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ホーム全日病ニュース(2023年)第1034回/2023年6月15日号病院再編などの対応方針に合意した医療機関等が60%に上昇

病院再編などの対応方針に合意した医療機関等が60%に上昇

病院再編などの対応方針に合意した医療機関等が60%に上昇

【厚労省】地域医療構想の進捗状況を報告

 厚生労働省は5月25日の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)に、地域医療構想の進捗状況を報告した。対応方針が措置済を含め「合意・検証済」の医療機関は、半年前と比べ、36%から60%に上昇。「成果が出ている」(猪口雄二委員・全日病会長(日本医師会副会長))と評価できる結果となった。ただ、対応方針の内容がわからないことや、都道府県で取組みに差があることなどが課題とされた。
 地域医療構想の進捗状況を把握するため、各医療機関の対応方針の策定や検証・見直しの状況などについて、厚労省が都道府県に確認を求めた結果を集計した。
 各構想区域の医療機関の対応方針が、2023年3月末時点で、措置済みを含む「合意・検証済」となっている割合は、医療機関単位で60%、病床単位で76%となった。半年前の2022年9月末時点と比べると、医療機関単位では36%から60%、病床単位では61%から76%に上がっている(下の図表)。
 対応方針の措置済みを含む「合意・検証済」の割合が80%を超える都道府県は16府県。「合意・検証済」・「協議・検証中」の割合が50%に満たない都道府県は9県となっている。「協議・検証未開始」の医療機関に、その理由をきくと、「新型コロナ対応の経験を踏まえ、改めて検討中」が最も多い。
 地域医療構想においては、公立・公的病院の対応方針の策定を優先してきた。それもあり、436の再検証対象医療機関を除き、公立病院の措置済または策定済の割合は99%、公的病院では97%にまで高まった。
 一方、厚労省の分析により、急性期の「診療実績が特に少ない」と判断され、再検証が求められた公立・公的病院の再検証の措置済・検証済の割合は、53%から58%へのわずかな上昇となっている。また、措置済・検証済とされた253病院のうち、57病院が「従前どおり」となっていた。
 民間病院など「その他医療機関」の措置済または合意済の割合は、29%から55%に上がった。だが、健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、民間病院の協議の加速化を求めた。
 これに対し、全日病副会長の織田正道委員は、「公立・公的病院は時間をかけて、この数字まで上げたのに対し、民間病院は、短期間で協議を進めてきた。民間病院は数が多く、実数でみれば、すでにかなりの施設が協議を終えている。地域医療構想が進捗していないということではない」と反論し、現状の対応の継続を求めた。
 なお、「合意・検証済」の約7,600の医療機関のうち、民間病院など「その他医療機関」は約6,100施設を占める。
 猪口委員は、医療機関単位で「合意・検証済」が36%から60%に上がったことから、「それぞれの調整会議がかなり努力した結果であり、それなりの成果が出ていると言えるのではないか」と評価した。その上で、「介護と在宅医療を含めないと、適切な病床のあり方の議論にならない。しかし、調整会議のメンバーは病院関係者ばかりで、その議論になりにくい。2025年までの地域医療構想でそれを考えるか、その後の課題とするかの問題はあるが、喫緊の課題」と述べた。
 介護と在宅を含めた地域医療構想の必要性を指摘する意見は、他の委員からも相次いだ。織田委員は、「次の地域医療構想に向けた議論をこのワーキンググループで始めるべき。我々の医療圏でも、アンケート調査などで現場の取組みを把握し、介護と在宅医療を含めた望ましい地域医療の圏域を考えている」と述べた。
 対応方針の措置済みを含む「合意・検証済」の割合が上昇したことに、多くの委員が一定の評価を与えたが、対応方針の内容が不明であることには不満が出た。地域医療構想の評価がプロセスのみになっており、具体的な成果として、何を実現したかがわからないためで、改善が求められた。例えば、日本医療法人協会会長代行の伊藤伸一委員は、「複数病院が合併し巨大公的病院ができて、二次救急を担う地域の民間病院の存続を危うくしかねない事例が出ている。追跡調査を含め、ワーキンググループで議論すべき」と主張した。

病床数の合計は見込みを達成
 厚労省は、同日のワーキンググループに、2022年度病床機能報告の結果も報告した。各医療機関が病棟単位で報告する病床機能報告による病床数の合計は119.9万床だった。「2025年7月1日時点における病床の機能として予定」された2025年の病床数の合計は119.0万床であり、2016年時点のデータで推計した医療需要に見合う病床の必要量である119.1万床と比べ、1千床少ないという結果になる。病床数の合計ということでは、目指したボリュームにほぼ落ち着く形だ。
 地域医療構想では、一般病床の医療資源投入量の低い患者の一定数と療養病床の医療区分1の患者が減少し、療養病床の地域差縮減が行われることなどにより、病床が減ると見込まれていた。理由は明確ではないが、実際にそのような見込みが現実化している。
 一方、医療機能の割合ということでは、病床の必要量と一致しない。特に、急性期は2022年が45%であるのに対し、病床の必要量では34%、回復期は2022年が17%であるのに対し、病床の必要量では31%となっている(左の図表)。
 織田委員は、「当初の推計では2025年に152万床まで膨らむとされていたことを考えれば、地域医療構想はうまくいっている。急性期が多く、回復期が少ないということは今でも散々言われているが、急性期に回復期の機能が含まれることを考慮すれば、回復期が足りないということはない。新たな地域医療構想で、また同じ議論を繰り返すことはあってはならず、この4機能を見直さないといけない」と述べた。

 

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