全日病ニュース
病院のあり方に関する報告書2021年版を発表
記者会見した猪口会長(右)と徳田常任理事
病院のあり方に関する報告書2021年版を発表
2040年を見据え「地域包括ヘルスケアシステム」を提言
全日病は、「病院のあり方に関する報告書2021年版」が完成したことを受けて、7月2日に記者発表を行い、徳田禎久常任理事(病院のあり方委員会委員長)が概要を説明した。
全日病は1998年に「中小病院のあり方に関する報告書」をまとめ、今回が9冊目となる。徳田常任理事は、最初の報告書をまとめた当時をふり返り、「医療制度・医療保険制度改革、介護保険導入により医療ビッグバンが始まったと認識した。護送船団方式は限界であり、会員自身が意識改革をしなければならないと考えた」と述べるとともに、報告書をきっかけに「病院のあり方委員会」が設置された経緯を説明した。
「病院のあり方委員会」は、全日病の活動に対する提言を行うとともに、ほぼ隔年で報告書をまとめ、病院の基本的なあり方や標準的医療の奨励、医療の質向上の取組みを取り上げた。医療政策面では、医療基本法の必要性を訴えたほか、地域一般病棟の考え方を示した。地域一般病棟は、現在の地域包括ケア病棟につながっている。
今回の2021年版は、前回の2015-2016年版から5年が経ち、2040年を見据えた社会保障改革が進められていることを踏まえ、全日病として2040年を意識した考え方をまとめる必要があると考えて検討に着手。新型コロナウイルスの感染拡大により医療介護体制の弱点が露呈したことから、その教訓を踏まえ改革案を提案することとした。
理想的な医療介護提供体制目指す
徳田常任理事は、報告書から中心的な提言内容を説明した。今回の報告書では、理想的な医療介護提供体制を実現するために『地域包括ヘルスケアシステム』の考えを打ち出した。現在の行政管轄区分は、医療は都道府県、介護は市町村が担当する形となっているが、「整合性・連携の議論が欠けている」ため、医療が中心となり、都道府県が主導するシステムとして再構築することを提案した。
一定の生活圏で地域特性に合致した医療・介護・高齢者の住まい・生活支援を一体的に検討するシステムとして再構築することとし、医療保険・介護保険の同時利用や報酬改定時期の統一が必要とした。
『地域包括ヘルスケアシステム』では、健康管理・医療・介護のサービスが一体となったシステムを目指す。全高齢者を対象として、医療提供者が行う諸検査に加え、身体機能・精神機能の客観的情報、介護や福祉の従事者からの日常生活に関する情報を集め、介入条件を設定して必要に応じて最適な支援を行う。半年毎に定期的なチェックを行い、一定条件以上の問題が発生した場合に支援会議で対応を決める。
国民皆健診制度の確立を提案
健康・疾病予防については、これまでの報告書よりも踏み込んだ内容を盛り込んだ。徳田常任理事は、「わが国の健診制度はOECDでも評価が低い」と述べ、健診制度の改革を提案。健診センターを中心とする体制では健診後のフォローが十分ではないとし、診療所や中小病院がかかわる体制に改めるべきだとし、「国民皆健診制度」の確立を提案した。
猪口雄二会長は、20年に及ぶ「病院のあり方報告書」をふり返り、「初期の報告書には厚生労働省が取り入れ、現実の政策となったものもある。医療の先を読んだ報告書だった」とこれまでの取り組みを評価。「今回の報告書は、2040年を見据えて病院として考えなければならないことをまとめた。病院経営を考える上で参考にしていただきたい」と述べた。
全日病ニュース2021年7月15日号 HTML版
[1] 病院のあり方に関する報告書(2021年版)
https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2021_arikata.pdf
隔年で発刊され、8度目となる 2015-16 年版では、「高齢社会がピークに達する 2025 年. の医療・介護 ... 全日病は、護送船団の取り組みから決別す. る」 、「病院 ... 80 病棟種別と望ましい診療報酬支払い方式「病院のあり方. に関する ... 段階では今回初めて常任理事の査読を受け手直しをして、これまで以上に全日病の行動指 ... 徳田 禎久(社会医療法人禎心会 理事長 札幌禎心会病院 院長). 副委員長.
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