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ホーム全日病ニュース(2024年)第1055回/2024年5月15日号地域包括医療病棟、「重症度、医療・看護必要度」、賃上げ対応

地域包括医療病棟、「重症度、医療・看護必要度」、賃上げ対応

地域包括医療病棟、「重症度、医療・看護必要度」、賃上げ対応

【全日病・2024年度診療報酬改定説明会】医療保険・診療報酬委員会委員が分野別に担当し解説

 全日病は2024年度診療報酬改定説明会をオンライン開催し、4月8日~4月15日の期間で放映した。改定説明会では、全日病の医療保険・診療報酬委員会の津留英智委員長(宗像水光会総合病院理事長)が「地域包括医療病棟」、太田圭洋副委員長(名古屋記念財団理事長)が「重症度、医療・看護必要度」、西本育夫委員(横浜メディカルグループ副本部長)が「賃上げ対応」について解説した。また、改定全体のポイントについて厚生労働省保険局の眞鍋馨医療課長が説明している。冒頭、猪口雄二会長が挨拶を行った。
 猪口会長の挨拶、医療保険・診療報酬委員会の各委員の解説を紹介する。

全日病としても早期に実態把握
  冒頭挨拶の要旨(猪口会長)

 2024年度診療報酬改定では、基本方針の重点課題が「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」となり、改定財源の多くを用いて、医療関係職種の賃上げを実現するためのベースアップ評価料が新設された。ベースアップ評価料の算定では、確実に医療関係職種の賃上げに充てることが求められている。
 入院料の見直しでは、急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度」の大幅な見直しや平均在院日数の短縮があった。高齢者の急性疾患の治療とともに、早期退院に向けたリハビリ及び栄養管理等を適切に提供するために、地域包括医療病棟が創設された。医療DXの推進に向けては、従来の加算が「医療情報取得加算」となるとともに、「医療DX推進体制整備加算」が新設された。また、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定であることに対応した見直しも行われている。
 例年と異なり、6月施行であることも注意すべき点だ。全日病としても、早期に実態を把握した上で対応を検討したいと考えている。

7対1病棟からの転換先を検討
  地域包括医療病棟に関する解説要旨(津留委員長)

 地域包括医療病棟の新設の経緯から説明する。
 2024年度診療報酬改定の議論では、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)での議論が始まる前に、6年に1度の同時改定であることから、中医協委員と社会保障審議会介護給付費分科会委員の一部が参加した「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」が3回開催された。その中で、当初の予定にはなかった「要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療」がテーマとして追加された。
 意見交換会でそのテーマを議論したところ、高齢者救急の受入れ先として、急性期病棟ではなく、地域包括ケア病棟等での受入れを推進すべきとの論点が出され、それに賛同する意見が出た。
 その背景には、コロナの第8波に備え、コロナの重症度に応じてコロナ病床を設けたにもかかわらず、それが機能せず、軽症・中等症Ⅰの患者が重症・中等症Ⅱのためのコロナ病床を埋めて病床が逼迫した経験がある。また、看護配置7対1病床の減少を見込んで2022年度改定で急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度」(以下、必要度)の見直しを行ったにもかかわらず、その後、逆に7対1病床が増加してしまったという事実があると考えられる。
 その後の中医協総会や「入院・外来医療等の調査・評価分科会」の議論では、誤嚥性肺炎や尿路感染症で入院した高齢者の医療資源投入量は、急性期一般入院料1とその他の入院料であまり変わらないとのデータが出された。
 これに対し、私は「高齢で要介護、認知症などがある患者は(医療資源投入量はあまり変わらなくても)通常の急性期の患者よりも手間がかかっている。それを看護配置13対1の地域包括ケア病棟等で診療するのは無理がある」と分科会の委員として主張した。同様に分科会の委員である猪口会長も、「救急搬送時に誤嚥性肺炎や尿路感染症の重症度を判断することは難しい」と述べ、診断が確定しない救急搬送の受入れ時は急性期が望ましく、適切に下り搬送を評価すべきと主張した。中医協総会の議論でも、診療側の委員から、高齢者の救急搬送を地域包括ケア病棟等で受け入れることは難しいとの意見が相次いだ。
 厚労省もそのような意見を一定程度受け入れたのだと想像する。中医協ではその後、新たな入院料の創設を示唆する資料が提示され、昨年12月17日になってようやく高齢者の救急患者等に対応する新たな入院料のイメージが示された。それが地域包括医療病棟となった。
 地域包括医療病棟は、「地域において、救急患者等を受け入れる体制を整え、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に担う病棟」である。名称に「急性期」という文字が入っていないのは、急性期入院医療の機能分化を推進し、急性期病床を減らす方針が背景にあるからかもしれない。
 施設基準をみると、◇看護職員が10対1以上◇常勤の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士が2名以上、専任の常勤の管理栄養士が1名以上◇「必要度」の基準◇ADLが入院時と比較して低下した患者の割合が5%未満◇平均在院日数が21日以内─などがある。
 また、注加算で算定できる「看護補助体制充実加算」について、「当該看護補助者は、介護福祉士の資格を有する者または看護補助者として3年以上の勤務経験を有し適切な研修を修了した看護補助者」と規定され、診療報酬制度上で初めて「介護福祉士」が明示された。
 想定される地域包括医療病棟への移行のイメージは3パターンがある(下図)。
 1つ目は、急性期一般入院料1を算定する病棟の一部を転換するもので、ダウングレードの方法である。「必要度」の見直しで急性期一般入院料1の維持は難しくなるので、この選択肢を考える病院は一定数あると思う。ただし、総合入院体制加算を算定する病院が、地域包括医療病棟を届出可能であるかは確認する必要がある。
 2つ目は、急性期一般入院料2~6をまとめて、あるいは一部を地域包括医療病棟に転換する選択肢である。注加算等を含めれば、評価としてはほぼ同水準となる。答申書附帯意見に盛り込まれたように、今後、急性期入院料2~6の再編の議論が中医協で行われることが予定されており、6年程度かけて地域包括医療病棟に収斂させる改定が行われる可能性がある。
 3つ目は、地域包括ケア病棟からの転換だが、これはアップグレードであり、現実的には高いハードルになると思う。なお、地域包括医療病棟の在宅復帰率は「80%以上」だが、復帰先に回復期リハビリテーション病棟や介護老人保健施設は含まれているが、地域包括ケア病棟は含まれていない。

