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2060年まで医療・介護等給付費が対GDP比で増え続ける

【内閣府・経済財政諮問会議】「中長期の経済財政に関する試算」を公表

　内閣府は４月２日の経済財政諮問会議に、2060年度までのマクロの経済・財政・社会保障の姿を試算した「中長期の経済財政に関する試算」を公表した。医療・介護等の費用について、2040年を越えても高齢化率は上昇し、特に介護費は一貫して増加。医療費も伸び率は鈍化するが、医療の高度化等の要因により、増加率が高まる可能性を示した。
　2040年を見据えた新たな地域医療構想の議論が始まっている状況だが、医療・介護に対するさらなる給付抑制圧力が高まる恐れがある。
　試算では、経済成長などが現状通りで出生率が1.36程度まで回復するシナリオにおいて、医療・介護の給付費がGDP（国内総生産）に占める割合は、2019年度の8.2％から、医療の高度化がこれまでの実績通りの場合（年率１％）には、2040年度に10.2％、2060年度に13.3％、医療の高度化が加速する場合（年率２％）には、2040年度に10.7％、2060年度に16.1％まで高まることを示した。
　内閣府は、対GDP比で医療・介護の給付費が増え続けることを問題視。試算の結果を受け、医療・介護の給付費を2060年でも一定範囲（11.1％）に抑えるため、「毎年の医療の高度化等のその他要因を相殺できる改革効果を実現できれば、長期安定シナリオの下で、制度の長期的安定性の確保が見通せる結果になる」と指摘した。
　その上で、「DX活用等による給付の適正化・効率化、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の構築、応能負担の徹底を通じた現役・高齢世代にわたる給付・負担構造等の見直し等、様々な努力の積み重ねが必要」と主張した。
　同日、岸田文雄首相も、「医療・介護の給付費の対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組み、財政健全化を着実に進めることが重要」と発言した。医療・介護の給付費の上昇の抑制を図る方向性での改革が継続的に続く可能性がある。
　もっとも、医療・介護の給付費の対GDP比率を一定程度に抑えるには、GDP自体を成長させることが解決策であり、そのためには、「⽣産性の向上、労働参加の拡⼤、出⽣率の上昇等による供給⼒の強化と、成⻑と分配の好循環の実現」が必要となる。日本全体の経済を強固にすることで、医療・介護の充実を図ることが求められる。

地域医療構想の実現を求める
　内閣府は同日、2019年度から2023年度までの「経済・財政一体改革の点検・検証」も示した。
　社会保障について、「歳出改革」という視点では、「国費ベースで約0.8兆円の削減を実現したほか、全世代型社会保障の改革工程（2023年12月閣議決定）に、これまでの経済財政一体改革における議論等を踏まえた改革項目を盛り込むなど、2028年までの歳出改革の道筋を具体化するなどの成果も認められる」と評価した。この間、医療費等の抑制を図ってきたことが示された。
　一方で、「医療費の地域差半減や地域医療構想の実現など改革の進捗について課題がみられる事項も存在する。これらについて、進捗がみられない原因等を分析し、その結果を踏まえ、課題解決に向けた対応策を経済財政諮問会議で議論した上で、本年夏の骨太方針において対応の方向性を示すべき」と主張している。