全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース第807回/2013年8月15日号がん診療提供体制のあり方検討会

地域がん診療病院 複数拠点病院とのグループ指定も認める


<地域がん診療病院>
複数拠点病院とのグループ指定も認める

【がん診療提供体制のあり方検討会】
診療連携拠点病院等の要件案まとまる

 

 厚生労働省に設置されている「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」は8月2日の会合で、同検討会のWGがまとめたがん診療連携拠点病院等の新たな要件案を検討、基本的に了承した。
 事務局(健康局がん対策・健康増進課)は、別途緩和ケアの検討を行なっている「緩和ケア推進検討会」の報告も踏まえ、来年度から施行する新要件をこの秋にも決めたいとしている。
 WGがまとめたのは、①2次医療圏に1ヵ所とされているがん診療連携拠点病院、②拠点病院空白圏を中心に拠点病院とグループを組んで指定される地域がん診療病院(仮称)、③圏域を越えて特定がん種の診療を担うものとして指定される特定領域がん診療病院(仮称)、④都道府県の連携拠点となる都道府県がん診療連携拠点病院、の4類型に関する新たな要件の考え方である。
 このうち、拠点病院のない2次医療圏で、緩和ケア、相談支援、地域連携等がん診療の基本的機能を確保した準拠点として新設される地域がん診療病院については、複数の拠点病院とグループを組むことができるとされた。グループ指定の組み合わせは都道府県または都道府県協議会が決める。
 地域がん診療病院の要件案は一部に拠点病院と同じものもあるが、多くは拠点病院に準じるレベルとなっている。
 議論の中では、がん診療連携拠点病院の要件案で多施設共同臨床研究体制と臨床研究コーディネーター(CRC)の配置が必須とされていないことへの不満が出た。4月の「中間まとめ」では「国際基準に対応した多施設共同臨床研究を実施できる体制をより強化する」ことが述べられている。
 神野正博委員(全日病副会長)は、「医療をわが国の成長戦略の柱の1 つとするならば、拠点病院にもっと臨床研究体制の強化を図る方向性を打ち出すべきではないか」と述べ、WG報告書にその旨を明記するよう求めた。

地域がん診療病院等の主要な要件案(要旨)―「がん診療提供体制のあり方に関するWG報告書」から

Ⅲ. 地域がん診療病院の要件について
1. 診療体制
(1)診療機能
①集学的治療の提供体制及び標準的治療等の提供・自施設で治療を提供できないがんは、グループ指定された拠点病院と連携することで対応できる体制を確保すべき。
 ・複数の拠点病院とグループになることも可とし、都道府県または都道府県協議会が、その地域性に応じて拠点病院と地域がん診療病院のグループ指定の組み合わせを決める。当該拠点病院は、患者の利便性及び連携の実効性を考慮し、隣接した2次医療圏にあることが望ましい。
 ・拠点病院とグループになる地域がん診療病院には拠点病院との定期的な合同カンファレンス開催を求める。併せて、人材交流を行うべき。
 ・拠点病院と同様にクリティカルパスを整備することが求められる。
 ・地域がん診療病院にも、現行の拠点病院要件にあるキャンサーボードの設置と定期的開催を求めるべき。
②手術療法の提供体制当該施設で提供困難な手術は拠点病院と連携して提供できる体制を確保することを求めるべき。
③化学療法の提供体制・当該がん患者が急変等緊急時に入院できる体制の確保を求めるべき。
 ・拠点病院との連携のもとレジメンを審査し、標準的な化学療法を施行できる体制を確保することを求めるべき。
 特に、地域がん診療病院には、導入後の安定したサイクルの化学療法やリスクの低い化学療法の導入・維持等の役割が期待される。
④放射線治療の提供体制自施設で放射線治療を提供できることが望ましいが、困難な場合は拠点病院と連携して提供できる体制を確保することを求めるべき。
⑤病病連携・病診連携の協力体制地域がん診療病院には、グループの拠点病院と連携の下、当該圏域内の詳細な医療情報を地域の医療機関等に情報提供することを求めるべき。
⑥セカンドオピニオンの提示体制我が国に多いがんについてセカンドオピニオンをグループの拠点病院との連携で提示できる体制を有することを求める。
(2)診療従事者
①専門的知識・技能を有する医師の配置・当該施設で対応可能ながん種について専門的知識・技能を有する手術医の配置を求めるべき。
 ・放射線治療を実施する場合は専従の放射線医師を1人以上配置することを求めるべき。
 ・化学療法については常勤かつ原則専任の医師を1人以上配置することを求めるべき。
 ・専任の病理医を1人以上配置することが望ましい。
②専門的な知識・技能を有する医師以外の診療従事者の配置・放射線治療を実施する場合は、専従かつ常勤の診療放射線技師1人以上の配置を求めるべき。
 ・放射線治療を実施する場合は専任かつ常勤の看護師を1人以上配置することが望ましい。
 ・外来化学療法室に専任の専門的知識・技能を有する常勤看護師を1人以上配置することを求める(専従が望ましい)。
 ・化学療法に携わる専任の常勤薬剤師を1人以上配置することが望ましい。
 ・細胞診断に係る業務に携わる者を1人以上配置することを求めるべき。
 ・診療放射線技師、化学療法に携わる看護師、細胞診断に携わる者は、各々、放射線治療専門放射線技師、がん化学療法看護認定看護師ないしがん看護専門看護師及び細胞検査士であることが望ましい。
(3)医療施設・自施設で放射線治療を提供する場合は放射線治療機器の設置を求めるべき。
 ・外来化学療法室の設置を求めるべき。
 ・集中治療室は設置が望ましい。
 ・白血病等を専門分野に掲げる場合は無菌病室の設置を求めるべき。
 ・術中迅速病理診断も含めた標本作成、病理診断が可能な病理診断室の設置を求めるべき。
 ・施設内禁煙を求めるべき。
2. 診療実績地域がん診療病院の実績は該2次圏のがん患者をどの程度診療しているかを目安とし、個別に判断することが望ましい。
3. 相談支援・情報提供・院内がん登録
(1)相談支援センター現行の拠点病院の要件と同様とする。
(2)院内がん登録拠点病院の新しい要件と同じものを求めるべき。
Ⅳ. 特定領域がん診療病院の要件について
 ・特定のがん種について、所在する都道府県による推薦を求めるべき。
 ・診療機能や人材配置等は拠点病院の要件を満たし、特定のがん種について集学的治療を提供可能であることを求めるべき。がん種に応じて必要な治療法が異なるため、指定にあたっては個別に考慮すべき。
 ・圏域を超えて都道府県内全体での実績が求められることから、緊急な治療が必要な患者や合併症を持ち高度な周術期管理が必要な患者に対しクリティカルパスの共有等により拠点病院等と連携した適切ながん医療の提供を求めるべき。
 ・拠点病院等との人材交流、技術提携、合同のカンファレンス、相談支援センター間の情報共有等を行うことが望ましい。