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ホーム全日病ニュース(2020年)第974回/2020年11月1日号今後の地域医療構想の進め方の議論開始

今後の地域医療構想の進め方の議論開始

今後の地域医療構想の進め方の議論開始

【厚労省・地域医療構想WG】感染症という「有事」への対応考える

 厚生労働省の地域医療構想に関するワーキンググループ(尾形裕也座長)は10月21日、新型コロナを踏まえ、地域医療構想を今後どう進めるかの議論を開始した。新型コロナは収束しておらず、将来の新興・再興感染症に備える必要もある。一方、高齢化・人口減少など将来の医療需要を見据え、病床機能の分化・連携を目指す地域医療構想も推進しなければならず、難しいかじ取りが求められている。
 委員の交代では、全日病の猪口雄二会長が日本医師会副会長の肩書で、中川俊男・日医会長の後任として、委員に加わった。織田正道副会長は引続き、全日病代表として参加している。
 厚労省は、「平時」の入院医療提供体制を想定した地域医療構想に関し、①新興・再興感染症拡大時の受入確保体制をどう考えるか②公立・公的医療機関等に対する「具体的対応方針の再検証」などへの影響③今後の人口構造の変化を踏まえ、どのような工程で議論を進めていくか─を論点とした。
 なお、公立・公的医療機関等に対する「具体的対応方針の再検証」は、同ワーキンググループがすべての病院の診療実績を分析し、診療実績の乏しい公立・公的病院に対し、再編統合の方針決定を求めたもの。当初は今年秋までに結論を示すこととされたが、新型コロナの影響で、先延ばしされた。
 新型コロナの対応では、準備した感染症病床だけでは足りず、病院は一般病床を転換し、病床を確保した。病床確保の観点だけでも、感染症対応が地域医療構想の想定の見直しにつながる可能性のある問題となっている。
 厚労省の論点に対し、猪口委員は、「新型コロナの感染が本格的に拡大した4月から半年経った。その間、何とか頑張って医療崩壊を起こさずにおさめてきた。今は一定の落ち着きをみせているが、収束はしておらず、病床確保を続けなくてはいけない。また、予防計画や医療計画を見直し、新興・再興感染症への備えを考える必要がある。地域医療構想の議論はこれらと併存させ、うまく整理しないと、よい方向にならない気がする」と述べた。
 全国自治体病院協議会会長の小熊豊委員は、「これまで『効率性』の観点で、病床をぎちぎちに制限することを目指した議論を行ってきた。しかし、新興・再興感染症に対応するには、一定程度病床に余裕がなければならない。どの程度の範囲で余裕を持たせるべきか。その議論が落ち着くまで、地域医療構想が想定してきた議論を再開させることは難しい」と、地域医療構想の再考を主張した。
 これに対して、健康保険組合連合会の幸野庄司委員は、「地域医療構想の議論は粛々と進めないと、高齢化・人口減が深刻化し、事態はより悪化する。足踏みすることなく、一歩踏み出すべき。『具体的対応方針の再検証』の期限を再設定が必要」と、議論の再開を求めた。また、新興・再興感染症に対しては、地域医療計画で対応するのではなく、感染症法の予防計画を見直すことで、感染拡大時の受入体制を整備できるようにすべきとした。
 一方、奈良県立医科大学教授の今村知明教授は、「今、(公立・公的病院の)再編統合の議論を急ぐと、病床に余裕を持たせた大病院を作る方向に、議論が向かいがちになる」と指摘した。

地域の単位をどう整理するか
 織田委員は、「平時」の体制確保である地域医療構想と「有事」の新興・再興感染症への対応を、地域でどのように構築していくかについて、厚労省に質問するとともに、意見を述べた。
 まず、新型コロナが都道府県単位で病床を確保しているのに対し、地域医療構想が構想区域(二次医療圏)であることから、新興・再興感染症に備えた地域の単位の考え方を質問。厚労省は、「新型コロナは性質・規模がわからず、都道府県単位となった。地域単位をどうするかは重要な課題」と回答した。
 織田委員は、構想区域だと医療資源などの地域差が大きく、連携した対応など工夫が必要とし、「有事」に迅速に対応できる「平時」の備えが大切であることを強調した。
 また、新型コロナは高齢者などで重症化リスクが高まることから、年齢によりリスクが異なることへの対応も質問したが、厚労省は「それも含め、厚生科学審議会・感染症部会で議論している」と答えるにとどめた。
 同ワーキングループは都道府県の予防計画など感染症法等の取扱いを議論している厚科審・感染症部会の進捗も勘案し、議論を進めていく。議論をまとめる時期は明確にしていない。

 

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    2020年10月15日 ... 平時の対応で、元々発想が異なり、調. 整が難しいが、調整を ... の3つの
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