全日病ニュース
年金・医療等は5,200億円を要求し予算編成過程で圧縮
年金・医療等は5,200億円を要求し予算編成過程で圧縮
【政府】2024年度予算の概算要求の基本的な方針を了承
政府は7月25日の臨時閣議で、2024年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針を了承した。
2024年度政府予算については、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定がある一方で、「こども・子育て支援加速化プラン」の財源を歳出改革等で賄う考えが骨太方針2023に示されている。物価・賃金の上昇などを踏まえると、医療機関などがそれに対応できる報酬改定が必要とされるものの、難しい財政事情にある。
さまざまな事情が複雑に絡み合う中で、概算要求基準段階では、「こども・子育て支援加速化プラン」の具体化の取扱いは予算編成過程で検討ということになり、高齢化等に伴って増加する年金・医療等の自然増は5,200億円を上限としつつ、年末までに自然増の圧縮を図るというこれまでの方針が踏襲されている。
予算の全体像をみると、2023年度予算額80.8兆円のうち、年金・医療等の経費は34.8兆円で、自然増は5,200億円の要求が認められた。最近の予算では、年金・医療等の経費以外の地方交付税交付金等(2023年度で16.4兆円)、裁量的経費(同14.3兆円)、義務的経費(8.7兆円)の増額は認められておらず、裁量的経費については、一律に1割削減した上で、重要政策推進枠に該当する政策の予算のみ、増額が認められる形となっている。
ただし、2023年度で6.6兆円の防衛力整備計画対象経費は、2024年度予算案において、年金・医療等の自然増を超える増額となる見込みである。
概算要求段階で年金・医療等の経費は5,200億円の自然増の要求が認められたが、年末の予算案決定の段階では、圧縮が図られる。例えば、2023年度予算では、5,600億円の自然増の要求が認められたが、4,100億円分まで圧縮した(年金スライド分除く)。1,500億円の圧縮を図った計算になり、最も効果が大きかったのは、薬価改定の▲700億円であり、次いで、後期高齢者医療の患者負担見直しの▲400億円となっている。
年金・医療等の経費の考え方は、「基本的な方針」において、「増加額について、2013年度予算から前年度当初予算までと同様、経済再生やこれまでの改革等の効果を引き続き適切に見込むとともに、年金・医療等に係る経費について、「新経済・財政再生計画 改革工程表」に沿って着実に改革を実行していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組む」としている。
団塊世代がすべて75歳以上となりつつあり、年金・医療等の給付を受ける高齢者が増加し、給付費は増える。しかし、財政も厳しいので、高齢化等による伸びは認めるが、それ以外の増加分はできるかぎり抑制する。あるいは、増加する分は他の経費の削減によって賄うという考えが示されている。なお、高齢化等の「等」には、「医療の高度化」が含まれていると考えられている。
2024年度予算案については、物価・賃金が高騰する中で、2025年問題に対応するための同時改定があり、「こども・子育て支援加速化プラン」の財源も確保しなければならない。骨太方針2023では、同時改定について、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う」という、医療・介護関係者への一定の配慮を盛り込んだ玉虫色の表現となっている。
全日病ニュース2023年8月15日号 HTML版
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