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重症度係数で議論 効率性評価との関係めぐり疑問も

重症度係数で議論 効率性評価との関係めぐり疑問も

【中医協・DPC 評価分科会】
次期改正に向け、今後の検討課題を確認

 中医協診療報酬調査専門組織のDPC 評価分科会(分科会長・小山信彌東邦大学医学部特任教授)は2016年度診療報酬改定後初の会合を、5月25日に開いた。
 厚労省は4月13日の中医協総会に示した2016年度改定におけるDPC 見直しへの対応結果を同分科会にあらためて報告するとともに、補足事項として、Ⅱ群病院選定に際して用いた指標別の基準値を明らかにした(別表を参照)。
 今改定でⅢ群からⅡ群に54病院が移ったが、準備病院からも1病院が選定されている。一方、Ⅱ群からⅢ群に移行したのは14病院という結果となった。
 Ⅱ群病院選定の実績要件のうち、「高度な医療技術」については、これまで外保連試案にもとづく外科系技術の実績を求めてきたが、今改定から、内科系技術として特定内科診療(25疾患)にかかわる3項目の実績を要件に加えて、計6項目のうち5項目以上を満たせばよいとしたことがⅡ群病院を99施設から140施設に増やす大きな要因となった。要件緩和の一方で、外保連試案にかかわる基準値はそれぞれ前改定よりも引き上げられた。
 厚労省はまた、機能評価係数Ⅱの8項目に関する医療機関別の係数内訳と、同係数のうちの地域医療係数に変換される前の相対評価を表す地域医療指数(体制評価指数)の医療機関別内訳をそれぞれ分科会に報告した。
 8項目のうちの重症度係数をみると、群別の最高値は、Ⅰ群が0.01744、Ⅱ群が0.02027、Ⅲ群が0.01528となった。その一方で、Ⅲ群病院のうち122施設が「0.00000」とゼロの評価になったが、Ⅰ群の8施設とⅡ群の14施設も「0.00000」という結果となった。
 重症度係数は「診断群分類点数表で表現しきれない、患者の重症度の乖離率を評価」するもので、当該医療機関における「包括範囲出来高点数/診断群分類点数表に基づく包括点数(ただし救急入院の患者については救急医療指数で評価される2日目までの点数は除外)」と、乖離率から指数を算定して係数化される。いわば、同じ診断群分類でも資源投入量が多くなる患者を重症者と捉え、係数Ⅱの評価に織り込むという考え方だ。
 重症度係数が提起されてきた背景には、「施設間の診療の傾向を調整するだけでなく、診断群分類点数表では表現しきれない重症度の違いを調整する機能等がある」暫定調整係数の廃止に向けて、「アウトライアーといわれる重症度が高い患者を受け入れざるを得ない病院に対する配慮が必要」とする見方があった。したがって、CCP マトリックスの導入とともに、1つの対応策として今改定で試行的に導入された。
 ただし、この考え方に対しては、分科会でも「標準化や効率化が進んだ病院は評価が低く出ることにならないか」、「不必要な検査等を行えば重症度指数が高くならないか」といった疑問の声が上がるなど、分科会の意見は必ずしもまとまっていない。
 この日の提出資料では「出来高実績点数が高い方が係数は高くなるが、重症度係数によって補てんされるのは包括点数と出来高点数の差の一部分に過ぎない」と説明。医療課の担当官も「出来高実績点数を高くするという意図的な診療行為をしても、その分が補てんされるという趣旨の係数ではない」と述べている。
 しかし、委員からは「自院は重症度係数で高い数値を得たが、実は、これは効率化が進んでいないことではないかと考え、検証作業を進めている。この係数が高い方がいいのか、低い方がいいのかよく分らない」と戸惑いの声があがるほど、分かりにくい係数となっている。
 脳血管研究所附属美原記念病院長の美原盤委員(全日病副会長)も、「包括点数と出来高の差を評価するというのは、効率化を目指す方向に逆行していないか」と疑問を唱えた。
 これに対して、担当官は「出来高実績点数には無駄な医療資源投入が含まれざるを得ないというご指摘はそのとおりだが、どこまでが無駄で、どこからが無駄でないのかは今後の議論で精緻化していきたい」と回答した。
 その結果、重症度係数の評価は、引き続く「次期改定に向けた検討課題」の1つに取り上げられた。
 「検討課題」には、ほかに、Ⅱ群の選定要件(Ⅱ群病院の地域における機能の評価等)、暫定調整係数が果してきた機能の今後のあり方、各係数の重みづけ、CCP マトリックス、病院情報公表評価の具体的方法などがあげられた。

 

全日病ニュース2016年6月15日号 HTML版

 

 

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