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かかりつけ医機能の診療報酬の評価を議論

かかりつけ医機能の診療報酬の評価を議論

【中医協総会】
緩やかなゲートキーパー機能に反対意見が相次ぐ

 中医協(田辺国昭会長)は2月22日に総会を開き、かかりつけ医機能をテーマに議論した。厚生労働省が、かかりつけ医の役割を①日常的な医学管理と重症化予防②専門医療機関との連携③在宅療養支援、介護との関係─に整理。診療報酬でどのように評価するかについて議論を求めた。かかりつけ医が緩やかなゲートキーパー(門番)機能を備えることに対しては、診療側の委員から反対意見があった。届出医療機関数が伸びない地域包括診療料(加算)の要件見直しも今後の課題となる。
 厚労省は、かかりつけ医の定義を日本医師会・四病院団体協議会の合同提言(2013年8月)から抜粋して示した。かかりつけ医は、「何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義した。
 また、医療機関を受診する際の国民の意識として、「最初にかかりつけ医など決まった医師を受診し、その医師の判断で、必要に応じて専門医療機関を紹介してもらい受診する」に賛成する者が7割近いという調査結果を紹介した。また、健康保険組合連合会の調査では、日頃から受診する医療機関への期待として、「アクセスのよさ」とあわせて、「全人的かつ継続的な医療」を求めるとの結果が示されている。
 一方、日医が医師を対象に行った調査によると、かかりつけ医機能を果たす上で負担感が大きいのは、「在宅患者に対する24時間対応」「患者に処方されているすべての医薬品の管理」「患者が受診しているすべての医療機関の把握」だった。厚労省は、これらの負担を軽減する取組みとして、島根県や岡山県の取組み事例を紹介。ICTを活用して診療情報を共有することで、かかりつけ医と専門医療機関が連携し、効果的・効率的なサービス提供が行われているとした。
 さらに、厚労省は、登録したかかりつけ医のみを受診する英国のGP(General Practitioner)制度など各国の制度を資料で整理するとともに、社会保障制度改革国民会議の報告書から、「緩やかなゲートキーパー機能を備えたかかりつけ医の普及は必須」との文章を引用して記載。さらに、経済・財政再生計画で「かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入」の検討が中医協に求められていることを示した。
 こうした厚労省の説明に対し、診療側の委員が反発。かかりつけ医機能を限定し、その機能を果たせないかかりつけ医は診療報酬の評価を受けられない方向に議論が進むことを警戒する意見が相次いだ。具体的には、「緩やかなゲートキーパー機能を今後の議論の拠り所にされても困る」「(1人の患者が持つ)病気の数だけかかりつけ医がいる」「患者が受診する医療機関をかかりつけ医がすべて把握するのは無理」などの意見が出た。
 支払側の委員も、「かかりつけ医は患者1人につき1人と整理するのではなく、もう少し広げて考えるべき」と述べた。迫井正深医療課長は緩やかなゲートキーパー機能について、「今のフリーアクセスは大病院の勤務医の疲弊を生じさせており、必要なときにアクセスできるという意味でのフリーアクセスを守るため、一定の交通整理が必要」と説明した。
 全日病副会長の猪口雄二委員は、「超高齢社会のもとで、総合的な診療ができる医師の確保が喫緊の課題」と指摘。「幅広い診療能力を持つ医師をかかりつけ医として評価する方向で議論してほしい」と要望した。他の診療側の委員からは、「地域によっては200床以上の病院の医師であっても、かかりつけ医機能を果たす」との意見が出た。
DPC 対象病院の退出、合併を報告
 厚労省は同日の中医協総会に、DPC制度から退出する病院と合併する病院を報告した。退出は、医療法人社団明芳会新葛飾病院(葛飾区)、合併は宗教法人在日本南プレスビテリアンミッション淀川キリスト教病院(大阪府大阪市)。DPC 準備病院である医療法人豊和会新札幌豊和会病院(札幌市)の合併も報告された。
 新葛飾病院は142床で、退出の理由は急性期から回復期リハビリテーション病院への機能変更のためとしている。淀川キリスト教病院は合併前の630床から581床にベッドを減らし、DPC算定病床は540床とした。同ホスピス・子どもホスピス病院(27床)との合併となっている。
被災地の特例を延長
 また、東日本大震災と熊本地震に伴う被災地特例の半年延長を了承した。両者とも、2017年3月31日までの期限を9月30日まで半年延長する。現に特例措置を受けている医療機関が対象。東日本大震災では岩手県2、宮城県2、福島県2の合計6医療機関、熊本地震では、熊本県のみで17医療機関、5保険薬局が現在利用している。

 

全日病ニュース2017年3月15日号 HTML版

 

 

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