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ホーム全日病ニュース(2024年)第1057回/2024年6月15日号物価等の変化を診療報酬に反映させる仕組みの創設求める

物価等の変化を診療報酬に反映させる仕組みの創設求める

物価等の変化を診療報酬に反映させる仕組みの創設求める

【四病協】2025年度政府予算概算要求に向けた要望書

 全日病など四病院団体協議会は5月29日、2025年度予算概算要求に関する要望書を武見敬三厚生労働大臣にあてて提出した。「物価等の社会情勢に応じた診療報酬体系での柔軟な対応の確立」、「病院の災害面・感染対策面を含めた強靭化対策」を最重点要望事項とした。
 「物価等の社会情勢に応じた診療報酬体系での柔軟な対応の確立」を求める背景には、物価高騰によるコスト増が続く中で、診療報酬が公定価格で価格転嫁ができず、民間企業のような対応ができないことがある。一方、2年に一度の診療報酬改定で医療機関収入の水準が調整されるが、医療費を抑制しようとする圧力が強く、厳しい水準に据え置かれている現状がある。
 要望書では、「高騰を続ける電気・ガス・水道代金、それに給食材料費・人件費支出増大といった多くの事項が病院経営を逼迫させる状況にある」ことを指摘するとともに、「一時的な補助金や支援金でその場は凌げても抜本的な解決策とは言えず、また、診療報酬改定は2年に一度であり、物価変動に素早く対応することができない。そこで、2年ごとの改定を待たずに社会情勢の変化を診療報酬に反映させられる全く新しい制度の樹立を提言したい」との考えを示した。
 これに関連し、重点要望事項でも「物価高騰に対する予算措置」を設けている。こちらでは、具体的な事項に言及しており、2024年度診療報酬改定において、入院時食事療養費の自己負担30円程度の増額以外に物価高騰等に対する対応が行われていないことを問題視した。物価高騰が特に建築コストに大きな影響を与えていることを指摘した上で、「歯科用貴金属価格の随時改定」のような仕組みの検討を求めた。
 「職員の待遇改善により人材確保に資する予算措置」も重点要望事項に盛り込んだ。2024年度改定で医療従事者の賃上げに対応した財源が確保されたものの、人材不足を解消するには十分ではない。それ以上の賃上げを行う環境を整えるため、賃上げ・人材確保・育成に関する診療報酬とは別に、調整基金の創設などを要望した。
 「病院の災害面・感染対策面を含めた強靭化対策」は、相次ぐ地震災害や新興感染症の感染拡大を踏まえ、災害時に医療機関が機能し続けるため建物改修などを行う強靭化対策の要望となっている。震災等からの復旧支援である現状の「医療施設等災害復旧費補助金」では不十分との考えがある。
 具体的には、建物の原状復帰だけでなく、「被災しないための建物の改修、新型コロナウイルス感染症を教訓とした新興感染症等に対応できる医療機関とするための改修に対する予算措置、ハザードマップ等で危険地域に所在する医療機関に対して、建物の改修・設備等の更新や移転に対する予算措置、設備等の更新等の予防措置も行える補助金」を要望した。
 重点要望事項ではそのほか、「医療DX推進に対する予算措置」を設けた。医療DXが「これからの医療にとって欠かせないインフラであり、一刻も早い実装が求められている」とした上で、「医療DXを推進するためには、電子カルテや医事システム等の改修や入れ替え、サイバーセキュリティ対策等が必要となり、それには費用が発生する」と指摘し、国民の保健医療を向上させ、最適な医療を実現するための基盤整備を整えるための予算措置とした。

9項目にまとめ要望を盛り込む
 重点要望事項以外の項目は、①新興感染症対策関係②働き方改革関係③医療従事者の能力向上関係④地域医療介護総合確保基金関係⑤病院における食事療養関係⑥医療機関のDX関係⑦障害保健福祉関係⑧災害対策関係⑨環境への配慮とその他で整理している。
 新興感染症対策関係では、新型コロナ対応から通常の医療体制への移行が図られている中で、財政的援助の一定の継続や、新興感染症に対応している医療従事者を対象とする感染防止の取組みに対する診療報酬の評価や補償などの十分な財政的援助などを求めた。
 働き方改革関係では、医師の労働時間の短縮のための医療機関のマネジメント改革として、タスク・シフト/シェアを効果的に実施するための研究や医療人材確保・養成の財政的補助を要望した。また、◇病院の看護補助者(介護職)の処遇改善◇外国人技能実習生受入れ事業への補助◇介護支援専門員の処遇改善を盛り込んだ。
 医療従事者の能力向上関係では、病院で働く医師の総合的診療能力開発支援事業に参加する医師や、医師が所属する医療機関等への経費補助が必要と主張した。
 地域医療介護総合確保基金関係では、消費税増収額に見合った基金の財源確保や公私の隔たりがない適切な配分を要望した。「病床機能再編支援事業」における全額国庫負担の継続や、地域医療構想に即した病床機能再編で適切に請求できるようにすることを求めた。
 病院における食事療養関係では、病院給食業務を見直し、セントラルキッチン方式や急速冷却調理・加工機を使用する新調理システムの導入に伴う初期費用などの財政的援助を要望した。また、病院給食を存続させるため、実態調査を踏まえ地域事情等を考慮した対策の検討や、入院時食事療養費を1日単位に戻すことの検討を指摘。病院団体と企業等が協同で病院給食の抜本的な構造転換の研究を行うための補助が必要とした。
 医療機関のDX関係では、◇医療情報化支援基金による電子カルテの標準化等にかかる初期導入経費◇病院のサイバーセキュリティ対策への公的補助金◇医療人的資源を補完するICT・AI等の導入◇電子処方箋導入◇地域医療充実のためのオンライン診療◇電子カルテの導入・維持にかかる費用に関する調査研究などに対する補助金を要望した。
 障害保健福祉関係では、◇精神保健指定医の業務を評価し、精神保健福祉法に基づき公務員として任用された場合の十分な待遇を可能とする措置◇「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」を促進するための「心のサポーター養成事業」の普及啓発事業や精神科救急医療体制整備、精神障害者の居住支援・地域生活支援の安定維持等◇公衆電話の代替電話機設置などに関する補助金を要望した。
 災害対策関係では、◇災害派遣精神医療チーム(DPAT)関連予算の拡充◇災害拠点精神科病院整備費の拡充◇震災・火災時等に備えた医療機関の非常用設備の保守・整備に係る経費◇病院の耐震化対応のための補強工事や建替え費用◇震災・火災・水害等の災害からの復旧・復興への継続的な支援、適時適切な支援を実施するための仕組み作りに関する補助金を要望した。
 環境への配慮では、医療機関の省エネルギー対策の強化・推進が急務となっている中で、仕組みが複雑で地域により内容が異なるなど国や自治体が実施する補助・助成事業の使い勝手が悪いことを指摘。「医療機関における高効率空調、高効率コージェネレーション、冷凍冷蔵設備、調光制御設備等の省エネルギー投資を対象とした国単位で統一された継続性を持った補助事業の創設の充実」を求めた。
 その他では、◇控除対象外消費税問題の持続的な調査研究費用◇外国人対応など事務手続きの多様化への対応を盛り込んだ。

 

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