全日病ニュース

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療養病床のあり方と在宅等の医療提供のあり方について議論

療養病床のあり方と在宅等の医療提供のあり方について議論

介護療養と医療療養経過措置廃止への対応も議論。法改正も視野

 厚生労働省は、医政局(地域医療計画課)、老健局(老人保健課)、保険局(医療介護連携政策課)の3局合同による「療養病床のあり方等に関する検討会」を設置、7月10日に初会合をもった。
 地域医療構想における2025年の必要病床数推計で「在宅医療等で対応する」とされた慢性期患者の受皿を検討することが一義的な目的だが、併せて、2017年度末で廃止が予定されている介護療養病床の取り扱いや、同じく医療法の6対1と5対1(診療報酬では25対1)各看護の経過措置が終了する医療療養病床の今後の位置づけを含め、2025年に向けた慢性期の需要に対応した医療提供体制のあり方が検討される。
 厚労省は、地域差を含めて在宅医療・介護の供給体制に課題が山積している現在、その単なる整備を進めるだけでは、療養病床を全国的に削減していく地域医療構想の実現は難しいと受け止めており、介護施設だけでなく、高齢者の住宅も含めた地域の居住空間に医療を提供していく新たな施設とサービスの類型化が必要と考えている。
 そうした視野の下、重度な医療を必要とする療養病床の患者と様々なサポートの組み合わせで地域で生活できる患者のすみ分けを明確にするべく、この検討会で、療養病床以外で療養を継続できる慢性期患者に医療を提供する施設とサービスの選択肢を洗い出す方針だ。
 厚労省の幹部は「タブーのない議論をしていただく」と本紙に語った。
 年内に提言をまとめ、年明け後に、社会保障審議会の医療部会や介護保険部会等に提案をあげ、法改正を含む制度改正に向けた各論の議論に着手。16年の通常国会で必要な法改正をすませ、報酬とそれに関係した施設・人員等の基準は18年の診療報酬・介護報酬同時改定で実現することを考えている。
 検討会は医師8人を含む16人の構成員からなり、座長に遠藤久夫学習院大学教授を選出した。全日病の関係では土屋繁之常任理事(土屋病院理事長)が構成員となった。
 初会合の冒頭、二川一男医政局長は「2025年を見据えると、今までの施設類型にとらわれない考え方が必要」と述べ、「様々な選択肢を用意していただきたい」と挨拶した。
 事務局(保険局医療介護連携政策課)は、検討会の検討事項を、(1)介護療養病床を含む療養病床の今後のあり方、(2)慢性期の医療・介護ニーズに対応するための療養病床以外の医療・介護サービス提供体制のあり方、の2点に集約して示した。
 また、昨年実施した慢性期に関する横断調査の結果を資料として開示。特養、老健施設、介護療養病床、医療療養病床における患者・入所者の実態の一端を、患者・利用者の状態像、入退所の状況、提供されている医療等の状況の各面から明らかにした。
 事務局は、さらに、論点(たたき台)」(別掲)を示し、議論を促した。
 初回ということでフリートーキングに終始したが、構成員からは、以下のような意見・提案が示された。この日の議論を踏まえ、事務局は次回9月の会合にさらなる論点を提示し、議論の深化を図る考えだ。
・療養病床的な機能は今後も必要だが、対象となる状態像や入院期間の議論が必要
・患者像に応じた施設体系を構築すべきではないか
・医療区分の見直しを考える時期にきている
・医療区分の地域差を示すデータを踏まえて議論すべきだ
・「時々入院ほぼ在宅」という考え方で臨むべきではないか
・例えば、サ高住や老人ホームを併設した病院が考えられないか

□論点(たたき台)―――――――――

1. 慢性期医療のあり方として、例えば、次のような視点について、どのように考えるか。
・病気と共存しながらQOLの維持
・向上を目指す医療・病気を治すだけでなく、患者の生活全体を視野に入れた「治し、支える」医療
・尊厳をもって人生の最終段階を迎えることを支える医療 等
2. 慢性期医療の提供体制等のあり方について
(1)今後の慢性期医療のあり方を踏まえ、医療提供側に求められる機能には、どのようなものがあるか。
(2)上記(1)の機能を果たすための医療提供形態としては、「療養病床のように医療スタッフを内包して提供する形」と、「在宅医療のように、住まいを拠点として医療を外から提供する形」に大別されるが、それぞれの提供形態のあり方や、選択肢を考える上での条件等(患者像等)をどのように考えるか。
(3)上記(1)(2)の論点も踏まえつつ、療養病床で主に対応することが求められる患者像をどのように考えるか。また、患者像を踏まえた療養病床における医療のあり方をどのように考えるか。その際、例えば、次のような視点や慢性期医療の役割等を踏まえて、どのように考えるか。
・病気と共存しながらQOLの維持・向上が図られるよう、在宅復帰や在宅生活の継続を支援する
・継続的な医学管理を行い、人生の最終段階においても穏やかな看取りを支える 等
 さらに、上記を踏まえた以下のような論点について、どのように考えるか。①人員体制のあり方、②施設や設備のあり方、③報酬を含む制度上の位置づけのあり方、④医療計画、介護保険事業計画上の位置づけや施設等の整備に対する財政支援のあり方
(4)療養病床以外の医療・介護サービス提供体制のあり方
 療養病床における医療等のあり方も踏まえ、慢性期の医療・介護ニーズに対応するための、療養病床以外の医療・介護サービス提供体制のあり方について、どのように考えるか。