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ホーム全日病ニュース(2024年)第1049回/2024年2月15日号「地域包括医療病棟入院料」を新設し、高齢者救急に対応

「地域包括医療病棟入院料」を新設し、高齢者救急に対応

「地域包括医療病棟入院料」を新設し、高齢者救急に対応

【中医協総会】可能な限り施設での生活を継続できる対応も推進

 中医協総会(小塩隆士会長)は1月26日、2024年度診療報酬改定の個別改定項目(いわゆる短冊)の議論を開始。短冊により、2024年度改定の内容が明らかにされている。2024年度改定の焦点の一つとなった高齢者救急をめぐる課題への対応について、「地域包括医療病棟入院料」の新設をはじめとした具体策をみていく。
 1月31日の中医協総会で、公益裁定により決定された一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の基準等の見直し(1面参照)が与える医療現場への影響によっても、「地域包括医療病棟入院料」の新設など今回の高齢者救急への対応がどのように活用されるかも決まってくると考えられる。

地域包括医療病棟入院料の施設基準
 超高齢社会への進展に伴い急増する高齢者救急への対応では、地域で救急患者等を受け入れる病棟の評価として、「地域包括医療病棟入院料」が新設されることになった。高齢の救急患者等に対して、一定の体制を整えた上でリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供することの評価となっている。
 厚生労働省は、6年に1度の医療と介護の同時改定であることから、昨年春に「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」を開催した。その中で、「生活機能が低下した高齢者(高齢者施設の入所者を含む)に一般的である誤嚥性肺炎をはじめとした疾患について、地域包括ケア病棟や介護保険施設等での受入を推進する」ことが論点として明記された。
 その後の中医協総会の議論では、診療側の委員が、「救急搬送時点で患者の重症度は判断できない」、「看護配置13対1の病棟で救急医療に対応することは困難」と強く主張。地域包括ケア病棟などでの受入れを推進することには慎重な姿勢が示された。「地域包括医療病棟入院料」の新設は、このような中医協総会での議論を受けて、厚労省が提示した回答の一つと言える。
 施設基準は以下のとおりだ。
 病院の一般病棟を単位とし、看護配置は10対1。人員配置では、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士の配置基準、専任の常勤の管理栄養士の配置基準を設ける。入院早期からのリハビリテーションのために必要な設備や入院中の患者に対するADL等の維持、向上および栄養管理等に資する必要な体制の整備が求められている。
 「重症度、医療・看護必要度」や平均在院日数、在宅復帰率の基準のほか、「救急車による搬送または新設する救急患者連携搬送料を他の医療機関で算定した患者の搬送」が、入院患者全体で、一定割合を占める必要がある。
 特定機能病院は算定できない。急性期充実体制加算や専門病院入院基本料を算定する病院も算定できない。
 加算では、初期加算や看護補助体制加算、夜間看護補助体制加算、夜間看護体制加算、看護補助体制充実加算、リハビリテーション・栄養・口腔連携加算などを「地域包括医療病棟入院料」で算定できるようにする。
 「看護補助体制充実加算」の直接患者に対し療養生活上の世話を行う看護補助者については、「介護福祉士の資格を有する者または看護補助者として3年以上の勤務経験を有し適切な研修を修了した看護補助者」とされた。看護補助を担う者として、「介護福祉士」が初めて登場したことが注目される。
 また、「看護補助体制充実加算」については、地域包括ケア病棟入院料、療養病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料において、主として直接患者に対し療養生活上の世話を提供する看護補助者を一定数配置している場合の評価を新設するとともに、「看護補助体制充実加算」について、身体的拘束の実施に着目した評価に見直される。

