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ホーム全日病ニュース(2022年)第1015回/2022年8月15日号第8次医療計画の策定に向け5事業をテーマに議論

第8次医療計画の策定に向け5事業をテーマに議論

第8次医療計画の策定に向け5事業をテーマに議論

【厚労省・医療計画等検討会】第二次救急医療機関の高齢者の救急受入れの推進が課題

 厚生労働省の第8次医療計画等に関する検討会(遠藤久夫座長)は7月27日、第8次医療計画の策定に向け、5事業(救急、災害時、へき地、周産期、小児)をテーマに議論を行った。救急・災害時の医療は、救急・災害医療提供体制等に関するワーキンググループ(WG)で行っており、そこでの議論が報告される形となった。へき地、周産期、小児については、厚労省が論点を整理するとともに、厚生労働科学研究の研究班や有識者による勉強会の議論の報告があった。
 救急については、救急・災害医療提供体制等WGで議論を行っている。WGでは、特に増加が見込まれる高齢者への対応として、二次救急医療機関での受入れの推進や三次救急医療機関の位置づけ、働き方改革の施行を踏まえた救急医療機関の機能分化・拠点化の推進などが論点となっている。
 全日病副会長の織田正道委員は、「二次救急医療機関の多くは民間病院が担っている。しかし、三次救急医療機関と異なり財政支援はなく、ほとんど自助努力でやっている。働き方改革に対応することを考慮すると、今後むしろ後退してしまう恐れがある。超高齢社会における二次救急医療機関の重要性を強く打ち出していくことが求められる」と述べた。
 また、単身の高齢者や要介護者の増加により、退院先が決まらずに下り搬送や退院が滞ることで、いわゆる「出口問題」が発生することについても発言。「地域密着型の二次救急医療機関が『出口問題』を解決する役割を果たすことができる。一方、三次救急医療機関にはさらなる集約化が必要となる。そのような議論を今後深めていただきたい」と求めた。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員も、二次救急医療機関への財政支援が必要であることを訴えるとともに、三次救急医療機関については、救命救急センターが当初の目標より多く整備されたことを踏まえ、今後整理し、集約化することが課題であることを強調した。
 九州大学名誉教授の尾形裕也委員は、二次救急医療機関の年間救急車受入台数や夜間・時間外・休日の救急受入件数などのばらつきが大きいことを指摘した。「データをみると、頑張っている病院とそうでない病院があるようだ。コロナ対応でも二次救急医療機関のコロナ患者の受入れは4割程度にとどまっている。救命救急センターで行っている質の評価を、他の三次救急医療機関や二次救急医療機関にも広げるべきではないか」と提案した。その上で、財政措置を実施する際は、「質の評価を診療報酬や補助金にリンクさせることが考えられる」と述べた。

AMATと他チームとの連携が課題
 災害時の医療についても、救急・災害医療提供体制等に関するWGで議論されている。特に、災害時に活動する保険医療チームとして、DMAT(災害派遣医療チーム)の法令上の位置づけやDPAT(災害派遣精神医療チーム)の新興感染症対応の位置づけのほか、全日病を中心とするAMAT(全日本病院医療支援班)をはじめとした他の医療チームとの連携などが課題となっている。加納委員は、AMATに職員を派遣する病院への財政支援を訴えた。
 また、◇災害拠点病院の整備の推進◇災害拠点病院等における豪雨災害の被害を軽減する体制の構築◇災害時における医療コンテナの活用が普及するための方策が論点となっている。

厚労科研研究班などの議論を報告
 へき地、周産期、小児については、厚労省が論点を整理するとともに、厚労科研の研究班や関係団体を代表する有識者による勉強会の議論の結果が報告された。
 へき地医療の論点としては、医師の研修方法やキャリア形成などへき地で勤務する医師の確保や遠隔診療を活用したへき地医療の体制の確保があげられた。
 織田委員は、「オンライン診療はへき地医療で大きな役割を果たすと思う。今後、オンライン服薬指導も始まり、一気通貫のオンライン診療のシステム作りが課題だと思うが、どのようなシステムを考えているのか」と質問。厚労科研の研究班代表者の小谷和彦氏(自治医科大学)は、「薬局もない離島もあり、まさに重要な観点だ。各医療機関、薬局単位ではなく、都道府県単位でオンライン診療とオンライン服薬指導をセットで提供できるシステムを協議し、導入を図っていくことがポイントになると思う」と述べた。
 周産期医療の論点としては、周産期医療圏の見直しや人材育成、分娩医療機関までのアクセス確保、NICUの集約化、重点化、医師の働き方改革への対応などがあげられた。
 日本産婦人科医会の中井章人氏による周産期医療の勉強会の報告では、特に、「多くの周産期医療施設は非常勤医師によって支えられていることから、医師の働き方改革の影響を大きく受ける可能性がある」ことに危機感が示された。一般病院や有床診療所で非常勤医師の引揚げが起きないよう、宿日直許可が確実に得られるような柔軟な対応などが求められた。
 小児医療の論点としては、小児医療圏と小児救急医療圏の一本化や新興感染症まん延時の小児医療体制、小児医療機能の集約化・重点化、医療的ケア児への支援などがあげられた。
 小児医療の勉強会の報告では、日本小児科学会の平山雅浩氏が、各論点に対する考え方を提示した。ひとつの医療機関で、「小児中核病院」や「小児地域医療センター」の医療機能を果たすことができない場合は、複数の医療機関で連携して医療機能を担うことなどを提案した。
 また、小児科の診療範囲が多岐にわたるにもかかわらず、医師偏在指標において、一般小児医療と高度専門医療の区別がなく、適切な医師確保が難しくなることの問題が指摘された。さらに、小児科医は診療以外の活動が多く、一般小児医療機能を担う小児科診療所が、地域における医療と保健、福祉、教育との連携の役割を担うことの重要性などが強調された。

 

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