ。その施設の建物をなくしたり、事業をやめたりするということではなく、あくまでも転換や機能分化の話である」と説明。介護療養型の組み替えを考えていることを示唆した。
 その上で、「介護サービスにおける医療・介護の提供実態に関する横断的な調査(14年度に実施する12年度介護報酬改定検証調査)の結果も見て検討することになる」と述べたが、この発言は前出の附帯決議に沿うものでもあり、調査結果は介護保険部会の審議にも提供されるものとみられる。
 介護療養型における機能の確保について、事務局の論点は、そのためには「どのような体制や取組が重要と考えるか。また、医療保険適用病床での看取りやターミナルケアへの対応と比較して、介護療養型医療施設における看取りやターミナルケアの提供にはどのような特徴や違いがあるか」という視点を提示した。
 報酬評価の対象として、診療報酬と重なることのない体制等の要件を考える必要性を指摘したもので、介護療養型の再編を考える上での重要なポイントを示すものとなる。

老健 在宅復帰・療養支援機能強化へ、訪問系の並行展開を提起

 介護老人保健施設に関しては、在宅復帰支援機能・在宅療養支援機能を強化する必要性を強調。在宅復帰率を高めるために、入所時からの積極的な相談体制、訪問系サービスの並行展開、居宅サービスとの連携を視野に収めた方向での検討を提案した。
 その一方で、長期入所者の問題、ベッドの回転率と稼働率への影響、退所者再入所への対策など、在宅復帰支援機能・在宅療養支援機能の強化に伴う施設運営上の課題をあげ、こうした問題への対応を含め、実効性のある案をつくることによってその普及を期す必要を提起した。

□介護老人保健施設と介護療養型医療施設の主な論点(要旨)
●介護老人保健施設
・介護老人保健施設における在宅復帰支援機能・在宅療養支援機能は、引き続き、強化する必要があるのではないか。
・在宅復帰率の高い施設には、積極的な入所時からの相談や訪問系サービスを自ら提供するなどに取り組む施設もあり、また、充実した居宅サービスが提供されている地域にある施設は在宅復帰率が高い傾向にある。これらの取組も含め、在宅復帰支援機能・在宅療養支援機能を高める取り組みをどう考えるか。
・一方で、在宅復帰支援機能・在宅療養支援機能の強化に伴って、施設の運営に様々な影響が出ることが指摘されている。これらについてどう考えるか。
●介護療養型医療施設
・介護療養型医療施設は、他の介護保険施設と比較して、要介護高齢者の看取りやターミナルケアを中心とした長期療養を担っているとともに、喀痰吸引、経管栄養、排尿時の処置及び持続点滴を高頻度で実施している。現在の介護療養型医療施設が担っているこれらの機能は今後とも確保していくことが必要ではないか。
・看取りやターミナルケアの機能を引き続き確保するためには、どのような体制や取組が重要と考えるか。また、それらの医療保険適用病床での対応と比較して、介護療養型における看取りやターミナルケアの提供にはどのような特徴や違いがあるか。