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ホーム全日病ニュース(2024年)第1049回/2024年2月15日号「重症度、医療・看護必要度」の見直しは公益裁定で決着

「重症度、医療・看護必要度」の見直しは公益裁定で決着

「重症度、医療・看護必要度」の見直しは公益裁定で決着

【中医協総会】見直し後の「必要度」の割合①の基準値は20%、割合②の基準値は27%

 中医協総会(小塩隆士会長)は1月31日、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(以下、必要度)の見直しについて、診療側と支払側の意見の隔たりが大きく、合意形成が難しくなったことから、公益裁定に判断を委ねた。その結果、「必要度」の項目は大幅に見直した上で、「該当患者割合の基準」を2つに区分。看護配置が7対1の病棟である急性期一般入院料1の割合①の基準値を20%、割合②の基準値を27%とした。平均在院日数は現行の「18日以内」を「16日以内」に短縮する。
 看護・介護の手間を評価したB項目の廃止や、救急搬送後の入院の評価日数の短縮なども含み、急性期一般入院料1を届け出ている病院にとっては厳しい内容となった。

7対1病棟の「必要度」見直しが課題
 「必要度」は、入院基本料等の施設基準の規定で、病棟内の入院患者の一定割合が、該当患者の基準を満たさなければならないとし、基準値を設けている。特定集中治療室管理料やハイケアユニット入院医療管理料、地域包括ケア病棟入院料など特定入院料でも用いられているが、今回、公益裁定となったのは、一般病棟用の「必要度」であり、特に、看護配置が7対1の急性期一般入院料1の「必要度」の基準等が焦点となった。
 現行で、「必要度」にはA項目(モニタリング及び処置等)、B項目(患者の状況等)、C項目(手術等の医学的状況)がある。
 A項目は、シリンジポンプ、輸血や血液製剤の管理などモニタリングの項目と、創傷処置や呼吸ケア、専門的な治療・処置など処置等がある。救急搬送後の入院の評価もA項目に含まれている。なお、「心電図モニターの管理」の項目は、2022年度改定で削除された、診療側は、「必要度」の基準を満たす上で、影響が大きかったと主張している。
 B項目は、患者の状態等と介助の実施の組み合わせで評価している。患者の状態等には、「移乗」「食事摂取」「衣服の着脱」など介助の必要の有無や、「診療・療養上の指示が通じる」ことの判断などがある。看護・介護の手間を評価した基準であると言える。C項目では、開頭、開胸、開腹、骨の手術やその他手術、全身麻酔・脊椎麻酔の手術など外科的治療や救命等の内科的治療などが評価されている。

看護・介護を評価するB項目廃止
 そして、これらの項目に点数を設定して、基準①(A得点が2点以上かつB得点が3点以上)、基準②(A得点が3点以上)、基準③(C得点が1点以上)のいずれかを満たすという該当患者の基準がある。急性期一般入院料1(許可病床200床以上)の場合、必要度Ⅰで31%、必要度Ⅱで28%という基準値が設けられている。
 これらの項目について、今回、大幅な見直しが行われることになった。厚生労働省が示したシミュレーションでは、多くの見直しを実施することを前提に、限られた項目で選択肢を設ける試算となっていた。
 見直し項目の中で、最も影響が大きいのは、B項目の廃止である。これに伴い基準①がなくなる。該当患者割合への影響は▲7.7%と計算された。次に影響が大きいのは、A項目の現行で5日間の「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態の評価日数」を1日とすることで、▲4.5%の影響があるとされた。「2日」とした場合は、▲3.3%の影響があるとされた。その次に影響が大きいのは、A項目の「注射薬剤3種類以上の管理」で、「入院期間中に初めて該当した日から7日目までのみを評価対象」とし、「対象薬剤から『アミノ酸・糖・電解質・ビタミン』等の静脈栄養に関する薬剤を除外する」は▲1.2%と計算された。
 B項目の廃止については、「必要度」の詳細な検討を行っていた入院・外来医療等の調査・評価分科会の議論でも、「B項目は介護業務を評価している性質があり、急性期の医療ニーズに着目した評価体系とする観点からは、7対1病棟の必要度基準においてB項目は適さないのではないか。一方で、B項目を必要度基準に用いない場合においても、ADLの改善状況等の把握のため、測定自体は継続すべきではないか」との指摘が出ていた。
 ただ、超高齢社会の進展を背景に、急性期病棟においても、ADLが低下し、認知症があるなど看護・介護の手間がかかる高齢者の入院が増えており、別に評価を考えるということになった。また、B項目を廃止した場合、A得点2点の患者が評価されなくなってしまうが、A得点2点の患者に対しても、専門的な治療や処置が行われているため、何らかの評価ができる仕組みにすべきとの意見が出ていた。

基準を2つ設けA得点を評価
 これらを踏まえ、急性期一般入院料1の「必要度」の基準を2つ設けることになった。まず、従来の3つの基準から基準①がなくなり、基準②(A得点が3点以上)または基準③(C得点が1点以上)が残る(これを割合①とする)、もう一つは、A得点2点以上の患者を評価するため、基準②または基準③または「A得点2点以上」を設定する(これを割合②とする)。そして、割合①かつ割合②を満たす場合を新たな必要度の基準とする。
 シミュレーションについては、見直し項目のうち、「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態の評価日数」を1日または2日、「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)」の点数を2点または3点とすることの組み合わせで見直し案①~④とし、割合①の基準値を15%または18%、割合②の基準値を24%または28%とした32パターンの試算結果を、1月10日の中医協総会に厚労省が示した。また、現行で18日以内の平均在院日数を14 ~ 17日とした場合の試算も行われた。

