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ホーム全日病ニュース第803回/2013年6月15日号2つの検討会で亜急性期をめぐる...

2つの検討会で亜急性期をめぐる議論

▲西澤会長(写真右・左端)と神野副会長(写真左・2人目)は亜急性期等の議論で全日病の考えを説明した

2つの検討会で亜急性期をめぐる議論

【5月30日の2つの検討会】
厚労省 ポストアキュートとサブアキュートを併せた病棟の機能案を示す

 厚生労働省は5月30日の2つの検討会に亜急性期の医療機能に関する考え方として、①急性期からの受け入れ、②緊急時の受け入れ、③在宅復帰、という案を示した。
 一体改革にそった病床機能分化・連携の取り組みの中で、「亜急性期等」の病床をどう増やしていくかが重要な課題になっている。その端緒となる亜急性期の議論が、きしくも、同じ日の医政局と保険局による検討会で展開され、そこで、亜急性期の医療機能をどう考えるかという案が示されたもの。
 両局の案は、いわゆる病期としての「亜急性期」というよりは、地域で一般病院が求められている機能をめぐる提供体制とその評価にかかわる考え方であるが、ポストアキュートとサブアキュートを併せた機能という点で、その内容は一致。さらに、その内容は全日病等が提唱している地域一般病棟とも一致している。
 亜急性期をめぐる議論は、2014年度診療報酬改定だけでなく、医療法改正を介した病床・病棟の整理再編においても大きな意味をもつだけに、その成り行きが注目される。

(入院医療分科会は前号で既報。また、こちら にその議論内容を掲載。病床機能情報検討会は こちら に資料等を掲載 )

 

厚労省 亜急性期の機能は「急性期後、緊急時受入、在宅復帰」

 亜急性期の医療機能に関する考え方が提案されたのは「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」(医政局総務課)と中医協に付設された「入院医療等の調査・評価分科会」(保険局医療課)である。
 医政局の検討会では、医療機能を病棟単位で報告する制度の議論の中で、亜急性期と回復期リハを分けた上で、亜急性期を「主として、急性期を経過した患者、在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性増悪した患者に対し、在宅復帰に向けた医療を提供する」とする案が示された。
 一方、保険局の分科会では、次期改定に向けた調査結果を評価する議論の中で、「亜急性期・回復期等」という括りを「亜急性期医療(病床)」とした上で、亜急性期医療に求められる機能を「①急性期からの受け入れ機能、②在宅・生活復帰支援機能、③緊急時の受け入れ機能」とすることを提案、亜急性期入院医療管理料を見直す必要を提起した。
 両検討会に示した医政局と保険局の亜急性期の医療機能の考えた方一致したが、両検討会の委員からは「亜急性期が分かりにくい」という声があがった。

 

