全日病ニュース

全日病ニュース

療養病床の新たな受け皿の議論始まる

療養病床の新たな受け皿の議論始まる

【厚労省・療養病床の在り方等に関する特別部会】
初会合で介護療養病床の再延長めぐり応酬

●特別部会の初会合に出席する西澤会長(中央)

 厚生労働省の社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」は6月1日に初会合を開き、慢性期の医療・介護ニーズに対応するため新たな施設類型の具体的議論を開始した。  全日病からは西澤寬俊会長が参加。
 部会長には遠藤久夫・学習院大教授が選出された。今後、月1回程度の会合を重ね、年内のとりまとめを目指す。
 2017年度末に設置期限を迎える介護療養病床と25対1医療療養病床の再延長をめぐるやりとりが行われたが、病院団体を代表する委員が現行制度の延長を求めたのに対して、保険者側の委員は否定的な見解を示した。
 療養病床をめぐっては、2006年の法改正で、老健施設等への転換を進めつつ介護療養病床を2011年度末で廃止することが決まったほか、医療法上の療養病床人員配置標準を6対1から4対1に引き上げ、6対1は2011年度末まで認める経過措置が設定された。
 その後、介護療養病床の受皿として転換型の介護療養型老人保健施設が創設されたが、転換が進まなかったことなどから、廃止期限と6対1にかかわる経過措置は2017年度末まで延長され、今日に至っている。
 したがって、診療報酬上の医療療養病床25対1は医療法上の6対1経過措置が廃止された後は法的根拠を失うことになる。
 一方、昨年から策定が始まった地域医療構想において医療機能ごとの必要病床数の推計が示されたが、慢性期の病床については、「療養病床の入院患者のうち医療区分1の7割が在宅医療等に移行」する前提で推計されているため、この移行を受け入れる医療・介護提供体制の構築が課題となっている。
 こうした中、「療養病床のあり方等に関する検討会」は今年1月に、療養病床の受け皿の選択肢として新たな施設類型を提起する報告書をまとめた。
 それは「医療内包型」と「医療外付型」からなり、さらに「医療内包型」を利用者の容体が急変するリスクなどにより、2つのパターンに分けた3タイプからなる。
 これらを具体化するには人員配置や施設基準などの制度設計が必要なため、社保審に特別部会を設置して検討することになったわけだが、医療・介護の分野を横断する検討が必要となるため、その所管は保険局、医政局、老健局の3局にまたがる上、委員も31名に及ぶ大世帯の審議会となった。
 また検討結果は、介護保険部会や医療部会、医療保険部会など関係部会の了承が必要となるため、厚労省はできるだけ早く意見をとりまとめる考えを示している。

●現行制度の延長めぐり応酬

 昨年からの療養病床の議論にあたり、四病協は日本医師会と共同歩調をとり、新たな施設類型について積極的に発言・提案を行ってきた。
 他方で、全日病は会員病院を対象に実施した調査結果を検討会に提出。療養病床を持つ病院の多くが介護療養病床と25対1医療療養病床の廃止に反対していることを訴えた。
 この日の会合でも現行制度の延長が議論となった。
 日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員は、「現行制度の再延長を第一の選択肢にすべき」と主張。これに対して、保険者代表の委員は「特例で延ばすのはおかしい。延長するなら法改正が必要」と発言した。
 全日病会長の西澤寬俊委員は、「この場で議論して決めれば、再延長する法律改正はできる。再延長を含めた議論はすべきと考える」と述べ、厚労省も法律改正によって再延長は技術的に可能との見解を示した。
 新たな施設類型に関しては、各委員が様々な見解を表明した。全国抑制廃止研究会理事長の吉岡充委員は「介護療養病床は人員配置基準を上回るスタッフを配置しても患者が身体拘束を受ける状況にある。新たな施設類型の人員削減には断固として反対」と発言。
 これを受けて西澤委員は、「身体拘束ゼロの運動が進んでいるものの、まだなくならない。この問題への対応を含め、新たな施設類型でどれだけの医療・介護スタッフが必要なのかを議論していくべきだ」と主張した。
 厚労省が特別部会に示した検討課題は、(1)人員配置基準(2)施設基準(3)財源(4)低所得者への配慮などだが、次回6月22日には療養病床の関係者からヒアリングを実施し、その後は、検討課題のうち準備ができたものから議論していく予定だ。

 

全日病ニュース2016年6月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 療養病床のあり方と在宅等の医療提供のあり方について議論|第851回 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150715/news08.html

    2015年7月15日 ... 地域医療構想における2025年の必要病床数推計で「在宅医療等で対応する」とされた
    慢性期患者の受皿を検討することが一義的な目的だが、併せて、2017年度末で廃止が
    予定されている介護療養病床の取り扱いや、同じく医療法の6対1と5 ... 初会合の冒頭、
    二川一男医政局長は「2025年を見据えると、今までの施設類型にとらわれない考え方
    が必要」と述べ、「様々な選択肢を用意していただきたい」と挨拶した。

  • [2] 慢性期の医療について(PDF)

    http://www.ajha.or.jp/guide/pdf/070911.pdf

    急性期病院. 回復期リハ. ビリテーシ. ョン病院. 療養型病院. 亜急性期病床. 【医療療養】
    . 【介護療養】. 亜急性期医療. 慢性期医療. 慢性期医療を提供する病院は、病気の治療
    をし、リハビリテーションに. より自立支援をする場です。高齢者が暮らす生活空間とは ...

  • [3] 介護療養と25対1病床の移行先となる3施設別に機能・特性を整理|第 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160201/news02.html

    2016年2月1日 ... 介護療養と25対1病床の移行先となる3施設別に機能・特性を整理|第863回/2016
    年2月1日号 HTML版。21世紀の医療 ... 先となる「新たな施設類型」について検討を
    重ねてきた「療養病床の在り方等に関する検討会」は、1月15日の会合で ... は“慢性期
    の医療・介護ニーズに対応する今後のサービスの提供体制を整備するため、介護療養
    病床を含む療養病床の ... 厚労省関係の会議に初めて出席させて頂いた。

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。