介護施設の連携病院の役割に期待
 高齢者救急においては、介護施設などからの救急搬送が少なくないが、施設内で対応できない医療の範囲を超えた場合には、協力医療機関が対応することが望ましい。現状で、介護保険施設は入所者の急変時に対応するための連携病院を定めることになっている。
 この連携病院について、介護保険施設から求められた場合は、協力病院になることが望ましいことを、在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院、在宅療養支援診療所および地域包括ケア病棟のそれぞれの施設基準に明記することになった。
 これに関連し、協力医療機関となっている医療機関が介護保険施設等の入所者を受け入れた場合の評価として、「協力対象施設入所者入院加算」を新設する。介護保険施設等の入所者の病状が急変した際に、介護保険施設等の協力医療機関であって、定期的にカンファレンスを行うなど、平時からの連携体制を構築している医療機関の医師が診察を行い、入院の必要性を判断した上で、入所者が入院した場合に算定できる。
 対象となる医療機関は、在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所、在宅療養後方支援病院、地域包括ケア病棟入院料を届け出ている病棟・病室。緊急時に介護保険施設等に入所している患者が入院できる病床を常に確保していることを求めている。
 一方、医療と介護の両方を必要とする状態の患者が可能な限り施設での生活を継続できるようにするために、介護保険施設と障害者支援施設において、医療保険で給付できる医療サービスの範囲を見直し、介護保険施設と障害者支援施設で対応が困難な医療行為について、医療保険による算定を可能とする。
 具体的には、◇介護老人保健施設の末期の悪性腫瘍の患者に対する放射線治療の医学管理と緩和ケアの医学管理に関する費用を医療保険で算定可能とする◇介護老人保健施設の患者に対し、介護老人保健施設の医師と介護老人保健施設の併設医療機関に所属する医師以外の医師が、高度な薬学的管理を必要とする薬剤を処方した場合、処方箋の発行費用を医療保険で算定可能とする◇介護老人保健施設と介護医療院の重症心不全患者に対する植込型補助人工心臓(非拍動流型)の指導管理の費用を医療保険で算定可能とする─などがある。
 介護保険施設等に入所する高齢者が、可能な限り施設内における生活を継続できるよう支援する観点では、介護保険施設等の入所者の病状の急変時に、介護保険施設等の協力医療機関であって、平時からの連携体制を構築している医療機関の医師が往診を行った場合の新たな評価として、「介護保険施設等連携往診加算」の新設もある。
 介護老人保健施設、介護医療院及び特別養護老人ホームの協力医療機関であって、介護保険施設などから24時間連絡を受ける担当者をあらかじめ指定し、その連絡先を介護保険施設等に提供していることを求めている。
 往診についてはそのほか、24時間の在宅医療提供体制を構築するための新たな評価など、在宅医療関連の報酬改定として、様々な見直しがある。

救急患者連携搬送料で転院を支援
 高齢者救急への対応は多様だが、医師の働き方改革の施行を背景に、地域により第三次救急医療機関に患者が集中する可能性がある。
 これを踏まえ、第三次救急医療機関等に救急搬送された患者について、連携する他の医療機関でも対応が可能と判断する場合に、連携する他の医療機関に看護師等が同乗の上で転院搬送する場合の評価を新設するとともに、急性期一般入院料の在宅復帰率に関する施設基準を見直す。
 新設する「救急患者連携搬送料」の対象は、救急外来を受診した患者または入院3日目までの患者。「救急搬送診療料」は併算定できない。特定機能病院や急性期一般入院料1を届け出ている医療機関で算定されることが想定される。他の医療機関に搬送する場合に同乗する対象職種については、医師、看護師または救急救命士となっている。
 「救急患者連携搬送料」の新設に伴い、急性期一般入院料の在宅復帰率の計算において、「救急患者連携搬送料を算定し他の保険医療機関に転院した患者」を分母から除外する。
 また、地域包括ケア病棟の適切な在宅患者等の緊急入院の受入れを推進する観点から、「在宅患者支援病床初期支援加算」を見直す。救急搬送患者の緊急入院を受け入れることによる負担などを考慮した評価体系になる。
 具体的には、他の医療機関で「救急患者連携搬送料」を算定し、入院初日が地域包括ケア病棟となる介護老人保健施設からの患者を受け入れる場合の「在宅患者支援病床初期支援加算」の評価を区別して、高く評価する。
 救急医療管理加算については、一定の適正化が行われることになった。「経過観察が必要であるため入院させる場合」など算定の対象とならない場合を明確化するとともに、救急医療管理加算2において、「その他の重症な状態」の割合が一定以上の場合の評価を見直す。また、患者の状態の分類も見直される。

 

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