全日病ニュース

全日病ニュース

専門医制度と診療報酬改定の動向を報告

専門医制度と診療報酬改定の動向を報告

【支部長・副支部長会】
神野・猪口副会長が特別講演

 臨時総会終了後に支部長・副支部長会(特別講演)が行われ、神野正博副会長が新たな専門医制度について、猪口雄二副会長が2018年度の診療報酬改定について情勢報告を行った。
専門医制度で地域医療への配慮求める
 新たな専門医制度は、来年4月の実施に向けて準備が進められている。神野副会長はこれまでの経緯を説明した。
 新たな専門医制度の枠組みは、2013年4月の「専門医制度の在り方に関する報告書」で決まった。報告書のポイントは、①基本領域とサブスペシャリティ領域の2段階制とする②基本領域の一つに総合診療専門医を位置づける③新たな第三者機関で認定する専門医を広告可能とする─など。
 検討会報告を受けて日本専門医機構が発足し、2017年4月の実施を目指して準備作業が始まるが、一部の基本領域において、研修施設に対して厳しい基準が示されたことで地域医療への影響が懸念されることとなった。昨年6月に専門医機構の理事が総入替えとなり、新たな理事会において、実施を1年延期して2018年4月からスタートすることを決めた。神野副会長はこの時に四病協を代表して専門医機構の理事に就任した。
 新たな理事会の下で実施にむけて準備が進められるが、昨年11月に日本医師会の横倉会長名で出された要望書がエポックメイキングになった。横倉会長の要望書を受けて議論が一気に進み、昨年12月の専門医機構社員総会において専門医制度の憲法ともいえる整備指針が決まった。整備指針は、①大学病院以外の病院も基幹施設となれる基準とする②常勤の指導医が在籍しない施設でも研修施設群に加われる③行政、医師会、大学、病院団体などからなる「都道府県協議会」と事前協議をすることなどがポイント。
 整備指針を踏まえて、3月の理事会において運用細則が決まった。細則は、基幹施設の認定基準として具体的な内容を盛り込み、各年度の専攻医が350名以上の学会(内科、小児科、精神科、外科、整形外科、産婦人科、麻酔科、救急)は、都道府県ごとに複数の基幹施設を置ける基準とする。
 また、都市部への偏在助長回避として、医師数が減少している科を除いて5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)で原則5年間の採用実績の平均を超えないようにする。
 この運用細則は、3月23日の専門医機構の社員総会で報告予定だったが、見送られてしまった。専門医制度の見直しを求める動きが出てきたためで、来年4月実施に向けて「暗雲が立ち込めている状態」(神野副会長)だ。
診療報酬による誘導を懸念
 猪口副会長は、「中医協はかなり速いペースで審議している」として、2018年度診療報酬改定に向けた検討状況を説明。中医協本体に加え、薬価専門部会や費用対効果評価専門部会の議論が同時並行で進み、毎週のように会議が開かれている。
 猪口副会長は、「重症度、医療・看護必要度」の見直しなど2016年度診療報酬改定の内容を概観した上で、全日病が実施した病棟転換等状況調査の結果を紹介。「重症度、医療・看護必要度」の基準が15%から25%となったことで、7対1病棟の動向が注目されたが、調査結果では7対1入院基本料を算定する病棟数は24しか減らなかった。
 地域包括ケア病棟入院料が24の増となったほか、療養病棟入院基本料2が63病棟の減少となり、95%減算の療養病棟入院基本料2が52病棟となった。
 猪口副会長は、医療区分2・3の患者50%以上の要件は、「かなりハードルが高い」とコメントした。
 また、7対1から10対1に移行した病院はわずか10病院にとどまり、病棟群単位の届出制度を利用した病院は2病院しかなかった。
 今後、診療報酬改定の議論が本格化するが、猪口副会長は、第7次医療計画との関係に懸念を示し、「病床機能報告制度における4つの医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)に診療報酬で誘導する流れが出てきそうで、要注意だ」と述べた。
 第7次医療計画の策定に向けて、地域医療構想調整会議の進め方が示されている。まず、救急医療や災害医療の医療機関を位置付け、次に公的病院や国立病院を位置付ける手順が示されていて、それ以外の医療機関は、公的医療機関等が担う医療機能以外の役割を担う考えが示されている。猪口副会長は、「公的病院の役割は強く出てくるかも知れないが、調整会議で公的病院はどんな役割を担うかを決めていくことができるはずだ」と呼びかけた。
緊急アンケート調査を実施
 猪口副会長の講演を受けて、司会を務めた猪口正孝常任理事が医療計画に関する緊急アンケート調査について説明した。猪口常任理事は、ある都道府県の調整会議で、急性期の指標に関する資料を行政が提出したことを取り上げた。資料は、「急性期医療の度合い」をスコア化して病院ごとのポイントを示している。猪口常任理事は、「病院の機能は本来病院が自ら決めるものであり、こうした資料を行政側が提出することは問題がある」と述べ、全国の都道府県の地域医療計画の検討状況を把握するため、アンケートへの協力を要請した。

 

全日病ニュース2017年4月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 新専門医制度は2018年度から一斉にスタート

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160801.pdf

    2016年8月31日 ... いた 2017年度からの新専門医制度の実施を1年遅らせ、2018年度から一斉に.
    スタートする方針を ... とは別に機構内で作業を進めてきた新たな総合診療専門医の. み
    は、現時点で ... 2016年度診療報酬改定で7対1入院. 基本料を減らす ...

  • [2] 新専門医制度に関する厚労省の委員会が初会合

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160415.pdf

    2016年4月15日 ... 冒頭に挨拶した西澤寛俊会長は、最. 近の医療情勢を概観。「最大の関心は. 2016年度
    診療報酬改定後である。改定. 率は財政が .... 研修が始まる新専門医制度の準備作業.
    が不十分との ... 初会合では、日本専門医機構が①外. 科専門研修 ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年5月15日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/140515.pdf

    医制度を担う第3者機関「日本専門医機. 構」が5月7日に発足した。 ... 専門医制度
    担ってきた社団法人. 日本専門医制評価・認定機構は、5月8 ... 医療保険・診療報酬
    委員会は、今改定に関する参加者からの質問に対する回答を全日. 病のホームページに
    掲載 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。