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ホーム全日病ニュース(2024年)第1049回/2024年2月15日号世界のDX の潮流と日本の医療DX の現状を講義

世界のDX の潮流と日本の医療DX の現状を講義

世界のDX の潮流と日本の医療DX の現状を講義

【医療DX人材育成プログラム⑨】
事業計画作成のポイントも解説
高橋泰 国際医療福祉大学教授、全日病広報委員会特別委員

 院内のDX化が適切に推進できる院内人材を養成する目的で、全日本病院協会は、広報委員会を担当委員会とし、日本医療教育財団、介護・医療見える化・効率化協会と共同共催で、「2023年度医療DX人材育成プログラム(全10回)」を開講した。今回は、第9回目の講習会の内容を紹介する。
 第9回講習会が、昨年11月2日(木)13時〜16時にZoomで開催され、136病院、314人が参加した。
 ドラえもんは、4次元ポケットから未来のワクワク道具である「どこでもドア」や「ほんやくコンニャク」を引き出し、のび太くんにワクワク世界を提供している。また、我々の日常生活を含めた医療の外の世界のDXもドラえもんに負けず、図1に示すように、「クラウド(ワクワク情報・サービスの宝庫)」に、スマホやコンピュータを接続して、「どこでもドア」の世界を半分程度実現してくれる「Zoomサービス」や、「ほんやくコンニャク」と同等の働きをする「Googleレンズ」などのサービスを、「クラウド・ネイティブ」という世界標準になりつつある技術を用いて実現している。
 前半の講義では、世界標準となったWEB技術を中心とするDXの世界とオンプレミスの世界から抜け出せない日本の医療情報システムの現状に対して、日本の病院はどのように対処すべきかの講義が行われた。
 クラウド・ネイティブ電子カルテは、第一に、すでに他のクラウド上で提供されている無料/低価格の高機能サービスや将来提供される人工知能を駆使したサービスなどとの相性がよい、第二に、クラウド・ネイティブな電子カルテは、最新の技術を駆使して守ってくれているので、病院のサーバー上の電子カルテより、格段に安全である、第三に、クラウド・ネイティブな環境では、多病院での電子カルテの共同所有が可能になり、電子カルテの大幅ディスカウントが期待できるという大きな利点を理解することが大切である。
 一方、現時点ではクラウド・ネイティブな電子カルテは診療所と小規模病院向けの物しか現在リリースされていないことを理解すると同時に、近未来的には必ず普及することを見越し、病院情報戦略を構築することが、病院にとって一番大切なことである。
 医療DX令和ビジョン2023に象徴される日本の医療DXの将来像の最大の問題は、「クラウド・ネイティブ」という技術を徹底的に利用するという姿勢が欠落していることであるが、医療DX令和ビジョン2023は、世界のクラウド化の流れに反するものではなく、DXを進める病院にとってもプラスに働く改革である。医療DX令和ビジョン2023に沿った形で病院のクラウド・ネイティブ化を進めることは十分可能であり、今後ビジョンに沿った電子カルテの導入に補助金が付く可能性が高いので、むしろ補助金が活用できるような形で病院情報システムのクラウド化を進めることが大切であるということである。
 後半は小林土巳宏氏( 株式会社MEMORI)による「医療DX」の再確認についての講義が行われた。最初に「Transformation」の「Trans」は交差するという意味から「X」が略語として使われ、ビジョンや手段の変革を意味し、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、BX(ビジネス・トランスフォーメーション)、CX(カスタマー・エクスペリエンス)、EX(エンプロイー・エクスペリエンス)、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、SX(サステナビリティ/サステナブル・トランスフォーメーション)などの組み合わせがあることが説明された。
 次に、業務課題の発見力(可視化)の説明がなされた。まず業務調査が必要であり、業務の棚卸と業務調査が必要になる。「業務課題」を発見して経営層や関連部門と合意形成をはかり、共通認識化するために、業務の平準化作業が不可欠となる。平準化をすすめる上で、導入される代表的な作業が「業務フロー(ワークフロー)整理である。まず現状のワークフロー(As Is)を書き、次にあるべき業務フロー(ToBe)を完成させる。次にTo Beのワークフローをもとに、電子カルテ導入後の検査の流れ(データフロー)や入院患者の退院の流れ(連携フロー)などを作成する。これらをもとに、端末の配置や端末間のデータフローをデザインする。
 最後の施策立案(事業化・予算化)のセッションでは、事業(DX)計画に盛り込む内容の説明が行われた。

  1. 事業(DX)のビジョン・理念・目的には、「なぜこの事業(DX)をやるのか」、「この事業(DX)を通して何を提供したいのか」、「DXによってどんな風に変えたいのか」などを記載する。
  2. 事業(DX)の概要には、「誰に」「どのように提供」するのか、事業(DX)計画はどうなっているのかなどを記載する。
  3. 事業(DX)の強みや特徴では、「自院だから提供できる競合他社との違い」や、自院の事業(DX)の独自性、アピールポイントを記載し、専門的な言葉は使わず、誰にでも分かりやすい表現で作成する。
  4. 事業(DX)に関連する市場環境や競合の状況・市場の規模やニーズ、競合他社の状況など、事業を取り巻く環境を記載する。
  5. 事業(DX)の将来目標・自院の事業(DX)を将来的にどのように発展させていきたいのか、社会の中でどのような役割を果たしたいのかを記載する。
  6. 収支計画・創業初年と事業(DX)が軌道にのった後に分けて、収支計画を作成するが、患者数の見通しの場合、市場の分析や競合他施設の実績を参考にしつつ、少し厳しめに設定しておくのが望ましい。


図1:ワクワク感に満ちた医療の外の世界のDX

 

全日病ニュース2024年2月15日号 HTML版

 

 

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  • [3] 病院のあり方に関する報告書

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2021_arikata.pdf

    加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で明らかとなった医療・介護分野に. おける諸課題は、国や各自治体、提供体制側それぞれにあり方の再考を迫るものである。

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