全日病ニュース

病院、かかりつけ医機能、在宅医療、介護まで含め議論

【厚労省・新たな地域医療構想検討会】猪口会長は医療・介護の支え手の人材確保に危機感を表明

　厚生労働省の新たな地域医療構想等に関する検討会の初会合が３月29日に開催された。現行の地域医療構想が2025年を目標とする取組みであることから、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想について、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含め、地域の医療提供体制全体の地域医療構想として検討するために開催する。座長には、遠藤久夫・学習院大学経済学部教授が選出された。
　検討事項は、①新たな地域医療構想の策定及び施策の実施に必要な事項②医師偏在対策に関する事項（医師養成過程を通じた対策を除く）③その他本検討会が必要と認めた事項となっている。地域医療構想、医師偏在対策、医師の働き方改革は一体的に推進するべきものとされており、検討事項に医師偏在対策が入っている。
　今後、構成員からのヒアリングを含め、１巡目の議論を行い、秋までに中間まとめを行う。その後２巡目の議論を行い、年末に最終的なとりまとめを行う予定となっている。同日は、構成員による自由討議を行った。
　全日病会長の猪口雄二構成員は、2025年以降、「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に局面が変化することを重要視。人口動態の予測から、今後、病院など医療・介護を支える主体が直面する困難に危機感を示した。
　2025年から2040年にかけて、75歳以上の後期高齢者は2,155万人から2,227万人に3.4％増加するが、15～64歳のいわゆる生産年齢人口は7,310万人から6,213万人に15％減少する。猪口構成員は、国立社会保障・人口問題研究所が推計する日本の将来推計人口よりも出生数の減少が早まっていることに触れ、深刻な人口問題が新たな地域医療構想を考える上で、前提になることを強調した。
　人口構造の変化は、地域により異なり地方でより顕著になる。例えば、2040年には人口20万人未満の構想区域が過半数を超え、５万人未満の構想区域は、2015年と比較すると約３倍になると予測されている。現行の地域医療構想は二次医療圏を圏域としている地域が多く、現状でも齟齬が生じているが、人口がそれだけ異なると地域医療構想を同じ考え方で推進することは現実的ではなくなる。
　猪口構成員は、最近の経済環境の変化による人材確保の困難にも言及し、効率的な病院運営を考えないと、供給側の制約によって、地域医療が存続できなくなるとの認識を示した。
　一方、国際医療福祉大学大学院教授の高橋泰構成員は、「ポストコロナになっても病院の病床稼働率が戻っていない。昔よりも高齢者が元気になって、入院受療率も変わっているかもしれない。高齢者像の変化をきちんと把握しないと、（需要を見込んで）病床を作りすぎることになる」と指摘した。
　日本医師会常任理事の江澤和彦構成員も高橋構成員と同様に、全体では入院患者数は低下傾向にあるとの見方を示した。その上で、在宅医療や介護の需要は増大しており、「治し、支える医療」を推進するため、新たな地域医療構想は「地域医療介護構想」にすべきと提案した。
　全国老人保健施設協会会長の東憲太郎構成員は、2024年度診療報酬・介護報酬同時改定も踏まえ、介護施設における看取り機能や介護施設に外づけする医療の位置づけなど、病院と介護保険施設の役割分担について、さらなる整理を求めた。
　副座長に指名された九州大学名誉教授の尾形裕也構成員は、現行の地域医療構想のように、医療機能別の病床の必要量や在宅医療、介護の需要の過不足を明確に示すことが重要と主張した。その際に、消費税を活用した現状の地域医療介護総合確保基金のような財政支援がないことに対し懸念を示した。