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土居慶大教授 基礎的財政収支赤字の削減へ、医療介護等支出の抑制額を試算

【財政制度分科会】

土居慶大教授
基礎的財政収支赤字の削減へ、医療介護等支出の抑制額を試算

 3月18日の財政制度等審議会財政制度分科会で、委員である土居丈朗慶大教授は「財政健全化のためには、社会保障における過剰な支出の削減や効率化の追求が必須であり、削減のための具体的方策を議論することが何よりも肝要である」と論じた。
 さらに、「2020年度の基礎的財政収支の黒字化目標を達成するための具体策を、政府は何も示していない」と批判。
 「非社会保障支出の対G D P比は最低水準となっており、その削減余地は限られている」ことから、中長期の国と地方の財政規律を確立するためには、一貫して増え続けている社会保障支出を受益と負担の均衡によって抑制しなければならないと訴えた。
 土居委員は、政府の社会保障制度改革推進本部に付設された「医療・介護情報の活用による改革推進専門調査会」の委員と傘下の医療・介護情報分析・検討WGの一員として医療費目標設定の議論を担っている。その一方、厚労省の地域医療構想策定GL検討会にも参加、他方で社保審医療保険部会の委員でもある。
 今回の主張は、総合研究開発機構(NIRA)の研究会でまとめた、6人の研究者による共同提言「社会保障改革しか道はない」にもとづくもの。
 共同提言は、「2020年度までに社会保障費は自然増で公費ベース10数兆円ほど増えると見込まれる」ため、社会保障支出における過剰な支出の削減や効率化への追求に焦点を当てた改革が不可避であるが、それを「弱者切り捨てとか医療や介護の質の低下」にならない方法で実施すべきとしている。
 そのための個別具体的な改革策を提示、「社会保障の質を落とさずに公費ベースで3.4兆円~5.5兆円程度の削減が可能であるとした(別掲)。

社会保障の削減施策と削減額の例示(共同提言第2弾から)

 以下により、合計3.4兆円~5.5兆円程度の削減(公費ベース)が可能
1. 医療提供体制の改革 0.8兆円~2.7兆円
 1人当たり医療費(年齢補正後)が全国平均を上回る道府県での病床数削減や入院受療率の低下等により、全国平均並みあるいは全国最低県並みに抑制できるとして試算。公費割合を掛けて算出。
2. ジェネリック医薬品の普及0.3兆円~0.5兆円
 後発医薬品の数量シェアが現状の50%程度から80%あるいは100%になるとして算出。公費割合として38.6%(2012年度実績)を仮定。
3. 調剤医療費の抑制・薬価の適正化 0.8兆円
 調剤薬局技術料・過剰投薬の抑制により、7兆円程度(13年度実績)が1割削減されると仮定。また、薬価を毎年改定することで診療報酬全体の1.2%削減できるとして算出。公費割合として38.6%を仮定。
4. 介護給付の効率化・自己負担の引上等1.1兆円
 介護保険費用のうち要介護2~5の自己負担(1割)は0.6兆円に相当。自己負担を2倍(負担月額上限を撤廃しつつ負担を2割へ引き上げ)にすることより0.6兆円のうち公費割合52%(2012年度実績)分の0.3兆円が削減できる。さらに、要支援1・2と要介護1の介護サービスを全額自己負担とした場合の削減額は1.5兆円。これに公費割合52%を掛けた0.8兆円が削減可。また、これらは給付効率化でも同金額で代替可能。
5. 公的年金等控除の圧縮 0.4兆円(略)