全日病ニュース

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1割の病院で転換。新たな基準に高い実績で応える7対1病院

1割の病院で転換。新たな基準に高い実績で応える7対1病院

【2014年度入院調査の結果】
地域包括ケア病棟(病床)は国・公立・公的医療機関による届出が1/4を占める

 厚生労働省の医療課は5月29日の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」に「2014年度入院医療等における実態調査の結果」(速報)を報告した。
 同調査は、14年度改定後の、①一般病棟7対1入院基本料算定病棟の変化、②地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)算定病棟・病床の状況、③療養病棟入院基本料算定病棟の変化などを調べたもの。
 14年改定前の入院調査が概ね10%前後であったのに比べると、今回の回答率は概ね30%前後と大幅に増加した。
 調査結果によると、7対1から他入院料に転換した病棟を持つ病院は10%にすぎなかった。転換しなかった医療機関は、80%以上が「施設基準を満たしている」ことをその理由にあげた。
 「重症度、医療・看護必要度」A項目の見直しにもかかわらず、その該当患者割合は改定前と大きく変わることはなく、特定機能病院よりも高い割合を示している上、在宅復帰率は平均92%にも達するなど、7対1を算定している医療機関の多くはニーズに対応した医療の提供に自信をもっていることをうかがわせた。
 調査は地域包括ケア病棟(病床)の実態を各面から探っている。その結果、国公立・公的医療機関による届出が1/4ほどあることが分かった。
 また、自院・他院の急性期病床と自宅からの入棟が約9割を占めること、A項目1点以上の患者は要件(1割)を大きく上回る2割にのぼること、リハを目的とする患者が3割いること、全体に高い在宅復帰率を示していることなどが判明、ポストアキュートとサブアキュートの機能を担う同病棟の特性がうかがえる結果となった。
 この日の分科会は調査結果の報告を受け、概括的な意見を交換した。
 その中で、神野委員(社会医療法人財団董仙会理事長・全日病副会長)は、水晶体再建術や腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の評価が実態にそぐわないとする回答が半数を超えた短期滞在手術等基本料3を取り上げ、「今のままでは重症患者をみると不利になるという現場の声をきちんと受け止める必要がある」と指摘。「DPCに戻すべきかを含めた議論を再度行なう」必要を提起した。
 神野委員は、また、リハを多く提供した場合の報酬を検討する必要に言及するなど、ポストアキュートとサブアキュートの機能の評価を1つに包括している地域包括ケア病棟の評価に疑問を唱えた。
 さらに、療養病棟と障害者病棟の患者特性に共通点があるとした事務局資料に対して、「脳性マヒなど神経疾患が多い障害者病棟と療養病棟の違いも検討されるべきテーマである」と反論した。
 同分科会は調査結果を中医協に報告した上で、16年度改定に向けて、調査結果分析の議論を開始する予定だ。

