全日病ニュース
医学部臨時定員の削減と医師不足対策が課題
医学部臨時定員の削減と医師不足対策が課題
【厚労省・医師の偏在対策等検討会】今年春までに2026年度医学部定員を決定
厚生労働省の「医師養成課程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」は1月29日に初会合を開催した。人口減少や全体の医師数増を踏まえ、医師の増加ペースについて検討するとともに、原因に応じた医師不足対策を議論する。座長には、遠藤久夫・学習院大学教授が選出された。同日は今後の課題とスケジュールを確認した。
医師不足を解決するため、政府は医師数を抑制から増員に転換する方針を定め、2008年度から地域枠を中心に、臨時的に医学部定員を増員することになった。医学部入学定員は2007年度の7,625人から2024年度には9,403人となり、このうち、地域枠等を要件とした臨時定員はゼロ人から955人になった。臨時定員以外を含め、医学部入学定員に地域枠等が占める割合は2割弱となっている。なお、自治医科大学は地域枠等から除いている。
この結果、医師数は2010年から2020年までの10年間で約4万5,000人増えることになった。
一方、医師需給推計によると、2029年頃に医師の需給は均衡し、その後は人口減少に伴い将来的には医師需要が減少局面に入るため、医師過剰になる見通しである。
「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」が2023年11月9日にまとめた方針では、臨時定員数を見直すべきとの指摘がある中で、「2025年度の医学部定員については、医学部総定員数(9,420人)を上限として、2024年度の枠組を暫定的に維持することとする」とされた。
医学部入学定員は、受験者に周知するため、実施2年前に決定することが求められ、2026年度の医学部定員は今年春までに方針を決定する必要があり、同検討会の短期的な課題となる。
一方、長期的な課題として、医学部定員増員のペースの見直しや全国の臨時定員の設置方針の検討がある。また、2025年度の全国の臨時定員数は決まったものの、各都道府県・大学への割り振りを考える必要がある。
もう一つの課題である医師不足対策については、「医師不足感の原因への対応」として、「医師の地域偏在・診療科偏在」、「提供体制の非効率・医師の散在」、「働き方のミスマッチ」をテーマとした。「個別の地域や医療機関における医師不足感は今後も生じ得るが、医師不足感の原因は様々であり、単に医師数の増加により改善するものではないことから、原因に応じた対策を推進する必要がある」としている。
医師養成課程においては、医学部段階、臨床研修段階、専門医研修段階、その後の各段階でそれぞれ医師不足対策を講じているが、医学部段階では、地域枠の設定が効果のある対策と位置付けられている。
全日病副会長の神野正博構成員は、能登半島地震の現況を踏まえ、「石川県は医師多数地域だが、医師少数区域がある能登半島で発災があった。県全体で見る視点と県内の偏在が大きいという視点の両方を持ってほしい」と強調した。
その上で、「以前の医師需給分科会の議論でもそうだったが、医学部定員の臨時増員数の削減と強力な医師偏在対策は、『対』であって、どちらかだけということでないことを強く思う。今後の日本の人口減少を考えれば、臨時増員数の削減はやむを得ないが、医師偏在対策をやらずに削減すれば、医師偏在はむしろ拡大してしまう。また、医師の働き方改革が始まる前に、方針を決めてしまうことには懸念がある。4月以降に、実際にどのような影響があるかをしっかりと把握して評価する必要がある」と述べた。
全日病ニュース2024年2月15日号 HTML版
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