全日病ニュース

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神野副会長「介護、外来、健康全般のコンサルも目標・評価の対象」

神野副会長「介護、外来、健康全般のコンサルも目標・評価の対象」

医師臨床研修制度 WGを設置、到達目標等見直しの議論を開始

 医道審議会・医師分科会医師臨床研修部会に付設された「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」は8月20日に初会合を開き、到達目標とその評価方法を見直す議論を開始した。
 WGは福井次矢聖路加国際病院長を座長に選び、今後の議論の進め方とおおまかな論点およびスケジュールを確認した上で、自由討論を行なった。
 医師臨床研修制度については、医師臨床研修部会が昨年12月にまとめた報告書で、2015年度研修から適用される見直しの内容が決まった。
 その議論で、「医師としての人格をかん養し、基本的な診療能力を身に付けること」とされている基本理念は堅持することで一致したものの、到達目標とその評価方法のあり方に関しては意見が分かれたため、次回5年後の見直しに向けて、臨床研修部会の下に検討の場を設けて議論を続行することで合意、今回のWG設置となったもの。
 「行動目標」と「経験目標」からなり、「経験目標」で、(1)経験すべき診察法・検査・手技、(2)経験すべき症状・病態・疾患、(3)特定の医療現場の経験のそれぞれについて研修対象をあげている到達目標は、医師臨床研修制度が必修化された04年度以降、基本的な内容が変わっていない。
 その到達目標について、前出の医師臨床研修部会報告書は、「急速な高齢化等による人口動態や疾病構造の変化、卒前教育や新たな専門医の仕組み等の医師養成全体の動向等に配慮すべきである」「(入院患者を対象とした症例レポートについて)化学療法や手術等は外来での対応が増加していること等の状況があることから、入院医療から外来医療への移行をはじめとした医療提供体制の変化等について適切に踏まえるべきである」などの意見があったことを記している。
 したがって、今まさに本格化しつつある医療提供体制改革が視野に入ることになるが、他方で、17年度から開始する予定の新たな専門医制度や医学部教育の改革論議を受けた「どのような医師を育成すべきか」というテーマが大きな課題として出現しており、部会報告書も、「医師養成全体の動向の中で、卒前教育のモデル・コア・カリキュラム、医師国家試験、新たな専門医の仕組みにおける各専門領域の目標等との連続性にも考慮しつつ」と、見直し議論の方向に留意を求めている。
 こうした論点を踏まえ、委員である社会医療法人財団董仙会の神野正博理事長(全日病副会長)は、①地域包括ケアが求められる時代に介護の分野は不可欠である、②入院期間が短くなる中で化学療法など外来の比重も大きくなっている、③OTC薬品の普及などによってセルフメディテーションが重視されつつあり、健康全般に対するコンサルティングが求められていくことを指摘。「社会のニーズに対応して」臨床研修の到達目標と評価の内容を見直す必要を提起した。
 WGは、次回12月の会合で15年度臨床研修修了者アンケート調査内容の検討を行なうなど論点を深めた後、来年4月以降月に1回ほど開催し、14年度厚労科研研究班の「到達目標とその評価の在り方に関する研究」の報告や関係者のヒアリング等を踏まえて議論を本格化させ、16年度中に意見をまとめ、医師臨床研修部会に報告する予定だ。