全日病ニュース

全日病ニュース

2015年度調剤医療費の伸び率が急伸 高額薬剤の影響に懸念示す

2015年度調剤医療費の伸び率が急伸 高額薬剤の影響に懸念示す

【厚労省・医療保険部会】
後期高齢者医療費は鈍化の兆し

 社会保障審議会・医療保険部会は5月26日、①最近の医療費の動向②高齢者医療の現状③子どもの医療制度のあり方─について厚労省から報告を受け、意見交換した。医療費の動向では、調剤医療費が高い伸びを示していることが報告され、C型肝炎治療薬など高額薬剤の影響を懸念する意見があった。
 「最近の医療費の動向」について厚労省は、「2015年4 月〜11月にかけて医療費全体は3.1%の伸び率となり、2012年度〜14年度の伸び率2%程度と比べると高めに推移しているが、中でも、調剤医療費は前年比8.2%という高い伸び率を示している」と報告した。
 調剤医療費は特に2015年6月に前年比11.0%、11月には12.1%と急伸しているが、薬剤料の多くを占める内服薬について薬効分類別の伸びを見ると、抗ウイルス剤、その他の腫瘍用薬、糖尿病用剤の伸びが大きくなっている。
 抗ウイルス剤としては、C型肝炎の画期的治療薬であるソバルディ錠(薬価6万1,799円/錠)が2015年5月に、さらに、合剤のハーボニー錠(8万171円/錠)が同8月末から発売されている。
 その結果、抗ウイルス剤の薬剤料総額は、2015年の4月〜9月に1,133億円(前年同期は467億円)、10月〜11月は2か月間で806億円、11月だけでも432億円にまで急増した。
 厚労省は「月間の医療費は概算で3.4〜3.5兆円。そのうち内服薬の調剤医療費は350億円前後で、影響は1%に過ぎない」と冷静にみているが、保険者の委員からは「抗ウイルス剤の新薬がもたらす影響を中期的に推計してほしい」と注文がついたほか、「市場拡大再算定に期待する」といった声も上がった。
 2016年度の薬価制度改革では「特例の市場拡大再算定」ルールが導入されたが、前出のソバルディ錠とハーボニー配合錠は、そのうちの「年間販売額が1,500億円超で、かつ予想販売額の1.3倍以上となるもの(最大で50%の価格引き下げ)」の対象とされた。
 高齢者医療について、厚労省は、対前年度伸び率が2010年度5.9%、2011年度4.5%、2012年度3.0%、2013年度3.6%、2014年度2.3%と推移していることから「伸び率は鈍化の兆しを示している」とし、さらに、「1人当たり医療費でみると、他制度と比べて伸び率はさらに鈍化している」との認識を示した。
 2014年度の入院医療費の伸び率は2013年度に続いて2.2%と低く、外来医療費も2013年度の4.9%から2014年度には1.8%へと伸びが鈍化した。
 保険者側の委員は、高齢者医療費を支える現役世代の負担が増えていることから、窓口負担の引き上げなどを求めたが、厚労省は、保健事業を充実させることで負担の適正化を図る方針を示した。後期高齢者の特性に応じてフレイル(虚弱)対策を軸とした保健事業に改める考えだ。
 子どもの医療制度の在り方については、「子どもの医療制度の在り方等に関する検討会」が3月にまとめた報告書の内容が報告された。これは、子どもの医療費を減免している自治体に対する国保の公費減額調整措置をどうするかという問題。
  検討会報告は、自治体間で拡大競争が進む減免制度に対する賛否両論を併記する一方で、自治体まかせの減免制度に対する国の統一基準を含めて、そのあり方を見直すべきとの提言が盛り込まれた。
 この日は、主に保険者の委員から、子どもの医療費を減免する地方単独事業を実施している自治体に対する国庫負担の減額措置を支持する意見が相次いだが、部会では、「一億総活躍社会」に向けて政府が少子化対策を推進する中で地方自治体の取り組みをどう支援していくかという観点を踏まえて、そのあり方を検討していく方針を確認した。