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ホーム全日病ニュース(2023年)第1034回/2023年6月15日号標準型電子カルテの開発含め医療DX の工程表を決定

標準型電子カルテの開発含め医療DX の工程表を決定

標準型電子カルテの開発含め医療DX の工程表を決定

【政府】全国医療情報プラットフォームの構築や診療報酬の共通算定モジュールの開発も

 政府は6月2日、医療DX推進本部を開催し、医療DXの工程表を決定した。出席した岸田文雄首相は、工程表に沿って、「PDCAを回しながら、医療界や産業界と一丸となって、医療DXの実現に向け、引き続き、しっかりと取組む」との姿勢を示した。医療DXの内容としては、マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速、全国医療情報プラットフォームの構築、標準型電子カルテの開発、診療報酬の共通算定モジュールの開発をあげた。
 診療報酬改定の後ろ倒しの時期については、中医協の議論を踏まえて決めるとの文言にとどめている。
 目下、一部で安全性への信頼が揺らいでいるマイナンバーカードは、全国医療情報プラットフォームを通じた医療情報共有の基盤であるオンライン資格確認システムで使われる。2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化することなどを盛り込んだ法案も成立し、環境整備を加速する。2023年度中に生活保護(医療扶助)でのオンライン資格確認を導入することも明確化した。

電子カルテ情報の標準化を進める
 全国医療情報プラットフォームにおいて共有する医療情報は、これまでレセプト・特定健診等の情報を対象としてきたが、今年度から電子カルテ情報の共有システムの開発が始まっている。2024年度中には、電子カルテ情報の標準化を実現した医療機関等から順次運用を開始する予定だ。
 あわせて、2025年3月までに、オンライン資格確認を導入した概ねすべての医療機関・薬局に電子処方箋を導入することを目指し、医療機関などへの支援を実施するとしている。
 ほかにも、「介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療や地方単独の医療費助成などに係るマイナンバーカードを利用した情報連携を実現するとともに、次の感染症危機にも対応」することも明らかにした。
 さらに、2024年度中に、自治体の実施事業の手続きの際に必要な診断書などを電子的に提出する仕組みの実現を目指す。現状では、関係者・機関間で紙の書類がやり取りされており、患者の手間になっている。各機関でも、その都度入力作業が生じ、情報共有にも限界が生じている状況を改善する。個人が医療や介護などの行政手続をオンラインで申請できる機能をマイナポータルに追加することも盛り込んでいる。
 一方、共有される医療情報の二次利用については、論点を整理するため、2023年度中に体制を整理する。

標準型電子カルテを開発
 電子カルテ情報の標準化等については、3文書・6情報の医療情報を標準規格化し、共有する作業を進めている。2024年度に、対象を蘇生処置の関連情報や歯科・看護の領域における関連情報まで拡大。特に救急時に有用な情報などを速やかに閲覧できる仕組みを整備する。薬局との情報共有を可能にするための標準規格化も進める。
 これとは別に、電子カルテを導入していない医療機関が少なくないことを踏まえ、クラウドベースの標準型電子カルテを国主導で開発する。遅くとも2030年には、概ねすべての医療機関が電子カルテを導入することを目指している。

診療報酬の共通算定モジュール開発
 診療報酬改定DXは、診療報酬改定時の医療機関やベンダなどの負担が大きいことから、作業の一本化や分散・平準化を図るとともに、進化するデジタル技術を最大限に活用して、間接コストの極小化を実現することを目的とする。
 2024年度に、医療機関などの各システム間の共通言語となるマスタとそれを活用した電子点数表を改善し、提供する。「診療報酬点数表におけるルールの明確化・簡素化を図るとともに、診療報酬の算定と患者の窓口負担金計算を行うための全国統一の共通的な電子計算プログラムである共通算定モジュールの開発」を進め、2025年度にモデル事業を実施した上で、2026年度に本格的に提供する考えだ。
 これらのシステムの開発・運用主体は社会保険診療報酬支払基金を母体とする。膨大な業務が発生することが想定され、今後、「具体的な組織のあり方、人員体制、受益者負担の観点を踏まえた公的支援を含む運用資金のあり方等について速やかに検討し、必要な措置を講ずる」としている。

 

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