全日病ニュース

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センターへの事故報告の期限「遅滞なく」で合意

センターへの事故報告の期限「遅滞なく」で合意

【医療事故調査制度の施行に係る検討会】
原因究明の結果と再発防止策は基本的に報告に書き込む方向

 医療事故調査制度の詳細を検討している「医療事故調査制度の施行に係る検討会」は12月11日、事務局(厚生労働省医政局総務課医療安全推進室)がこれまでの議論から整理した省令・通知に書き込む事項の考え方(別掲)について議論した。
 議論では、まず、診療関連死が発生した場合に報告対象か否かの相談先となる医療事故調査・支援センターと支援団体の位置づけが問われた。
 一義的にどちらに相談すべきかという問題で、一部の構成員から「支援団体への相談が先行されるべき」との意見が出たためだが、構成員は「センターも支援団体もともに相談先に位置づけるのが妥当」とする意見、したがって、問題は、役割分担等両者の間の整合性を図るということにあるという認識が大勢を占めた格好だ。
 次に、事故発生直後の遺族への説明事項を省令とするか、改正が容易な通知とすべきかで意見が分かれた。
 ただし、「改正医療法は遺族に対する説明事項を省令で定めなければならない」としており、この方向で決着が図られるものとみられる。
 センターへの報告の期限に関しては、改正医療法の「遅滞なく」という考えを通知も採用するが、拡大解釈されないよう表記にあたって留意するという方向で合意した。
 院内調査の内容については、特段の意見が出なかった。
 院内調査の報告書に原因究明の結果と再発防止策を書き込むかについては、「原因の明記は結果的に責任追及につながる」との声も出たが、院内調査の過程で原因の究明が行なわれ、かつ、再発防止についても検討がなされるのは自然の流れで、問題は、それをどう報告に書き込むかにある。
 構成員の意見は「任意記載事項とすべき」と「必要記載事項とした上で、具体的には医療機関の判断にゆだねる」とに分かれたが、基本的に記載事項とした上で、再発防止策を確定するに至らない場合などにはその旨を記すなど、記載の内容は医療機関の判断に委ねる方向の意見が多数を占めた。
 この議論は、センター調査の報告でも繰り返されたが、「原因究明も再発防止も触れない報告ではセンターの意味がない」という指摘もあり、院内調査報告と同じ事項でセンター調査報告を作成するという意見が多数を占めた。
 意見の隔たりが大きな論点は、この日大方とりあげられた。
 一部に異論の向きもあるものの、大きなポイントに関しては、この日の議論で大筋合意の方向がみえてきたといえる。
 次回1月14日は「医療事故の範囲(定義)」がテーマに取り上げられる。

これまでの議論を踏まえた論点と省令・通知事項に関する事務局の考え

1. 医療機関からセンターへの事故報告について
(1)医療機関内での判断プロセス(センターや支援団体への相談)
 管理者が医療事故調査・支援センターへ報告を判断する上での支援として、センターは医療機関からの相談に応じられる体制を設ける。
*医療事故の判断の際の相談について以下の意見があった。「センターに相談する」「支援団体に相談する(センターに相談しない)」「センターに相談する前に支援団体に相談する」
(2)医療機関から遺族への説明事項
 遺族へは以下の事項を説明する。
制度の概要、解剖(Ai)が必要な場合の同意取得にかかわる事項、医療事故の内容に関する情報(報告時点で可能な範囲とする)、院内事故調査の実施計画
*「遺族への説明事項はセンターへの報告事項と同様とするか」検討願いたい
(3)医療機関からセンターへの報告事項
 センターには以下の事項を報告する。
医療機関名/所在地/連絡先、日時/場所/診療科、医療機関の管理者/(連絡担当者)、患者情報(性別/年齢/病名等)、医療事故の内容に関する情報(疾患名/死因/臨床経過等=報告時点で可能な範囲とする)、調査計画と今後の予定、その他管理者が必要と判断した情報
(4)医療機関からセンターへの報告期限
 具体的な期限は設けず、「遅滞なく」報告とする。
*期間については「1ヶ月以内」「24時間以内」との意見があった。
2. 医療機関が行う医療事故調査について
(1)医療機関が行なう医療事故調査の方法等
○管理者が必要な調査項目を選択決定する。
○調査は当該医療従事者を除外しない。
○再発防止策は必須事項とせず管理者の判断に委ねる。
○調査項目は「臨床経過」と「原因分析」の中から必要な範囲内で選択する。(臨床経過の詳細項目は省略=編集部)
*「原因分析は医療機関の行なう医療事故調査の項目としてよいか」検討願いたい
(2)医療機関が行なった医療事故調査の遺族への説明事項等
○遺族への説明は口頭(説明内容をカルテに記載)又は書面(報告書又は説明用の資料)の適切な方法を管理者が判断する。
○遺族への説明事項は「臨床経過=客観的事実の経過」とし、現場医療者など関係者について匿名化する。
*「遺族への説明事項は院内調査の項目やセンターへの報告事項と同様とするか」検討願いたい。
*非懲罰性の担保について意見があった。
(3)医療事故調査結果のセンターへの報告事項
○以下の事項を記載した報告書をセンターに提出する。医療機関名・所在地・連絡先、日時・場所・診療科、医療機関の管理者、患者情報(性別・年齢・病名等)、臨床経過(客観的事実の経過)
○当該医療従事者等の関係者について匿名化する
*「医療機関が行なう医療事故調査項目に原因分析を加えた場合、それを、センターへの報告事項とするか」「再発防止策をセンターへの報告事項とするか」検討願いたい。
(4)医療事故調査の結果の取扱い
○報告書の目的は医療事故の再発防止であり、個人の責任追及のためのものではないことを踏まえる。
○医療機関が報告する医療事故調査の結果に院内調査の内部資料は含まない。
*非懲罰性の担保について意見があった。
3.センターが行なう整理・分析について(省略)
4.センターが行なう調査
(1)センターへの調査依頼と調査の内容
○当該医療機関の管理者・遺族は医療事故として報告した事案についてセンターに調査の依頼ができる。
○院内調査終了後に調査する場合は院内調査の検証が中心となる。院内調査終了前に調査する場合は院内調査の進捗状況等必要な事実確認を行なうこととなる。それぞれ、センターから調査への協力を求められた場合、病院等の管理者は協力すること。
*「センター調査は医療機関が行なう調査と同じ項目としてよいか」検討願いたい。
(2)センター調査の医療機関・遺族への報告とセンター調査の結果の取扱い
 センターは以下の事項を記載した調査結果報告書を医療機関と遺族に交付する。
医療機関名・所在地・連絡先、日時・場所・診療科。医療機関の管理者、患者情報(性別・年齢・病名等)、臨床経過(客観的事実の経過)、原因分析
*「センター調査の項目に原因分析を加えた場合、管理者・遺族への報告事項とするか」検討願いたい。
*再発防止策については、①記載する、②記載するが表現に注意する、③記載しないという意見があった。
*非懲罰性の担保について意見があった。