全日病ニュース

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厚労省「医療機能区分の定義周知されず」医療提供側「回復期の定義再考すべし」

厚労省「医療機能区分の定義周知されず」医療提供側「回復期の定義再考すべし」

【地域医療構想策定GL検討会】
運用上の留意点を体系的・簡便に整理、医療機関が対応すべき事項をまとめる

 「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」(写真)が7月29日に4ヵ月ぶりに開かれ、病床機能報告と地域医療構想にかかわる議論を再開した。
 事務局(厚労省医政局地域医療計画課)が報告した2014年度病床機能報告の集計結果(5月28日時点)によると、昨年7月現在の病床機能の分布は、高度急性期19万3,538床(15.5%)、急性期58万7,484床(47.1%)、回復期11万164床(8.8%)、慢性期35万6,176(28.6%)、合計124万7,362床であった(別途、13,764床が機能区分を未報告)。
 6年経過後の予定を構成比でみると、高度急性期16.1%、急性期44.7%、回復期11.4%、慢性期27.8%(別途9,712床が未報告)と、現在(14年7月)と比べ、高度急性期と回復期の割合が増えている。
 この結果を踏まえ、事務局は、今回15年度の報告で、(1)未報告の医療機関への対応、(2)医療機能の選択間違いや報告内容の不整合等への対応を検討課題にあげた上で、(1)については「都道府県として、まずは報告を督促し、それでもなお未報告の場合は医療法上の権限を適切に実施していく」、(2)については「明確に選択間違いと考えられるものは『間違い』として取り扱い、医療機関に修正を求める」方針で臨む考えを示した。
 このうちの(1)について、西澤構成員(全日病会長)は「医療法の権限行使は好ましくない。未報告に対してはその理由の把握に努めてほしい」と慎重な対応を求める一方、医療法で義務化されている医療機能情報提供制度を取り上げ、「2つの制度で報告事項が重なっている。将来的な一本化も重要なテーマである」という見解を表明した。
 事務局は、また、医療機関によっては「回復期機能は回復期リハ病棟だけが該当する」と受け止められていた例を紹介、「回復期には在宅復帰に向けた医療も含まれている」として、「医療機能の内容等を周知徹底していく」必要を認めた。
 さらに、全病棟を高度急性期と報告した特定機能病院が85病院中75病院に達したとも指摘。「特定機能病院の個々の病棟は必ずしもすべて高度急性期とは限らない」との見解を表わした。
 その一方で、14年度の報告事項にはなかった医師数(病院全体・診療科別等)を15年度の報告項目に追加することを提案した。
 この提案に、医療提供者からは「医師数の報告は現場の負担が増すだけ」との批判が相次いだ。西澤構成員も「医療機能情報提供制度の報告で代用できるはず」と提案したところ、北波地域医療計画課長は「本日の意見を踏まえて検討し、必要があればあらためて諮りたい」と述べ、議論を引き取った。
 構成員からは、このほか、①医療機能区分の根拠をさらに明確にすべき(より具体的な機能選択の事例も必要)、②報告記入に誤りが生じないようマニュアルを工夫するべきなど、15年度報告に向けて改善を求める意見が示された。
 その中で、①に関連して、医療提供側の構成員から、「診療報酬で地域包括ケア病棟の機能はサブアキュート、ポストアキュート、在宅復帰とされているが、機能区分では、回復期の定義をポストアキュートに限っている。しかも、回復期というのは明らかに急性期と異なる。これを整理していかないと機能分化は進まないのではないか」と、回復期の定義に疑問を投げかけた。
 この発言に関連して、西澤構成員は、「機能区分に関する議論の当初は亜急性期という考え方が提起され、そこにはサブアキュートも含まれるとされた。しかし、分かりにくいということでサブアキュートを外して回復期という考え方に落ち着いた。それは病期にもとづくカテゴリーの視点からそうなったものだ。しかし、病棟という視点に立つと、例えば診療報酬上の当該病棟はポストとサブ両方の患者を受け入れており、今後もそれが求められている。2~3年みていく中で病期と病棟の違いが明確になっていくのではないか」と述べ、実態のデータを踏まえて議論を収斂させていくべきとの認識を表わした。
 一方、事務局は、14年度報告ではカテゴリーとしての機能区分から選択されたきらいがあり、同じ機能区分でも医療提供の内容が不一致となる傾向があったとの認識から、「今後、報告された医療機能と、行われている医療内容、構造設備・人員配置等との関係を詳細に分析し、病床機能報告制度の精緻化に向けて検討していく」方針を打ち出した。
 この方針について、北波地域医療計画課長は「10月以降の議論の中で機能区分の精緻化にも取り組んでいただきたい」と発言、とくに、機能区分の議論を深める必要を認めた。
 事務局は、検討会を月1回のペースで開催しつつ、15年度および16年度報告に向けた見直しを検討していく方針を示したが、来年4月頃までは、①病床機能報告制度の精緻化、②地域医療構想策定の進捗状況が主たるテーマになるとした。
 また、この10月報告に向けて報告事項や報告方法の改善を図り、留意点ともども周知させる必要があるとし、次回8月末の検討会に通知案を提示する考えを明らかにした。