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ホーム全日病ニュース(2023年)第1038回/2023年8月15日号診療報酬改定の6月施行を了承 2024年度から2か月後ろ倒し

診療報酬改定の6月施行を了承 2024年度から2か月後ろ倒し

診療報酬改定の6月施行を了承 2024年度から2か月後ろ倒し

【中医協・総会】ベンダのコスト減少分を医療機関に還元するよう求める

 中医協総会(小塩隆士会長)は8月2日、診療報酬改定DXの推進に向けて、例年4月1日である診療報酬改定の施行時期を、2024年度から6月1日に後ろ倒しすることを了承した。従来は診療報酬改定の答申や告示から施行までの期間が短く、その間の医療機関やベンダの業務が逼迫していたが、施行を2か月後ろ倒しにすることで、負担の平準化を図る。
 診療報酬改定について、政府の医療DX 推進本部が決定した「医療DX の推進に関する工程表」には、2024年度に医療機関等の各システム間の共通言語となるマスタおよびそれを活用した電子点数表を改善・提供して、共通コストを削減する方針が記載されている。2026年度には共通算定モジュールを本格的に提供し、共通算定モジュール等を実装した標準型レセコンや標準型電子カルテを提供することにより、医療機関等のシステムを抜本的に改革し、医療機関等の間接コストを極小化する方針となっている。
 このような診療報酬改定DXに対応できるよう、ベンダの作業期間を確保するために診療報酬改定の施行時期の後ろ倒しが課題となっていた。医療DX推進本部はその検討を中医協に委ねた。
 8月2日の中医協総会に、厚生労働省は2024年度から、診療報酬の本体改定を2か月後ろ倒しにすることを提案し、了承された。診療報酬改定の施行は6月1日となり、初回のレセプト請求は7月10日となる(図表参照)。経過措置がある項目は、従来と同じ9月までを基本とする。薬価改定の施行は、例年通り4月1日のままとする。
 厚労省は今後、このスケジュールを前提に改定の準備作業を進めるとしている。改定率の決定や答申のスケジュールは、後ろ倒しにせず例年通りとする予定。

効果検証の実施を要望
 日本医師会常任理事の長島公之委員は、「診療報酬改定DXの目的である、医療機関の負担の極小化を実現するためには、単に実施時期の後ろ倒しだけでは十分ではなく、同時に医療機関の負担軽減や効率化のための他の取組みが必要である。医療機関の費用負担軽減のためには、改定時期の後ろ倒しで最も大きな恩恵を受けるベンダが保守費用やリース料を大幅に引き下げるなどして、確実に医療機関に還元する必要がある。それを実現する仕組みをつくるべきだ」と訴えた。
 厚労省保険局の眞鍋馨医療課長は、「診療報酬改定DXの効果が医療機関に還元されることが重要だと考えている」と応じた。厚労省は、秋までに医科・歯科・調剤の分野別の関係団体とベンダから、ヒアリングを実施する予定。そのような機会を通じて、「ベンダの費用低減分が確実に還元されることを求めていきたい」と述べた。
 長島委員は、改定時期の後ろ倒しを実施した後に効果検証を実施することも要望した。他の委員からも、2026年度以降の診療報酬改定DXの進め方は、検証結果を踏まえて議論するべきとの意見が出された。
 薬価改定の施行時期は例年通り4月となることから、患者の自己負担が2024年4月と6月の2度、変わる場合がある。医療現場の混乱を防ぐため、改定時期の後ろ倒しについて医療機関や薬局、国民に対し丁寧に周知することを求める声があがった。
 支払側の委員からは、診療報酬改定DXを進めることで、「改定にかかるコストや医療機関の負担の抑制、保険者の負担も軽減され、医療保険制度全体の運営コストが削減されることを期待する」との意見が出された。

小児の入院医療にさらなる評価を
 同日の総会では、小児・周産期についても議論が行われた。
 小児人口は減少傾向にあるなかで、小児の外来患者数はそれほど減ってはいないが、入院患者数は年々減少している。
 小児科を標榜する病院数は減少しており、2020年は2,523病院となっている。診療所の数は横ばい。小児科医師数は増加傾向にあり、厚労省は「特に病院小児科については集約化が進んできていると考えられる」と指摘した。
 日本病院会副会長の島弘志委員は、「小児二次、三次救急の連携は言うまでもないが、特に高度医療では地域での集約化を図るとともに、診療報酬でさらなる評価が必要だ」と訴えた。
 小児科病棟における入院患者の家族の付き添いについても意見が出された。小児入院医療管理料を届け出る病棟のうち46%では保育士を、27%では看護補助者を配置している。小児入院患者の家族の付き添いについては、昨年10~ 11月に実施された実態調査の結果が厚労省から報告された。病院側から家族等に付き添いを依頼している実態があることや、付き添いの家族の約半数が睡眠不足や他の家族のケアに困っていることがわかった。
 今後、こども家庭庁を中心に、付き添い時の家族等への食事や睡眠等に関する医療機関の取組みや課題について調査を実施する予定となっている。
 長島委員は、「医療的ケア児やNICUからステップダウンしてくる児などが昨今増加していることを踏まえれば、現在の職員配置でさまざまな需要を受け止め切れているのか、検討する必要がある。今後の実態調査の結果についても、慎重に検討すべき」と述べた。
 小児外来医療については、前回改定で小児かかりつけ診療料の要件に、時間外対応加算3の届出や在宅医当番医制等により初期小児救急医療に参加し、休日または夜間の診療を年6回以上の頻度で行っていることを追加した。小児かかりつけ医診療料の算定回数は2021年から2022年にかけて増加した。
 長島委員は、「今回改定でも、地域でのさまざまな需要に対し役割を果たしている医療機関という視点は重要だ」と指摘した。
 小児患者への往診料が急増していることについても議論がなされた。往診料の算定回数は、2019年までは増加傾向だったが、2020年に減少し、2021年は前年の2.6倍に増加、2022年はさらに1.9倍に増加した。在宅患者訪問診療料の算定回数は、年々増加傾向にある。コロナ禍で特例的に往診の算定要件が一部緩和されたことも背景にある。
 支払側の委員からは、「コロナ禍で往診が一定の役割を果たしたことも事実だが、上手な医療のかかり方を考える必要がある」(健康保険組合連合会理事の松本真人委員)と問題視する意見も出された。往診のコロナ特例はすでに一部廃止されているため、厚労省は、現在の往診の取扱いを周知徹底するなどの対応を検討するとした。
 長島委員は「保険医療機関に直接電話等で往診を求め、医師が必要性を認めた場合に、地域に密着した医師が通常の在宅医療の一部として対応することが基本だ」と述べた。
 小児の緩和ケアについても議論された。緩和ケア病棟が小児に全く利用されていない実態が報告され、小児の緩和ケア体制整備が必要との意見が複数の委員から出された。

周産期医療は連携と集約化が重要
 周産期医療では、医療計画において、基幹施設を中心とした医療機関・機能の集約化と重点化を進めるとともに、NICUや専門医などの機能と人材を集約化・重点化することを通じて、総合周産期母子医療センターを中心とした体制を構築する方向となっている。集約化・重点化により、分娩施設へのアクセスが悪化した地域の妊産婦に対しては、地域の実情に応じた対策を講じることとされている。
 島委員は「産科診療所が減るなかで、機能分化・連携と集約化が重要だ。また、新生児科との連携も不可欠だ」と指摘した。
 他方、集約化・重点化が進むことにより医療へのアクセスが悪化する地域があることも考慮すべきとし、「地域医療の確保という視点も欠かせない」との意見もあった。

 

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