病床機能検討会 事務局が各機能と同列に「地域多機能」を提起

 病棟機能をめぐる議論(医政局の病床機能検討会)で、事務局は、報告すべき医療機能として5つをあげ、その名称を、急性期、亜急性期(仮称)、回復期リハ、地域多機能(仮称)、長期療養とする案を示した。
 地域多機能とは、「1つの病棟で複数の医療機能を持ち、幅広く対応できる機能=医療資源が少ない地域の医療機関(2病棟以下)を想定」したもの。
 各機能の内容が確定した後に、あらためて複合機能を担う病棟が論じられるべきところ、複数の機能を担う病棟の機能イメージが他の医療機能と同列に示された。これが医療機能をめぐる議論を複雑にした。
 一体改革の2025年シナリオでは、複数の機能を担う病床(病院)として地域一般病床(地域に密着した病院)という、急性期から亜急性期、慢性期にいたる領域を担う概念が示されている。
 「2病棟以下」とする地域多機能は小規模の地域一般病床であるのか、まったく別概念であるのか、事務局はその辺りを明確にしていない。新たな概念・名称が相次いでいることが、機能分化の議論を分かりにくくしている。
 次に、「亜急性期(仮称)」の「医療機能の内容」として示された、前出の「主として、急性期を経過した患者、在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性増悪した患者に対し、在宅復帰に向けた医療を提供する」という考え方も、議論を複雑にした。
 何故ならば、事務局が提示した「亜急性期(仮称)」はハコ(病棟)に主たる医療機能を貼りつける上で採用する名称案に過ぎないのだが、一見すると、あたかも病期としての亜急性期を論じているかのようにみえるからだ。
 例えば、「急性期」に高度急性期と一般急性期があるように、いくつかの領域の機能を1つに括ったものを「亜急性期(仮称)」と称するというのが事務局の案であった。
 その内容は、同日の病床機能検討会で西澤委員(全日病会長)が指摘したように、全日病等が提唱する地域一般病棟と基本的に同じ機能(ポスト急性期、軽症急性期、在宅等患者の急性増悪の受け入れ)からなる。
 ただし、事務局は、この「亜急性期(仮称)」を説明する中で、「ポストアキュートとサブアキュートの患者に必要な医療を提供する機能」と明記した。そのため、委員からは、「亜急性期はポストアキュートに限定すべきではないか」との疑問が投げかけられた。
 この疑問は正しいが、しかし、この検討会では、いわゆる亜急性期、病期として急性期に続くステージである亜急性期は取り上げられていない。
 議論されていたのは「主として、急性期を経過した患者、在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性増悪した患者に対し、在宅復帰に向けた医療を提供する」病棟の機能の名称であった。
 したがって、地域一般病棟を想定したと思われる、複数の医療機能を担う病棟の機能名称を「亜急性期(仮称)」としたのは不正確で、より正しくは、「軽症急性期・亜急性期」とでもされるべきものであった。
 このように、亜急性期をめぐる議論は病期概念とは別に、医療提供体制の問題として論じられるべきところ、病床機能検討会では両者が錯綜した議論が繰り広げられた。
 重要なことは、地域の医療ニーズに応じて、急性期後の患者を受け入れるだけでなく、軽度な急性期、救急、在宅支援などを担う病棟(病院)として提起されている地域一般病棟は、病期の亜急性期とは別に論じられるべきものということである。
 この点について、検討会委員である西澤会長は、「(病棟を)病状で急性期、亜急性期と分ける方法もあるが、どれだけの資源を要するかという視点に立った提供体制という考え方もある。都会でも中小規模の病院はいくつかの機能をもたざるを得ない。つまり、地域に密着して軽度の急性期を担う急性期病院であるものの、高齢者を多く受け入れているため、すぐには帰せない、ときには一部亜急性の機能も必要になる。そのイメージが我々のいう地域一般病棟である」と説明に努めた。
 しかし、「亜急性期(仮称)」の名称を検討する中に地域一般病棟という名称が引用されていたこともあり、委員の中には地域一般病棟=亜急性期という誤解が生じるなど、事務局があげた3つの機能が地域一般病棟を示すという認識は理解を得られなかったようだ。

 

入院医療分科会 範囲拡大の提起が亜急性期の議論を複雑に

 一方、5月30日の入院医療分科会では、2012年度の調査結果から「亜急性期入院医療管理料の患者は13対1や回復期リハより重症度・看護必要度が低く、医療費は13対1より高い」などが判明したとして、委員からは「亜急性期のあり方を明確にすべきである」という疑問が相次いだほか、「こういうベッドが必要なのか」という強い批判も出た。
 その一方、神野副会長を筆頭に数名の委員が亜急性期病床の存在を強く擁護、分科会の意見は分かれた。
 そうした中、事務局は「亜急性期の患者像と機能を明確化し、さらなる評価を充実させる」必要を提起、14年度改定で亜急性期入院医療管理料を大幅に見直すこと示唆した。
 調査結果は亜急性期入院医療管理料に関するもので、13対1看護の病床に入院している急性期後の患者を対象にした病床単位の評価の実態を捕捉したものだ。
 調査結果を踏まえた事務局の提起で注目すべき1つは、亜急性期入院医療管理料の患者像などを同じ看護配置の13対1病棟や回復期リハの1と比べるだけでなく、20対1の療養病棟とも比較、それらの近似性を強調していることである。
 2点目は現在病床単位で評価している亜急性期入院医療管理料を病棟単位とすることを提起、前出各病棟と外形基準を揃える考え方を示している点である。
 この議論において、事務局は亜急性期入院医療管理料と回復期リハ病棟入院料を一体に亜急性期とし、その定義案を打ち出している。
 事務局の問題提起は亜急性期医療として評価する範囲を拡大する方向性を示唆している。その限り、一体改革のシナリオにそったものとみられるが、結果的には、こうした、療養病棟も視野に含むなどの新しい視点が亜急性期の考え方を混乱させる1つともなり、少なからぬ委員に、亜急性期入院医療管理料の見直しはともかく、「亜急性期とは何か」「そうした(性格が曖昧な)病床は必要なのか」という疑義をもたらすことにもなった。