「2014年度入院医療等における実態調査の結果」(速報)の概要 

●一般病棟7対1入院基本料について
・届出医療機関の1割に他入院料への転換がみられたが、その転換先は10対1と地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)が主であった。
・「重症度、医療・看護必要度」のA項目は、改定の前後で、該当患者割合に大きな変化はなかった。
・7対1における在宅復帰率は平均92%で、ほとんどの医療機関が基準(75%)よりも高い値を示した。直接、自宅及び高齢者向け集合住宅等に退院した患者の割合は78%であったが、その患者の割合が低い医療機関も一定数ある。
●特定除外制度の見直しについて
・90日超患者のほとんど(7対1は100%、10対1は93%)が出来高で算定している。
・90日超患者が減少した医療機関は7対1で56%、10対1で59%であったが、一方で、7対1の30%、10対1の21%の医療機関は増加している。90日超患者が減少した医療機関の約90%に退院支援室または地域連携室が設置されていた。
・90日超患者の退棟先は自宅が最も多く、自宅、療養病棟、介護施設等への退棟が全体の7割弱であった。
●短期滞在手術等基本料について
・短期滞在手術等基本料3の対象項目の多くに、過半数の医療機関が、実態にあわない点は「ない」と回答した。
・その一方で、水晶体再建術と腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術については、半数以上の医療機関が「複数回実施するために再入院が必要」「点数が低すぎて採算がとれない」ことから、実態にあわないと考えている。
●地域包括ケア病棟入院料について
・地域包括ケア病棟は7対1・10対1と亜急性期入院医療管理料からの転換が9割以上を占めている。開設者は、国1%、公立14%、公的7%、社会保険関係団体2%、医療法人55%、その他の法人18%、個人2%で、100~200床が過半数を占めるが、200床以上も一定程度存在している。
・地域包括ケア病棟の患者の入棟前は、自院の急性期病床(43%)、自宅(28%)、他院の急性期病床(18%)で約90%を占める。
・入院理由は全体では「治療のため」(67%)が多く、「リハビリのため」は31%だが、他院の急性期病床から入棟した患者に関しては「リハビリのため」が88%を占めた。
・地域包括ケア病棟入院患者の疾患は骨折・外傷(50%)が最も多く、次いで、肺炎(18%)、脳梗塞(15%)等であった。
・入院患者のうち、A項目1点以上の患者は全体の21%と、基準の10%よりも高かった。項目別では、創傷処置(39%)、呼吸ケア(38%)、専門的な治療処置(19%)、心電図モニター(18%)の該当割合が高かった。
・入院患者の約半数は退院予定が決まっており、退院に向けてリハビリを実施している患者の割合が大きい。
・リハビリ対象患者に対するリハビリ提供単位数は、基準の1日平均2単位を中心に幅広い分布を示した。
・入院患者の半数近くは入棟後15日以内の患者であり、30日以上入院している患者は全体の25%程度であった。
・地域包括ケア病棟の在宅復帰率は、施設基準の要件となっている70%を大きく上回る医療機関が多く、個別の退棟先は自宅や介護老人保健施設が多かった。
・医学的な理由以外の要因により退院できない患者の多くは、入所先施設確保の問題や家族の希望等が原因と回答している場合が多い。
●地域に配慮した評価の対象となった医療圏の医療機関等について
・病床数が50~150床規模のものが多く、医療機関当たりの医師数や看護師数が少ない傾向がみられた。
・連携する他の医療機関数は他の地域と比較して少ない傾向にあったが、介護サービス事業所等の連携先は多かった。
・診療報酬上の評価を活用している医療機関は少なく、その要因として、一定規模以上の病院等が除外していることや、医療従事者の不足、遠隔地で開催される研修への参加が困難であること等の理由があげられた。
●療養病棟、障害者病棟、特殊疾患病棟等について
・療養病棟入院基本料1の約25%で、在宅復帰機能強化加算が届出られていた。加算を届け出ている病棟は、届け出ていない病棟と比 べて在宅復帰率が高い、平均在院日数が短かいといった特徴がみられた。
・加算の届出病棟の退院患者の流れは、自宅からの入院及び自宅への退院が多かった。これに対して、届け出ていない病棟は自院・他院の急性期病床からの入院及び自宅への退院が多くみられた。
・医療区分が軽くなるにつれ医師による指示見直しの頻度は少なくなる傾向がみられが、医療区分2で約50%、医療区分3でも約30%の患者が、医師による指示の見直しをほとんど必要としない状態にある。医師による指示の見直しがほとんど必要のない患者のうち、医療区分3では「酸素療法」「中心静脈栄養」に該当する患者が特に多かった。医療区分2では「喀痰吸引」に該当する患者が特に多かった。
・療養病棟入院基本料、障害者病棟入院基本料、特殊疾患病棟入院料の届出を行っている病棟それぞれに脳血管疾患の患者が一定数入院しているが、そのうち、医師による指示の見直しをほとんど必要としない患者の割合は、療養病棟基本料1と障害者施設等入院基本料とが概ね同等で、特殊疾患病棟はさらに高い割合を示した。