全日病ニュース

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都道府県と医療法人が改革推進の前面に

▲報告とりまとめ後に記者会見に臨む国民会議の清家会長(左から2人目)

都道府県と医療法人が改革推進の前面に

【社会保障制度改革国民会議】
報告書まとまる。政府は21日に改革工程を閣議決定。医療法は通常国会で改正

 社会保障制度改革国民会議は8月5日の会合で報告をとりまとめ、翌6日に清家篤会長(慶応義塾長)が安倍首相に答申した。
 安倍首相は「今月21日までに改革の法的措置と工程を盛り込んだ法案の骨子を決めたい」と述べ、課題ごとの実施時期を明示した“(改革)プログラム法”を秋の臨時国会に提出する意向を表明した。8月21日の閣議で法案要綱を決定する。
 プログラム法案には医療法等改正一括法案を次期通常国会で成立させることが盛り込まれる見通しだ。 (報告の医療・介護部分は2面に概要を掲載)

 

 国民会議報告書は、医療提供体制の改革として、医療提供を「病院完結型」から「地域完結型」への転換を提起。機能分化とネットワーク構築によって「病院・施設から地域・在宅へ」と患者の流れをつくりだすべきであり、そのために、「地域完結型の医療に見合った診療報酬・介護報酬に向け体系的に見直すこと」にも取り組むべきと論じている。
 病床機能の分化・連携を進める直接の政策当局に都道府県をあげ、(1)医療機能報告制度を踏まえて地域医療ビジョンを策定し、機能ごとの医療必要量を示す、(2)消費税増税分を基金として確保し、提供体制改革に投入する、(3)財政を中心に国保の保険者機能を担わせ、医療の提供水準と住民負担のマネジメントを託す、(4)そのために必要な権限を拡大する、などの改革手法を提示。
 「次期医療計画の策定を待たず行う医療提供体制改革」として、国保保険者機能の移管と地域医療ビジョンの策定は「次期医療計画の策定時期である2018年度を待たずに」実行されるべきであると提言した。
 また、民間医療機関が主たる医療提供者である日本における、「医療と介護の連携と地域包括ケアシステムというネットワークの構築」の直接の担い手に医療法人と社会福祉法人を指名、ネットワーク化には「当事者間の競争よりも協調が必要」であるため、「医療法人等が容易に再編・統合できるよう制度の見直しを行うことが重要」と提起。
 「例えばホールディングカンパニーの枠組みのような法人間の合併や権利の移転等を速やかに行うことができる道を開くための」制度改正の検討を提案。医療法人等のグループ化で「医療資源の適正な配置・効率的な活用を期待することができる」と展望した。
 国民会議の提案に、厚労省の医政局は、医療法人間の合併や権利移転等にかかわる規制見直しに関する検討会を9月にも設置する方針を表明している。
 さらに、医療法人等が「都市再開発に参加できるようにする制度」や「ヘルスケアをベースにした街づくりに要する資金調達手段をヘルスケアリート等を通じて促進する制度」など、規制の総合的な見直しが必要であると述べている。
 「ヘルスケアリート」とは、不動産証券化手法を用いて多額の資金調達を可能にする投資システム。現在、国交省、厚労省、金融庁の間で創設に向けた協議が進行している。
 報告書は現在のフリーアクセスにも言及。フリーアクセスは「必要な時に必要な医療にアクセスできる」ことを概念としていく必要があり、「この意味でのフリーアクセスを守るためには、緩やかなゲートキーパー機能を備えたかかりつけ医の普及が必須」とした上で、「一定規模病院の紹介状のない外来患者に定額自己負担を求める仕組みを検討すべきである」とも提案した。

国民会議報告書医療改革に関する主な提案事項

・「病院完結型」医療から「地域完結型」医療への転換
・医療機能の分化、医療・介護提供者のネットワーク化、地域包括ケアシステムの構築
・病床区分を始めとする医療機関体系の法的な定め直し
・「地域完結型」の医療に見合った診療報酬・介護報酬に向けた体系的な見直し
・緩やかなゲートキーパー機能を備えた「かかりつけ医」の普及
・提供側が移動先への紹介を準備するシステムの確立
・医療・介護の在り方を地域ごとに考えていく「ご当地医療」の必要性
・医療機能情報報告制度を導入、都道府県が医療機能ごとの医療必要量を示す地域医療ビジョンを策定(2018年度の次期医療計画前に実施)
・都道府県を国保の保険者とし、マンパワー確保を含む都道府県の権限
・役割を拡大する(2018年度の次期医療計画前に実施)
・医療法人等が容易に再編・統合できるよう制度を見直す
・医療法人等の都市再開発への参加や多額な資金調達を可能とするなど規制の見直し
・総合診療(専門)医の養成と国民への周知
・医師の業務と看護業務の見直しとチーム医療の確立
・人生最終段階における医療のあり方について国民的合意を形成
・アウトカムや費用対効果を検証する継続的なデータ収集
・消費税増収分の活用(基金方式も検討に値する)
・政府の下に医療・介護の提供体制改革推進体制の設置
・2次圏ごとのニーズ予測と医療提供体制の検証、地域事情に応じた提供体制のモデル像
・一定規模病院の紹介状のない外来患者に定額自己負担を求める仕組み
・入院療養における給食給付等の自己負担のあり方の見直し 等