公益裁定で厳しい見直しが決定
  重症度、医療・看護必要度に関する解説要旨(太田副委員長)

 今回改定では、急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度」(以下、必要度)が大幅に見直されるとともに、平均在院日数も「18日以内」から「16日以内」に短縮された(3面上表)。
 該当患者の基準は、これまで「A得点が2点以上かつB得点が3点以上」、「A得点が3点以上」、「C得点が1点以上」のいずれかを満たすことが求められていた。今回改定では、B項目を廃止した上で、該当患者の基準が2つになり、どちらも満たすことが必要となった。具体的には、割合①が「A得点3点以上」または「C得点1点以上」、割合②が「A得点2点以上」または「C得点1点以上」となっている。
 なお、A項目は「モニタリング及び処置等」、B項目は「患者の状態等」、C項目は「手術等の医学的状況」である。
 B項目の廃止に加えて、A項目が大きく見直され、「創傷処置」「呼吸ケア」「注射3種類以上の管理」などは厳格化され、「救急搬送後/緊急に入院を必要とする状態」は5日間から2日間に短縮化された。
 例えば、「創傷処置」は、「評価対象を、必要度Ⅱにおいて対象となる診療行為を実施した場合に統一するとともに、『重度褥瘡処置』に係る診療行為を対象から除外する」ことになった。「注射薬剤3種類以上の管理」は、「7日間を該当日数の上限とするとともに、対象薬剤から静脈栄養に関する薬剤を除外する」ことになった。特に後者の影響が大きい。
 また、「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」の評価日数が5日間から2日間に変更されたことは非常に厳しい見直しである。
 このような改定が行われた背景を考えると、急性期入院医療の機能分化を推進するという政策目標がある中で、前回改定で「必要度」を見直したにもかかわらず、急性期一般入院料1が増加したことと、地域包括医療病棟の創設と関連する高齢者救急の受入れ問題があると考えられる。
 例えば、高齢者救急に多い内科系疾患の尿路感染症や誤嚥性肺炎の医療資源投入量は、急性期一般入院料1の受入れと他の入院料の受入れで大きな違いはないとのデータが中医協で示された。重症ではない高齢者が急性期一般入院料1に入院しているということを示している。
 急性期一般入院料1であっても重症ではない高齢者救急の受入れが多いのは、そのような患者の状況でも「必要度」の該当患者の基準を満たすことができるからであるとみなされた。例えば、「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」(5日間)の項目を満たすが、他の項目を満たさない患者が多いとのデータが示された。
 今回改定で、救急搬送後の入院等が2日間となったため、3日目以降、項目を満たせなくなる患者が増えることが想定される。
 これらの項目や該当患者割合の基準の見直しは、中医協の公益委員による裁定で決まった。診療側と支払側の意見の隔たりが大きく、見直し案で一致できなかったからである。
 公益裁定による「必要度」の見直しが病院に対してどのような影響を与えるかと言うと、厚労省のシミュレーションでは、急性期一般入院料1の新たな「必要度」を満たせない病院のカットオフ値は10.9%。ただし、これは現状で「必要度」を満たせず、コロナ特例により満たしている病院(4.5%)を除いているため、それを加えると、15.4%の病院が脱落するという計算になる。
 さらに今回改定では、200床未満の病院であっても、急性期一般入院料1であれば、「必要度」の「Ⅱ」が求められることになった。この影響も大きいと考えられる。
 各病院は「必要度」見直しなどの影響についてシミュレーションを行い、急性期一般入院料1の施設基準を満たすことが難しくなるのであれば、他の入院料を検討する必要が出てくる。
 選択肢の一つとして、地域包括医療病棟がある。高齢者救急が増加していることを背景に、急性期入院医療の機能分化を推進するために創設された。
 救急患者を受け入れる体制から早期退院に向けたリハビリテーションや栄養管理など包括的な機能を提供する病棟であり、点数を含め評価できる。しかし、施設基準は厳しく設定されていることには注意が必要だ。いずれにしても、地域包括医療病棟が今後どのような病棟になっていくかを我々は注視していく必要がある。
 一方、特定集中治療室管理料等やハイケアユニットの「必要度」の見直しも厳しくなっている。
 特定集中治療室管理料1・2は、特定集中治療室用の「必要度Ⅱ」の基準を満たす患者が「8割以上」、「入室日のSOFAスコア5以上の患者」が「1割以上」となった。SOFAスコアは、臓器障害の重症度を点数化したものである。
 また、SOFAスコアに患者指標と「専従の常勤医師の治療室内の勤務」を要件としない区分として、特定集中治療室管理料5・6が新設された。宿日直の医師を配置せざるを得ない場合は、かなり低い点数になってしまう。
 ハイケアユニット用の「必要度」も大きく見直された。具体的には、「心電図モニターの管理」や「輸液ポンプの管理」の項目が削除されたほか、「創傷処置」「呼吸ケア」などの見直しが行われた。該当基準割合の基準の変更や「Ⅱ」の導入もある。
 これについても非常に厳しい見直しであると言わざるを得ない。

