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ホーム全日病ニュース(2022年)第1015回/2022年8月15日号後藤厚労大臣が診療報酬による看護の処遇改善を諮問

後藤厚労大臣が診療報酬による看護の処遇改善を諮問

後藤厚労大臣が診療報酬による看護の処遇改善を諮問

【中医協総会】「看護職員処遇改善評価料」を新設し、100種類を超える点数を設定

 後藤茂之厚生労働大臣は7月27日、中医協に対し、看護の処遇改善に関する2022年度診療報酬改定を諮問した。看護の処遇改善は10月実施が決まっており、中医協は8月中に答申を行う予定だ。8月3日の中医協総会(小塩隆士会長)では、入院料に上乗せして算定できる「看護職員処遇改善評価料」の新設を了承した。
 看護の処遇改善は、2022年度改定の改定率決定に際しての後藤厚労大臣と鈴木俊一財務大臣の大臣折衝において、プラス0.43%の改定率のうち、プラス0.20%分を活用して実施することが合意された。具体的には、「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員」を対象に、10月以降、収入を3%程度(月額1万2千円相当)の引上げを行うための処遇改善の仕組みを創設することになった。
 「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関」の具体的な要件は、救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関と三次救急を担う医療機関となっている。
 対象医療機関の看護職員の賃上げに結び付けるため、そのための財源を診療報酬により過不足なく対象医療機関に配分する仕組みを構築する必要がある。厚労省のシミュレーションにより、看護職員数と入院料算定回数には高い相関があることがわかった。入院料に細分化した点数を設定すると、過不足を一定の範囲内に抑えながら、処遇改善を実施できる見通しとなっている。
 点数の名称は「看護職員処遇改善評価料」となった。厚労大臣が定める施設基準に適合した届出を行った医療機関は、患者が入院基本料、特定入院料、短期滞在手術等基本料を算定している場合に、「看護職員処遇改善評価料」の各区分を算定できる。
 各区分については、シミュレーションにより、1~ 100点まで100種類の点数を設定しても、必要額に過不足が生じる病院が出ることがわかった。医療機関全体を対象に入院料のみに点数を設定するモデルで、100点までだと全医療機関の97.7%をカバーできる。120点までにすると99.0%、145点までにすると99.5%をカバーできる。
 ただ、直近データをみると(2022年5~6月)、145点を超える点数を設定しないと必要額に不足が生じてしまう医療機関が8施設あった。そのような、いわゆる「外れ値」の医療機関への対応を考える必要があった。
 8月3日の中医協総会では、100点を超える高い点数の設定も行うべきであるが、1点よりも広い刻みで点数を設定していくことで概ね了解を得た。
 外来にも点数を設定することについては、7月20日の入院・外来医療等の調査・評価分科会の議論においても、中医協総会の診療側と支払側の両者の意見でも否定的な考えを述べる意見が多く、行わない方向となった。理由としては、患者の一時的な変動が外来のほうが大きいと想定されることや、高い点数の場合に外来のほうが患者の負担感が大きいこと、看護職員と患者との接点が外来より入院のほうが多いことなどがあげられた。

改善する賃金以外の項目引下げ禁止
 「看護職員処遇改善評価料」の施設基準をみると、対象医療機関は前述の通りだが、三次救急を担う医療機関は、「救急医療対策事業実施要項」に定める「救命救急センター」、「高度救命救急センター」、「小児救命救急センター」であると明確化している。
 救急搬送件数の実績は、賃金の改善を実施する期間を含む年度の前々年度の1年間とする。ただし、実績が基準を満たさなくなった場合でも、賃金改善実施年度の前年度のうち、連続する数か月間において、救急搬送件数が200件以上である場合は、基準を満たしているとみなす取扱いも示されている。
 賃金改善の対象職種は、看護職員等であり、保健師、助産師、看護師、准看護師(非常勤を含む)としている。
 さらに、看護補助者、理学療法士、作業療法士、その他の医療従事者を対象とすることもできる。中医協総会では、病棟薬剤師も対象に加えるべきとの意見が複数の委員から出たが、その「他の医療従事者」にも病棟薬剤師は含まれていない。
 賃金改善を行う場合は、基本給、手当、賞与等のうち対象とする賃金項目を特定する必要があり、その賃金項目以外の項目の水準を低下させてはならない。また、安定的な賃金改善を図る観点から、賃金改善の合計額の3分の2以上は、基本給または毎月支払われる手当の引上げにより実施しなければならない。
 医療機関が算定する看護職員処遇改善評価料は、厚労省が示す数式により算出した数により、点数の区分が決まる。その数式に代入する看護職員等の数は、直近3か月の各月1日時点における看護職員数の平均を用いる。延べ入院患者数も、直近3か月の1月あたりの延べ入院患者数の平均を用いる。看護職員等の数と延べ入院患者数のいずれの変化も、1割以内であれば、点数の区分の変更を行う必要はない。

 

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