全日病ニュース

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「2025年~40年に東京圏の医療介護は供給不足に」

「2025年~40年に東京圏の医療介護は供給不足に」

【日本創成会議】
供給体制の構造改革、高齢者集住化との一体整備、高齢者の地方移住などを提言

 主に民間人からなる政策提言組織の日本創成会議は6月4日、東京圏の人口の高齢化によって将来の入院需要と介護需要が著しく増加するとの推定結果を発表、高齢者の地方移住などの対策を検討すべきと提言した。
 同会議は、昨年5月に、低出生率と大都市圏とくに東京への人口集中によって多くの地域が消滅に追い込まれていくと警鐘を鳴らし、地方創生への取り組みを訴えている。
 今回は「東京圏高齢化危機回避戦略」と銘打ち、人口の高齢化と一極集中が続く東京とその周辺部における2025年~2040年にかけた医療・介護の需要と供給体制を2015年との対比で推定した。
 提言には、全国344の2次医療圏の「医療・介護の余力度」を示す同会議構成員の高橋泰国際医療福祉大学大学院教授の資料を添付。東京圏高齢化の危機を余力のある地方との連携で乗り切るべきとした。
■「東京圏高齢化危機回避戦略」の骨子
●2025年までの入院需要は全国平均で14%増が見込まれる中、埼玉県25%、千葉県22%、神奈川県23%、東京都20%と、東京圏の増加率が最も高い。2025年から2040年まで入院需要は全国平均で7%増、東京圏の増加率も11~16%にとどまる。四国地方では入院需要の減少が始まる。
●2025年までの外来需要は全国で1.4%しか増えず、多くの地域で減少を始める。東京圏も3 ~ 7%と伸びは低い。2025年以降は全国ベースで2040年に-6%と落ち込み、東京都や神奈川県以外は減少をたどる。
●2025年までの介護需要は全国平均で32%増える中、埼玉県52%、千葉県50%、神奈川県48%と、東京圏は軒並み50%前後の高い伸びが見込まれる。これに対して、東京都は38%と周辺県より伸びが低い。
●一般病床は東京都市町村部や埼玉県等の患者が一定割合で東京都区部に依存してるが、療養病床に関しては、東京都区部患者の4割近くが同市町村部や埼玉県等に入院している。介護サービスでも、特定施設や老健施設で東京都の住民は周辺地域に依存しているなど、東京都は医療・介護の面で周辺地域に多く依存している。
●今後増大する東京圏の入院需要に東京都区部の医療機関は対応しきれない可能性が高い。しかも、周辺地域も高齢者が急増するため、身近な地域での医療体制の整備が急務となっている。「1人当たり急性期医療密度」で測ると、全国平均(1.0)に対して、埼玉県、千葉県、神奈川県の2次医療圏は0.6~0.8程度と、全国的に低い整備水準にある●2015年の介護施設等の収容能力は、東京都区部は全国平均を大きく下回っているが、埼玉県・東京都多摩地域・神奈川県は上回る水準にある。ただし、2025年になると、埼玉、神奈川、多摩地域の介護収容能力はマイナスとなり、その幅は2040年にさらに拡大する。
●東京圏における医療介護体制の大幅な拡充を図る上で、土地の確保、高い整備コスト、高い介護給付費単価、人材確保と、他地域と比べてより大きな制約が立ちはばかる。
●東京圏の高齢化問題にどのように対応すべきか。
(1)外国人介護人材の受け入れ、ICTやロボットの活用、「縦割り」サービスの統合化、サービス別資格の融合化、人材配置基準の緩和等による1人当たり付加価値の向上(賃金水準の向上)を図り、医療介護サービスの「人材依存度」を引き下げる構造改革を進める。
(2)都市機能を集約していく中で、アクセスの改善や「空き家」の活用を含め、高齢者の集住化と医療介護体制の整備を一体的に促進する。
(3)東京圏自治体の連携による、広域かつ長期にわたるサービス供給体制の整備。
(4)定年前からの勤務地選択制度とお試し移住支援の導入、日本版「CCRC(米国のシニアコミュニティ)」構想の推進など、東京圏高齢者の地方への移住の促進。