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ホーム全日病ニュース(2023年)第1038回/2023年8月15日号新興感染症対応を含めた感染症対応の評価を議論

新興感染症対応を含めた感染症対応の評価を議論

新興感染症対応を含めた感染症対応の評価を議論

【中医協総会】感染対策向上加算と新興感染症対応の整合性求められる

 中医協総会(小塩隆士会長)は7月26日、2024年度診療報酬改定に向け感染症をテーマに議論を行った。医療計画に追加された新興感染症やそれ以外の感染症に対応できる体制、薬剤耐性対策の評価が論点となった。段階的な縮小が図られている新型コロナの診療報酬上の特例の取扱いは別途議論される。
 新型コロナの経験を踏まえ、医療計画の記載事項に「新興感染症発生・まん延時の医療」が追加された。2022年12月に成立した改正感染症法等では、平時にあらかじめ都道府県と医療機関等がその機能・役割に応じた協定を締結し、新興感染症発生・まん延時には、その協定に基づいて医療を提供する仕組み等が法定化された。第8次医療計画においては、こうした協定締結を進めるとともに、感染症対応を行う人材の育成を行い、対応力を強化することになっている。
 改正感染症法等により、新興感染症発生時の政府による公表後の一定期間(3か月)、「流行初期医療確保措置」が講じられる。これは、流行初期に感染症医療を行う協定締結医療機関の経営を支えるため、感染症医療を行った月の診療報酬収入が、流行前の同月のそれを下回った場合に、その差額を公費と医療保険で支払うという措置である。
 新興感染症の特性が不明で、どのような対応が適切であるかがわからない時期の医療機関に対する減収補償であり、感染症の特性をある程度把握できた後は、新型コロナ対応のように、補助金や診療報酬の特例が実施されることになる。
 政府は、新型コロナの重点医療機関を念頭に、流行初期医療確保措置の対象となる協定締結医療機関を約500施設と想定。約1.9万床の確保を目指すとしている。発熱外来は約3.3万人を受け入れるため、約1,500施設との協定締結を目指す。今後、どのような新興感染症が発生するかは、誰にもわからないが、新型コロナを参考にせざるを得ないというのが政府の考えだ。
 流行初期医療確保措置以降の3か月は、対応可能な民間医療機関を含め、流行初期対応を行っていない公的医療機関を中心に、病床で約3.5万床、発熱外来で約5,300施設の確保を目指す。徐々に対応医療機関を拡大し、6か月以降は、同様に、約5.1万床、約4.2万施設を確保すると想定した。
 診療報酬については、2022年度改定で感染防止対策加算が再編され、感染対策向上加算1~3、外来感染対策向上加算が新設された。新型コロナ対応では、今年5月7日まで、感染対策向上加算1は重点医療機関、感染対策向上加算2は重点医療機関または協力医療機関、感染対策向上加算3は重点医療機関、協力医療機関または診療・検査医療機関、外来感染対策向上加算は診療・検査医療機関が算定するものとなっていた。
 2022年7月1日時点で、感染対策向上加算1の算定は1,248施設、加算2は1,029施設、加算3は2,042施設となっている。健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「流行初期医療確保措置の対象となる500施設と加算1を算定する1,248施設の差となる病院に期待することは何か」と質問した。
 これに対し、厚生労働省保険局の眞鍋馨医療課長は、「新興感染症対応の医療機関と感染対策向上加算の算定医療機関の整合性が必要との意見と受け止めたが、まだ整理できていない」と述べた。
 同日の資料でも、感染対策向上加算の施設基準の解釈において、新型コロナ対応の重点医療機関・協力医療機関等の枠組みは連動させていたが、第8次医療計画における新興感染症対応の枠組みとは一致していないことを指摘している。他の支払側委員からも、感染対策向上加算の算定と新興感染症対応との連動が求められた。
 一方、日本医師会常任理事の長島公之委員は、都道府県との協定締結医療機関以外でも、より多くの医療機関が、発熱外来を設けることができるよう、平時における感染対策の評価を充実させることを主張した。あわせて、新興感染症まん延時に、通常医療を担う医療機関が、適切な感染対策が実施できるようにするための支援が必要であることを強調した。
 新型コロナでは、高齢者施設でクラスターが多く発生したため、高齢者施設で感染対策を行いつつ、医療が提供される体制が課題となった。
 日本医師会常任理事の江澤和彦委員は、「感染対策向上加算の施設基準では、医療機関間・行政等との連携を求めている。医療機関が高齢者施設を支援する実効性のある関係機関の取組みも評価することを検討すべき。同時改定であるので、介護報酬での対応も検討してほしい」と主張した。
 日本病院会副会長の島弘志委員も、平時からの関係機関が連携した取組みが重要と強調。その上で、「消防隊は災害に備えて常日頃から訓練している。パンデミックという有事においても活躍してもらうことを新興感染症対応の概念に含めるべき」と述べた。

薬剤耐性対策の目標達成が課題
 薬剤耐性対策については、薬剤耐性対策アクションプランにおいて、微生物の薬剤耐性率や抗菌薬使用量などの目標が定められている。診療報酬でも、入院医療での抗菌薬適正使用チームや外来での抗菌薬適正使用に関する指導に対する評価を設けているものの、アクションプランの目標値の達成には至っていないことが課題とされた。
 長島委員は、「医療現場は薬剤耐性対策の重要性は理解している」とした上で、抗菌薬の適正使用を促す評価の充実や感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)に医療機関が参加しやすくなる工夫などが必要と主張した。
 松本委員は、抗菌薬適正使用の取組みに対する評価として、適正使用の実績を反映させる仕組みを求めた。

 

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