確実に賃金に充てることが必要
  賃上げ対応に関する解説要旨(西本委員)

 昨今の物価高騰、30年ぶりの賃上げ傾向など経済社会情勢が変わり、医療の人材確保に大きな影響を与えている。このような状況を踏まえ、2024年度診療報酬改定は、「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」が重点課題となった。
 賃上げ対応には2種類がある。改定率の0.61%分が「看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について、2024年度にベア目標+2.5%、2025年度に同2.0%を実施していくための特例的な対応」である。0.28%分が「40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分」である(3面下表)。
 「2024年度にベア+2.5%、2025年度にベア+2.0%」を実現するための対応には3つの要素があり、①医療機関や事業所の過去の実績ベース②診療報酬による賃上げ対応③賃上げ促進税制の活用であり、診療報酬による賃上げ対応だけでは、政府が求める賃上げの実現目標は達成できない。
 また、今回の賃上げの状況については、賃金引上げに係る計画書、賃金引上げの実施状況の報告書の提出(毎年)、抽出調査などにより報告が求められている。
 診療報酬による賃上げ対応では、0.61%分の対応として、外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰ・Ⅱ、入院ベースアップ評価料などが新設された。0.28%分の対応では、初再診料等と入院基本料等を引き上げる。既存の看護職員処遇改善評価料を含め評価料による賃上げについては、賃上げ促進税制における税額控除の対象となる。
 これらの診療報酬収入により賃上げを行うことになるが、その前にベースアップとは何かを考える必要がある。
 ベースアップ評価料は、賞与や法定福利費等の事業主負担分を含めた「給与総額」をもとに点数設計を行っている。この報酬分を「基本給または決まって毎月支払われる手当の引上げ」(ベースアップ)により充てる必要がある。連動して引き上がる賞与分や事業主負担の増額分も含まれる。
 このため、賃金表内での職員の給与の変動は定期昇給に該当し、ベースアップには該当しない。賃金表に記載する額そのものを引き上げることがベースアップである。一方、賃金表がない医療機関の場合は、給与規定や雇用契約に定める基本給等の引上げとなる。
 医療機関では、2024年度と2025年度の2年間の賃上げを計画する。ベースアップ評価料による改定率0.61%分は、対象職種の給与総額の2.3%相当となるように設計されている。これを2年間で配分する上で2パターンが考えられるが、いずれの場合でも算定額をすべて賃上げに使う必要がある。
 例えば、2023年度の給与総額が1億円であった場合、2年間のベースアップ評価料の算定額は460万円となる。2024年度にまとめて引き上げるパターン1では、2024年度に230万円、2025年度に230万円の充当となる。「2024年度にベア+2.5%、2025年度にベア+2.0%」を目指す政府目標に沿った段階的な引上げを行うパターン2では、2024年度に165万円、2025年度に295万円の充当となる。
 報告書については、施設基準の届出書とあわせて、賃金引上げに係る計画書及び報告書を地方厚生局に提出する。この中で、ベースアップ評価料が原則ベア等に充てられているかが確認される。さらに、計画書及び報告書では、ベースアップ評価料による賃金引上げの状況だけでなく、自主財源等を含めた全体的な引上げ状況とベースアップ評価料の対象とならない40歳未満の勤務医師等(0.28%分)の職種の状況も聞かれる。別途、抽出調査も予定されている。
 ベースアップ評価料の試算については、厚労省ホームページに「計算支援ツール」が掲載されている。

 

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