全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2024年)第1057回/2024年6月15日号医療機関へ求めるかかりつけ医機能と報告事項について議論

医療機関へ求めるかかりつけ医機能と報告事項について議論

医療機関へ求めるかかりつけ医機能と報告事項について議論

【厚労省・かかりつけ医機能制度施行分科会】1号機能の報告事項で意見分かれる

 厚生労働省の「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」(永井良三座長)は5月24日、かかりつけ医機能の制度整備について本格的な議論を開始した。医療機関がかかりつけ医機能を有するかどうか判断するために報告を求める機能について、対応可能な診療機能を症状別とするか診療領域別とするかで、委員の意見が分かれた。
 かかりつけ医機能報告では、対象医療機関が都道府県へ1号機能と2号機能を報告する。1号機能では主に医師の意向や診療機能を確認し、2号機能では時間外診療や入退院支援、在宅医療などにおいて、かかりつけ医機能を連携し、確保できるかを確認するものである。
 医療法では、1号機能は、具体的な機能として「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能の有無及びその内容」を報告するとされている。
 これらを踏まえ、厚労省は報告事項について次の3つの案を示した。
 案1では一定以上の症状に対して一次診療を行うことができることを確認するため、症状ごとの対応可能の有無を報告する。具体的には、厚労省が定める臨床研修の到達目標である35項目(表1)のうち、必須項目(下線の20項目)以上の対応が可能と回答した医療機関がこれに該当するとしている。
 案2では、①具体的な機能を有すること及び報告事項について院内掲示により公表していること②かかりつけ医機能に関する研修の修了者がいること、または総合診療専門医がいること(その人数も報告)③17の診療領域(表2)について、いずれかの診療領域について一次診療を行うことができること④17の診療領域について、いずれかの診療領域について患者からの相談に応じることができること―の4つのいずれも可とする場合、1号機能を有する医療機関として2号機能の報告を行う。
 案3では、①具体的な機能を有することおよび報告事項について院内掲示により公表していること②かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無、受講者の有無、総合診療専門医の有無(人数も報告)の報告―としている。
 これらの案に対して、患者団体や保険者の委員は、案1をはじめとする症状別の報告を支持した。「そもそも診療科は標榜されており、それ以外に対応可能な症状を明らかにしたほうが、患者にとってわかりやすい」(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長・山口育子構成員)、「かかりつけ医機能報告の最大の目的は医療機関の選択に資すること。医療機関がどの症状に対応できるのかが明確になれば、患者が選ぶ際にも効果的」(健康保険組合連合会専務理事・河本滋史構成員)との意見が出た。
 しかし、医療団体は、現場での実情を鑑みて診療領域別の報告が妥当との考えを主張した。日本医師会生涯教育・専門医の仕組み運営委員会委員長の角田徹構成員は、「症状は主観的なものであり、実際の現場ではわかりづらい」と指摘。日本医師会常任理事の城守国斗構成員は、「現場の大きな混乱を招く可能性がある」と反対した。
 他方、秋田大学大学院医学系研究科医学教育学講座教授の長谷川仁志構成員は、「症状と診療領域、両方の記載が必要ではと感じる。35項目は医師免許があれば一定程度の判断をしなければならない症状なので、ここから選ぶというのはおかしな話。しかし、診療領域の表示だけでは患者は選択しづらい。大事な症状は医師が対応有無を表明した上で、患者はその症状以外もかかりつけ医に相談できるようにすべき」と、案1と2を組み合わせることを提案した。

【表1】35項目の症状

【表2】17の診療領域

研修は要件化すべきではない
 また、案2では「かかりつけ医機能に関する研修の修了者がいること」が1号機能の報告項目となっている点について、複数の委員から「研修修了の有無を要件化すべきではない」との意見が相次いだ。
 日本プライマリ・ケア連合学会副理事長の大橋博樹構成員は、「研修の必須化に向けては、どの研修を該当とするかから始まり、目的やレベルに応じてどうブラッシュアップしていくのか、幅広く緩やかに検討するのがよい。今いるかかりつけ医が研修を受けていないだけで報告できないとなると、患者と医師の信頼関係にマイナスの影響が生じるのではないか」と述べた。
 未来研究所臥龍代表理事の香取照幸構成員は、「最も大切なのは、まずは患者からの相談にできる限り対応し、必要があれば専門医につなぐこと。何十年も地域で開業していて、患者との信頼がある医師は、座学で十分。現行の研修を受けていないと1号と認めないという建てつけだと、議論に混乱を招く。患者からの相談に応じる意思と能力があることを表明して、それを裏づける担保として研修の実施状況を確認すれば、それでよいのではないか」と述べた。

広くかかりつけ医機能制度に参加することが重要
 全日病副会長の織田正道構成員は、案2が「1号機能が可となった医療機関のみ2号機能報告を行う」としていることに対し、疑問を呈した。
 織田構成員は、「より多くの医療機関にかかりつけ医機能に参加してもらうことが重要。85歳以上の高齢者が増える中、地域医療に従事する医師も高齢化が進んでいる。1号機能を厳格にし過ぎると、かかりつけ医機能が進まなくなってしまう。参加意向のある医療機関にはすべて入ってもらえるような制度づくりをめざすべき。スタート時から間口を狭めてしまうと、参加する医療機関が限定されてしまい、結果的にかかりつけ医機能が何も動かない状況になってしまう」との強い懸念を示した。これに対し、角田構成員、城守構成員も同様の見解を示した。
 また、織田構成員は「かかりつけ医機能では2号機能が最も大切。医師個人の専門性よりも、時間外、休日診療での連携といった、実際に現場をどのように動かしていくかを議論することのほうが重要だ」と強調した。

 

全日病ニュース2024年6月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 法務省民一第2000号 医政発0930第1号 子発0930第1号 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2022/221004_5.pdf

    2022/09/30 ... 令和4年1月4日以降、熊本市に所在する医療法人聖粒会慈恵病院において、妊婦がそ. の身元情報を同病院の一部の者のみに明らかにして出産した例が ...

  • [2] 平成27 年度介護報酬改定に関する審議報告 社会保障審議会介護給付 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/150113_6.pdf

    2015/01/09 ... 人・家族の意向に基づくその人らしさを尊重した ... 担保するため、現行の処遇改善. 加算の位置づけ ... 当該コストは、現行もそれぞれの基本サービス費 ...

  • [3] 医政発 0526 第 12 号

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2023/230529_3.pdf

    2023/05/26 ... <協定に基づく措置の履行担保措置について> ... 現行の特措法では、協定の有無に関わらず、医療 ... く協定を締結する意向・その内容について以下回答 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。
担保  現行  意向