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ホーム全日病ニュース(2023年)第1030回/2023年4月15日号医療情報システムの安全管理ガイドラインを改正「第6.0版」に

医療情報システムの安全管理ガイドラインを改正「第6.0版」に

医療情報システムの安全管理ガイドラインを改正「第6.0版」に

【厚労省・情報利活用検討会】医療機関にサイバー攻撃に対するセキュリティ対策求める

 厚生労働省の健康・医療・介護情報利活用検討会(森田朗座長)は3月29日、同検討会の下部組織である各ワーキンググループのそれぞれの検討状況について報告を受けた。具体的には、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の第6.0版改定や、全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とする仕組み、全国医療情報プラットフォームを用いて共有する介護情報、電子処方箋の運用などの検討状況が報告された。
 健康・医療・介護情報を医療機関などが取得し、それを活用する場合の本人同意のあり方をめぐる議論も行われた。認知症であるなど本人同意を得ることが難しい場合がある。本人の不利益になってしまうのであれば、本人同意の規制を緩和し、情報の利活用が妨げられない仕組みを求める意見が相次いだ。

サイバーセキュリティ対策を検査
 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の第6.0版改定については、「医療等情報利活用ワーキンググループ」の検討状況の報告があった。2023年4月から医療機関・薬局に対して、オンライン資格確認のシステム導入が原則義務化される。これに伴い、概ねすべての医療機関などで、ガイドラインに記載されているネットワーク関連のセキュリティ対策が必要になる。これを踏まえ、ガイドライン全体の構成を見直すとともに、別添でサイバーセキュリティ対策のチェックリストなどを作成し、第6.0版に改正することになった。
 今後、第6.0版に対するパブリックコメントを募集し、その結果を踏まえ、5月中旬に第6.0版を公表する予定となっている。
 また、医療法施行規則第14条第2項を新設し、医療機関の管理者が遵守すべき事項として、サイバーセキュリティの確保において必要な措置を講じることを追加する。「必要な措置」としては、最新の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを参照の上、サイバー攻撃に対する対策を含めセキュリティ対策全般について適切な対応を行うことを求めるとしている(下図参照)。
 安全管理ガイドラインに記載されている内容のうち、優先的に取り組むべき事項については、厚労省がチェックリストを作成し、各医療機関で確認できる仕組みとする。
 これに伴い、医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱の項目に、サイバーセキュリティ確保のための取組み状況を位置付けることになった。一般病院に対しては、原則毎年実施の保健所による立入検査で、病院管理、人員配置、構造設備などの状況とともに、医療情報システムのセキュリティ対策の検査も受けることになる。
 慶應義塾大学教授の印南一路委員は、「サイバー攻撃とセキュリティ対策はいたちごっこ。ここまでやれば大丈夫というものはない。それでも保健所から対応不足と指摘されるセキュリティ対策がどの程度であるかの例示を示さないと、保健所も医療現場も混乱し、独自ルールが横行するガラパゴス化が生じかねない」と指摘した。
 また、全国で医療情報を確認できる仕組みが拡大しているなかで、機微な情報であることから、特段の配慮が必要とされ、運用を遅らせていたものとして「手術情報」があった。これについては、個別に同意を得る仕組みとした上で、2023年5月11日から、医療機関・薬局における情報共有の運用を開始することが報告された。
 日本医師会常任理事の長島公之委員は、「全国で医療情報を確認できる仕組みを普及させるにあたって、どんなメリットがあって、どんなリスクがあるのかを国民に対して、丁寧に説明し、理解を得ていくことが重要だ」と強調した。

