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ホーム全日病ニュース(2022年)第1017回/2022年9月15日号病院への減収補償含め感染症危機への対応めぐり議論

病院への減収補償含め感染症危機への対応めぐり議論

病院への減収補償含め感染症危機への対応めぐり議論

【厚労省・医療部会】減収補償の原資に保険料が入ることには難色示される

 社会保障審議会の医療部会(永井良三部会長)は9月5日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が9月2日に決定した「新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策」(以下、具体策)をめぐり議論を行った。政府の決定事項であるため、医療部会として、基本的な考え方は受け入れ、今後の課題を議論した。ただ、流行初期医療確保措置の費用として、保険料も活用することに対しては、全日病副会長の神野正博委員を含め、保険者側の委員が難色を示した。
 「具体策」によると、感染症危機への備えとして、都道府県と医療機関等はあらかじめ、新興感染症等のまん延時の具体的な役割に関して協定を締結する。その際に、公立・公的医療機関等や特定機能病院・地域医療支援病院には、新興感染症等のまん延時に担うべき医療の提供を義務付ける。また、初動対応等を含む特別な協定を締結した医療機関に対しては、感染症流行初期において、流行前と同水準の医療の確保を可能とする措置(流行初期医療確保措置)を講じる。
 なお、保険医療機関は、国・地方公共団体が講じる感染症医療への措置に協力しなければならず、医療団体に対しては、都道府県などが協力を要請することができる法的措置も講じる。
 流行初期医療確保措置は、新興感染症等への診療報酬の上乗せや補助金による支援が充実するまでの暫定的な支援であり、減収補償により直近の同月の収入を確保する。その費用は、公費とともに保険料としても負担する。
 これらの決定事項に対し、委員からは、今秋の臨時国会に提出予定の医療法改正案を含む感染症法等改正法案成立後の課題に関して、多くの意見が出された。
 どのような特徴を持つ新興感染症等がまん延するかわからないことについては、「新型コロナと全く異なる感染症である場合にも対応できる協定にしないといけない」(釜萢敏委員・日本医師会常任理事)、「呼吸器系だけでなく消化器系の医療が多く求められる感染症であるかもしれない。協定を結んでも必要な設備等がなければ対応できない。平時に準備しておくべき設備等も協定で明らかにしておく必要がある」(楠岡英雄委員・国立病院機構理事長)などの指摘があった。
 流行初期医療確保措置における医療機関への減収補償のために、公費とともに保険料の負担も求めることについては、保険者の委員が反発した。
 神野委員も「(地域医療支援病院、新型コロナの重点医療機関、保険者の立場として)病気の早期発見や早期治療など健康経営に関連することは、保険者のインセンティブとなるもので、保険料を活用することは当然であるが、感染症のパンデミック時に保険者にそこまで責任を負わせるべきなのか。こうした有事の際は、公費で対応すべきであると強く思う」と述べた。
 また、神野委員は、感染症データ収集と情報基盤の整備に関して、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)による発生届等の入力を強力に推進する方向性が示されていることに対し、「医療機関は(入力に)大変苦労している。大きな決意で進めてほしい」と、システム改善の必要性を強調した。
 日本病院会会長の相澤孝夫委員は、「感染症の実態を把握することと、重症の感染者を迅速に医療機関に搬送するために必要な情報は質が違う」と指摘し、目的に応じて情報収集・分析の方法を整理することを要望した。

三師調査の届出をオンラインで
 マイナンバー制度の活用では、2024年度に向け、段階的に医師をはじめとする医療関係職種(22種類)の資格関連の手続きを、マイナポータルを通じて行える対応を図っている。
 2022年度から、従来は紙による届出のみ認められていた医師・歯科医師・薬剤師の三師届のオンライン対応が可能になった。医療機関に勤務する医師の届出は、医療機関がまとめて直接国にオンライン届出を行う。一方、医療機関に勤務していない医師などの三師届については、2022年度は紙による届出のみで、2024年度からオンライン届出を可能にする予定になっている。
 神野委員は、「医師偏在の是正を図るためのデータとして、地域・診療科別の医師の状況を把握できる三師調査の結果を、すぐに活用できるようにする必要がある。今回の対応は三師調査の結果の迅速な公表につながるのか」と質問した。
 厚生労働省は、今回の対応は三師調査の結果を早期に公表することを目的とするものではなく、紙による届出も残るため、必ずしも早期公表に結び付くものではないが、「努力する」との姿勢を示した。
 あわせて神野委員は、医療関係職種の資格確認において、マイナンバーカードを活用するのであれば、「オンリーワンの手段にするべき」と主張した。
 また、2024年度からマイナンバー制度を活用した看護職の人材活用システムが開始される。看護職キャリアデータベースに看護師の情報を保存し、本人同意を得た看護職キャリア情報を、都道府県ナースセンターを通じて、看護師の離職時・就業時の情報提供に活用する。
 新型コロナワクチン接種会場への看護師の労働者派遣については、オミクロン株対応ワクチンの接種において、初回接種を完了したすべての者(約1億人)を対象者とすることを想定し、接種体制の準備を進める方針となっていることから、医療部会として延長を了承した。具体的には、今年9月30日が期限となっていた、へき地以外の新型コロナワクチン接種会場への看護師・准看護師の労働者派遣について、今年度末までを想定し、期間を延長する。
 厚労省の労働政策審議会・職業安定分科会・労働力需給制度部会が決定することになっているため、永井部会長が報告する。

 

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