全日病ニュース

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今年度中に、機能別の標準的病床数や支出目標の計算方法案を提示

今年度中に、機能別の標準的病床数や支出目標の計算方法案を提示

【医療・介護情報の活用による改革推進専門調査会】
「医療費支出目標」設定へWGを設置、松田氏が主査に就任

 政府の社会保障制度改革推進本部に付設された「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」は8月11日に初会合をもった。会議は非公開で行なわれ、永井良三自治医科大学長を会長に選出した後、「医療費支出目標」設定の具体的な作業を担う「医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ」の設置を決め、永井座長は主査に松田晋哉産業医科大学教授を指名した。
 WGは、ほかに、佐藤主光一橋大学大学院教授、筒井孝子兵庫県立大学大学院教授、土居丈朗慶応大学教授、伏見清秀東京医科歯科大学大学院教授、藤森研司東北大学大学院教授からなる。
 この日は、松田主査が、自ら開発した福岡県保健医療介護総合データベースを例に、わが国医療費の構造と特徴について説明。その実態を医療・介護のレセプト、DPC、患者調査などの既存データから分析するイメージを示すとともに、「医療費支出目標設定」の作業の方向をレクチャーした。
 その中で、「福岡方式の事例を発展させ、国が標準を示すなど支援を行ないつつ、以下の取組を進める」として、医療費支出目標の作業の概要を以下のとおり説明した。
①都道府県が医療提供体制改革を進める際、医療介護の客観的データをITで統合的に利活用し、標準的な医療機能別病床数、医療・介護の標準的支出目標や質に関する目標を、各レベル(国、都道府県、地域)で設定する。
②まずは、地域医療構想の策定が2015年度から始まることを念頭に、14年度中に、各レベルの標準的な医療機能別病床数や支出目標の計算式(案)を示す。
③保険者はこれらのデータを医療費の適正化や被保険者への情報提供に活用する。その際、PDCAサイクルが実施される仕組みを構築し、医療費適正化計画の改正等へ反映させる。
④これらのデータをサービス提供者が質の管理に活用する仕組みを構築する。現行のレセプト審査も参考に、地区医師会による体系的なピアレビューを導入することを検討する。
⑤以上のシステムを実装することで、支払者、提供者、利用者など、関係者が客観的な議論ができる医療介護情報基盤を安価に構築することが可能となる。
⑥この医療・介護情報を活用することで、今後高齢化が進むアジア諸国へのサービス展開を企画することも可能となる。
 

あるべき提供体制を複数想定、それぞれの医療費を推計

 「専門調査会」の目的は「国において、都道府県が目標設定するための標準的な算定式を示す」(骨太の方針2014)ことにあるが、この目標について一般紙は「医療費にキャップ(上限)を設ける」といった論調で報道している。
 8月16日の全日病経営セミナーで講演した松田氏(写真)は、このことに触れ、「キャップをかけることにはならない」との認識を示した上で、「専門調査会」について次のように説明した。
 「(専門調査会は)まず、あるべき提供体制はなにかを検討し、各地域であるべき提供体制を話し合うための基準と方法を提示する。あるべき提供体制は何パターンかを用意する。その上で、それぞれにかかる医療費を推計することができる。
 あるべき提供体制に関しては将来推計を加えた資料集をつくる。その中で、データに基づいて高度急性期、急性期、回復期、慢性期の配分をどうやっていくのか、医療密度からみたときに各地域でどのくらいの病床数が適切であるか、それを踏まえて、在宅医療がどれだけ必要になるかをデータから推計するなどの方法論を年末にかけて作っていく。医療費の話はその後になる」