影響大きい案では約2割の影響
 シミュレーションの結果をみると、急性期一般入院料1を算定する病院で必要度の基準を満たせなくなる割合で、最も割合が大きかったのは、見直し案①(「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態の評価日数」を1日、「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)を2点のまま」で割合①の基準値を18%、割合②の基準値を28%とした場合)で、▲19.7%と約2割の影響があることがわかった。逆に、最も割合が小さかったのは、見直し案④(「救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態の評価日数」を2日、「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)を3点」で割合①の基準値を15%、割合②の基準値を24%とした場合)で、▲1.5%の影響があった。
 この結果に対し、日本医師会常任理事の長島公之委員は、「最も影響の小さい見直し案④よりも、影響の少ない案を検討すべき」、「平均在院日数も現行の18日以内を変更すべきではない」と主張。一方、健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「見直し案①を採用し、該当患者の割合①は『20%』。割合②は『29%』とすべき」と主張した。さらに、「平均在院日数は『14日以内』にすべき」と述べた。

診療側は影響の少ない対応求める
 中医協総会は、1月31日に再び「必要度」の見直しをめぐる議論を行った。しかし、支払側と診療側の意見の隔たりは狭まらなかった。
 診療側からは、「今回の『必要度』の見直し案は、適切な医療提供に必要となる医療機関の裁量の幅を狭めるものであり、コロナ特例が終了した昨年10月以降、急性期病院の経営は厳しくなっている」といった意見が出された。
 長島委員は、「『必要度』の基準による機械的な判定では、捉え切れない重症者もいる。医療機関の裁量が狭められると、そのような患者が把握できなくなる。見直しの判断の根拠となっているデータは全国の医療機関の平均的なデータであり、(平均から外れる)特定の地域の医療機関に深刻な影響を与える可能性がある。『必要度』を見直すにあたっては、極めて慎重な検討が求められる」ということを強調した。
 日本医療法人協会副会長の太田圭洋委員は、「前回改定後に、急性期一般入院料1の病床が減らなかったのはなぜかと言えば、現場で7対1病棟が必要とされ、現場が努力したからだ。それでも、前回改定で『心電図モニターの管理』の項目が削除された影響は大きい。コロナ特例で施設基準が緩和されているが、それがなくなり、施設基準を満たすことが難しくなった病院が出てきている。入院基本料は病院経営を支える根幹であるにもかかわらず、人的コストの分析が行われなかった。厳格化が病院経営に与える影響を強く危惧する」と述べた。
 また、「機能分化が必要という認識は我々も共有している」と述べ、今回新設される地域包括医療病棟入院料が担う機能の必要性を支持する一方で、「高齢者救急の地域の応需体制が壊れる可能性がないかをきちんと見極める必要がある」との考えを示した。その上で、急性期一般入院料1から他の入院料への移行を促すことを検討すべきとした。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「平均在院日数を4日も短縮することで現場にどんな影響を与えるかということが、支払側委員に理解されていないと感じる。機能分化の推進は、地域で病院が存続し、患者に適切な医療を提供するということが前提の話。そんな提案が出てくることが信じられない」と訴えた。

機能分化を推進する観点で公益裁定
 両側の委員からさまざまな意見が出たが、具体的な見直し案について、合意を得ることはできなかった。このため、公益裁定に委ねることになった。
 公益裁定では、シミュレーション結果について、「該当患者割合の基準を満たす医療機関割合の変化が、急性期一般入院料1のうち、『必要度Ⅰ』を用いる医療機関において大きく、中でも案①・案③による見直しの場合に、特に大きいことが示された。したがって、該当患者割合の基準を現行の水準とした場合、相当数の医療機関が基準を満たさなくなると想定される」と解釈された。
 一方、「患者の状態に応じた適切な入院料が選択され、医療資源が適切に配分されるよう、地域医療に配慮しつつも、急性期一般入院料1から他の入院料への転換を含めた適切な機能分化が促される取組みを進めることは重要である」と指摘。今回改定で、「該当患者割合の基準を一定程度高く設定することが、将来の医療ニーズおよび人口構成の変化を踏まえ、入院患者の状態に応じて、適切に医療資源を投入する体制の構築を進めるに当たり重要になる」との考えを示した。
 これらを踏まえ、平均在院日数の基準は16日以内とした上で、見直し案④を採用し、シミュレーションで示された実態を踏まえつつ、『必要度』について、該当患者割合の基準を2つに分けた上で、機能分化の推進という観点から、専門的な急性期治療を要する患者の集約化のため、該当基準割合(割合①)は18%よりも高く20%とする。その上で、地域の実情に鑑み、該当基準割合(割合②)については、27%とするとの公益裁定がなされた。
 また、急性期一般入院料2~5の「必要度」は、項目を見直した上で、該当患者割合の基準で、「必要度Ⅰ」と「Ⅱ」の間に一定の差を設けた。

 

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