電子カルテ情報を閲覧可能に
 全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とする仕組みについては、「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」が報告書をまとめた。
 全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とするための情報の標準化の方法としては、HL7 FHIR のデータ交換方式を用いる。6情報(傷病名・アレルギー情報・感染症情報・薬剤禁忌情報・救急時に有用な検査情報、生活習慣病関連の検査情報・処方情報)と2文書(診療情報提供書・退院時サマリー)から標準化を進め、段階的に拡大する。
 標準化した電子カルテ情報は、電子カルテ情報交換サービスを通じて共有する。各医療機関が電子カルテ情報交換サービスに医療情報を送信する、いわゆるPUSH型の方法を用いる。これらの仕組みは、オンライン資格確認確認等システムを運用している社会保険診療報酬支払基金が開発する。
 患者からの同意取得において、現場の負担を軽減する観点から、文書情報・6情報は、「患者本人の同意なしで電子カルテ情報交換サービスへ登録した上で、医師による告示状況や閲覧に関する同意取得等により閲覧可能な情報を制御する方向で検討する」としている。医療機関での患者の6情報の閲覧に関する同意では、「まずは顔認証付きカードリーダー使用時に同意を取得する仕組みとして、各情報の閲覧に一括で同意する仕組みなどを考慮しつつ、患者の利便性を確保できる仕組みについて引続き検討を進める」としている。

LIFEなど介護情報も閲覧可能に
 全国医療情報プラットフォームを用いて共有する介護情報については、介護情報利活用ワーキンググループがまとめた対応方針において、「要介護認定情報」「請求・給付情報」「LIFE情報」「ケアプラン」が候補となったことが報告された。今後、閲覧・共有する具体的な情報の範囲や標準化方策を個別に検討するとしている。

電子処方箋の状況を報告
 電子処方箋については、1月26日の運用開始以来、3月19日時点で1,808施設(病院7、医科診療所93、歯科診療所5、薬局1,703)において、稼働中であることが報告された。厚労省によると、システム・運用面で「これまで大きなトラブルなく概ね順調に稼働している」という。一方で、導入施設からは、◇リフィル処方箋◇口頭同意による重複投薬・併用禁忌に該当する過去の薬剤情報の取得◇院内処方の課題が指摘されている。
 リフィル処方箋に対しては、今秋を目途に、運用主体である電子処方箋管理サービス側の改修を行うとともに、技術解説書を改訂し、各施設での追加改修を準備可能とする予定であるとしている。
 口頭同意による重複投薬等チェック結果の取得に対しては、患者が不同意を選択した場合や、患者が診察室などで口頭同意を行った場合は、対象薬剤を表示できるよう改めるとした。今春頃に技術解説書を改訂し、各施設でシステム改修を可能とする予定だ。
 院内処方に対しては、現状、電子処方箋管理サービスが院外処方箋のみを対象とし、網羅的に患者の薬剤情報をカバーするためには、お薬手帳アプリなどによる院内処方時の薬剤情報など情報保管が必要となる。今後、電子処方箋の院内処方への機能拡充を検討していくにあたり、厚労省は、具体的な課題を関係部局と連携しながら検討するとの考えを示した。
 日本病院会副会長の大道道大委員は、「病院は7施設しか参加していない。何がボトルネックで普及が進まないと考えているのか」と質問。厚労省の担当官は、「オンライン資格確認システムの原則義務化に伴う対応で、ベンダーのリソースが逼迫しているということがあると思う」と回答した。大道委員は、「病院としては、大規模なシステム改修が必要になると、費用面を含め足踏みしてしまう。隘路を突き崩してほしい」と要望した。

同意取得の緩和を求める意見
 同日の検討会では、医療介護情報を共有化し、医療介護の現場で利活用する際の、本人同意の取得をめぐって、議論が行われた。
 森田座長が、「例えば、認知症の方から同意を取得することの難しさがある。同意取得は本人意思を明確にするためだが、仕組みを理解していることが前提になる。しかし、理解できないために情報を活用できないと本人の不利益になってしまう。同意を得なくても、医療介護従事者が、本人のために医療介護情報を用いるのであれば、同意を得なくても信頼は得られるのではないか。同意取得の仕組みをもう少し緩やかに考えるべきではないか」と問題提起した。
 これに対して、森田座長に賛同する意見が相次いだ。具体的には、「差別的な取扱いにならないということであれば、同意取得は必要ない仕組みを考えるべき」(印南委員)、「患者家族の権利が保全される仕組みを前提に、本人同意が不要な仕組みに賛成する。ただし、医療介護従事者が外部に情報を漏洩させない仕組みが不可欠になる」(山本隆一委員・医療情報システム開発センター理事長)などの意見が出た。一方、長島委員は慎重な検討を求めた。

 

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