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ホーム全日病ニュース(2023年)第1034回/2023年6月15日号「人生会議」よく知る医師・看護師が5割下回る

「人生会議」よく知る医師・看護師が5割下回る

「人生会議」よく知る医師・看護師が5割下回る

【社保審・医療部会】「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」

 厚生労働省は6月2日の社会保障審議会・医療部会(遠藤久夫部会長)に、2022年度の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」の結果を報告した。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の略称である人生会議を「よく知っている」と回答した医師の割合は45.9%で、前回2017年度調査から倍増したが、5割を下回っている。看護師も同様の傾向にある。
 全日病副会長の神野正博委員は、「医療従事者がACPをよく知らないと、患者・家族に説明できない」と結果を問題視。よく知らないと回答した年齢・属性などを把握し、さらなる普及啓発を図る必要があるとの考えを示した。
 厚労省では、1992年以降、人生の最終段階における医療・ケアに対する意識などに関する調査を5年に1度実施している。2018年11月には、人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合うACP の取組みを「人生会議」と名付けた。
 ACPを「よく知っている」と回答した割合は、一般国民では5.9%で、前回調査の3.3%と比べ、大きくは上昇していない。一方、医師は22.4%から45.9%、看護師は19.7%から45.8%に倍増した。介護支援専門員は47.5%で医師・看護師より高かった。なお、前回までは看護職員としていたため、比較はできない。また、実際に何を知っているかは明らかでない。また、医師の24.5%、看護師の19.6%が「知らない」と回答しており、ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子委員は、「ACPにあまり関わりのない医療従事者もいると思うが、少ないとは言えない数字」と不安を口にした。
 人生の最終段階における医療・ケアについて、「考えたことがある」と回答した割合をみると、一般国民で51.9%、医師で82.2%、看護師で85.3%、介護支援専門員で85.1%となっている。人生会議を進めることに「賛成」の割合は、一般国民で57.3%、医師で76.1%、看護師で87.0%、介護支援専門員で81.8%となっている。
 また、国際医療福祉大学大学院教授の島崎謙治委員は、救急医療の現場で延命治療を行うことの判断が、自治体により異なり、「せっかく作ったACPがうまく活用されていない」と指摘。厚労省と総務省が協力して、統一的な取扱いを定める検討を再開すべきと主張した。
 一方、神野委員は、「慢性疾患やがんが進行した末期症状であれば、ACPの活用が適している。しかし、目の前で息が止まっている人がいて、それが餅を詰まらせたからなのか、病気の末期症状なのかは、消防でも救急外来でもその時点では判断できない。その場合は、最善を尽くすのが医療の使命だ。すべての状況を慮って判断しろというのは、酷な感じがする」と強調した。

オン診で医師非常駐の診療所可能
 厚労省は同日、「へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設」を通知したことを報告した。政府の規制改革推進会議が、「デジタルデバイスに明るくない高齢者等の医療の確保の観点から、へき地等において公民館等にオンライン診療のための医師非常駐の診療所を開設可能」とすることを求めていたことに対応したもの。昨年12月の医療部会で議論し、概ね了承していた。
 医師非常駐の診療所を開設できるのは、無医地区、準無医地区、離島のほか、都道府県知事が認めた地区を含む。
 神野委員は、オンライン診療を実施する医療機関が、事前に合意した急変時に対応する医療機関と連携可能である地域の医療機関であることについて、事前の合意が重要であると指摘した。
 なお、規制改革会議は、2023年中に、「へき地等に限らず都市部を含めこのような診療所を開設可能とすることについて、引き続き検討し、結論を得る」ことを6月1日に答申している。
 前回(5月12日)に概ね了承した「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」も報告された。ただ、遠隔医療の定義が、「情報通信機器を活用した、健康増進、医療に関する行為」であり、医療にとどまらない幅広い意味を含む「健康増進」が入っていることに神野委員は、違和感を示した。日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、遠隔画像診断などD to Dの遠隔診療で間違いが生じた場合の責任の所在などの統一的なルールを引き続き検討することを求めた。
 そのほか、第8次医療計画の新興感染症対応の報告があった。5月26日にガイドラインが発出されている。平時に都道府県と医療機関がその機能・役割に応じた協定を締結する仕組みなどが法定化されたことを踏まえ、流行初期医療確保措置を含め、新興感染症発生からの一連の対応を示している。

 

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