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ホーム全日病ニュース(2024年)第1053回/2024年4月15日号救急救命士のエコー実証は「必要十分」まで引き続き議論

救急救命士のエコー実証は「必要十分」まで引き続き議論

救急救命士のエコー実証は「必要十分」まで引き続き議論

【厚労省・救急医療WG】研究デザインの精緻化求める

 厚生労働省の救急医療の現場における医療関係職種の在り方に関する検討会ワーキンググループ(児玉聡座長)は3月21日、救急救命士のエコー検査の実証に関する2023年度の議論のとりまとめ案を概ね了承した。提案者である岡山県吉備中央町に対して、研究デザインの精緻化を求めるとともに、引き続き議論を重ね、それらが「必要十分」と認められた上で、救急救命処置の範囲にエコー検査を特例的に追加する方針を示した。
 救急救命士によるエコー検査の実証は、国家戦略特区の吉備中央町が内閣府の国家戦略特別区域諮問会議において規制改革事項として提案したもの。ワーキンググループでの承認を経て、省令改正を行い、特区での実証を開始する想定であったが、委員からは「搬送前・搬送中のエコー検査に対する難易度や安全性への懸念がある」、「搬送先病院選定に係るプロトコールが不明瞭だ」、「既存のプロトコールとの整合性を図るべき」といった指摘が相次いだ。
 厚労省が示したとりまとめ案では、これまでの議論を踏まえ、2024年度の可能な限り早期に講じる必要な措置の一環として、◇研究デザインの精緻化◇救急救命士による超音波装置操作に係る研修について、効果測定を行いながら必要十分なプログラムを作成◇各段階において、ワーキンググループに進捗状況の報告を行い、議論を進める―とした。また、提案者の吉備中央町と岡山大学が客観的・合理的なエビデンスを収集する場を別に設け、そこでの検討状況をワーキンググループに報告するとした。
 今後の方向性について、委員から異論はなかった。「例えば、ショック状態ではないものの症状が不明確な場合、搬送中に腹腔内液体貯留を発見できれば二次救急から三次救急へ搬送先を変更できるなど、搬送中のエコー検査が有効な場面も想定できる」(日本臨床救急医学会評議員・植田広樹構成員)との意見や、「研究デザインに関しては、まずは医師やエコー検査ができる職種が病院前で実証し、効果があるとわかった段階で、次に救急救命士が同等の手技が発揮できるのか、必要な研修・教育は何かを検討する。こうした二段階のモデルもよいのではないか」(民間救命士統括体制認定機構理事・喜熨斗智也構成員)といった提案があがった。
 一方で、搬送時間の短縮という目標と救急救命士によるエコー検査の関連性が不明瞭なままであることから、実証の意義について引き続き疑義を示す意見があがった。
 日本医療法人協会会長の加納繁照構成員は、従来の二次救急・三次救急の連携体制や救急搬送トリアージのあり方について言及し、適切な搬送先選定に好ましくない影響を及ぼすとの懸念を示すとともに、実証に対して改めて疑問を呈した。また、今後の研究デザインの精緻化に関しては「対象疾患をより明確に限定すべき」と指摘。医療機器の安全管理の問題や、費用対効果についても検討が必要との考えを示した。

 

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