全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2023年)第1035回/2023年7月1日号急性期と地ケア病棟の救急の状況など調査

急性期と地ケア病棟の救急の状況など調査

急性期と地ケア病棟の救急の状況など調査

【中医協・入院外来医療等調査評価分科会】2022年度調査の速報値を公表

 厚生労働省は6月8日の中医協・入院・外来医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)に、2022年度調査の速報値を報告した。急性期と地域包括ケア病棟の救急の状況を含め、入院医療全般にわたる調査結果が示されている。外来医療についても調査している。コロナに配慮した施設基準の臨時的な取扱いや診療報酬改定の実施時期の経過措置があり、今回の調査で、2022年度改定の影響を評価することは難しいが、今後の議論における重要な基礎資料になることは間違いない。
 調査項目は、①一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(その1)②特定集中治療室管理料等の集中治療を行う入院料の見直しの影響③地域包括ケア病棟入院料及び回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響④療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響⑤新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築に向けた評価等(その1)⑥医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進に係る評価等⑦外来医療に係る評価等(その1)─となっている。
 これらの項目の調査結果とは別に、各入院料を様々な指標で比べたデータも示された。その中で、入院料毎の認知症の有無があり、どの入院料でも認知症のある患者が多いことに、注目が集まった。認知症ありの患者が、急性期一般入院料1では18%程度、他の入院料では概ね2割を超えている。地域包括ケア病棟入院料・管理料1では3割強、療養病棟入院基本料では4割強を認知症ありの患者が占める。
 要介護の患者が各入院料で多いことを含め、「診療報酬でどう評価するかは今後の議論だが、介護人材が必要であることのデータの裏付けになる」(山本修一委員・地域医療機能推進機構理事長)との意見が出た。全日病常任理事の津留英智委員は、入院料毎の認知症の有無の調査で「わからない」との回答が多いことに着目し、別の入院料毎の手術実施と認知症の状況、あるいは入院料毎の疾患別リハ実施と認知症の状況の結果における、「認知症不明」の割合とのデータが大きく乖離しており、認知症データの根拠について事務局に確認を促した。
 津留委員は、急性期病棟と地域包括ケア病棟の患者像が違うことも示した。具体的には、◇「毎日、医師による診察(処置、判断含む)が必要」との回答の割合が、急性期一般入院料と地域包括ケア病棟入院料・管理料では明らかに異なる◇各入院料毎の入院継続の理由で、「医学的な理由のため、入院医療が必要である」などの回答の割合が、急性期一般入院料と地域包括ケア病棟入院料・管理料では異なることから患者像が違うのでは─などを指摘した。
 一方、「人生の最終段階の意思決定支援」は、「急性期病棟に比べて、地域包括ケア病棟での実施率が高い傾向がある」との結果を踏まえ、「意思決定支援が進んでいれば、地域包括ケア病棟でも(要介護高齢者を)もっと診れるということになるが、逆に、進まないと急性期一般病棟では対応が難しい。意思決定の推進には、高齢者施設の嘱託医やかかりつけ医がもっと関わりを増やす必要性がある」と述べた。
 また、津留委員は、各入院料の疾患別リハビリテーションの調査結果で、リハビリテーションの「ある・なし」はわかるが、単位数がわからないため、単位数の把握も求めた。厚労省は、「当然、単位数の把握は必要なので、集計し、分析する」と回答した。
 一方、入院料毎の1日当たりレセプト請求点数をみると、専門病院7対1入院基本料が6,799点で最も高い。次いで、特定機能病院一般病棟7対1入院基本料(5,535点)、緩和ケア病棟入院料1(4,670点)となっている。但し地域一般入院料2は2,038点、地域一般入院料3は2,478点とここだけは逆転しており、n数の影響も考えられるが確認を求めた。

重症度、医療・看護必要度の状況
 一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の状況をみると、レセプトのコード自動入力により、手入力の必要がない「Ⅱ」を届け出ている施設は、急性期一般入院料1は89.3%、急性期一般入院料2~3は71.9%、急性期一般入院料4~6では34.0%であった。急性期一般入院料1~3では「Ⅱ」の割合が高いことがわかる。「Ⅰ」を届け出ている理由では、「『Ⅱ』より評価票の記入のほうが容易で、『Ⅱ』に変更する必要を感じない」が最も多い。
 該当患者割合は、2021年から2022年にかけて、急性期一般入院料1で約5ポイント、急性期一般入院料4で約3ポイント低下した。「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」の該当患者割合は、2021年から2022年にかけて、急性期一般入院料1で約4ポイント、急性期一般入院料4で約1ポイント低下した。
 2022年度改定では、A項目(モニタリング及び処置等)の中で、「心電図モニターの管理」の項目が削除されたことなどの影響が懸念されていた。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「もっと落ちていると思ったが、この程度で済んでいる。ただ、コロナに配慮した施設基準における臨時的な取扱いがあり、実態を反映していないかもしれない。また、循環器内科での影響は大きいと考えられるので、詳細な分析が必要だ」と慎重な実態把握を求めた。
 2022年度改定で新設した急性期充実体制加算の届出状況をみると、回答した508病院のうち、約18%の92病院が届け出ていた。400床以上の急性期病床を有する病院で、急性期充実体制加算を届け出ていない病院では、「手術等に係る実績」、「入院患者の病状の急変の兆候を捉えて対応する体制の整備」、「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係の賃貸借取引がないこと」が基準を充たさない理由として多かった。
 猪口委員は、急性期充実体制加算が総合入院体制加算と併算定できないことを踏まえ、「総合入院体制加算から急性期充実体制加算に移った事例やその影響を把握してほしい」と述べた。山本委員は、「高度急性期病院であるのに、『同一建物内に特別養護老人ホーム等を設置していないこと』が満たせず、算定できない病院があるかもしれない」と述べ、その場合の配慮を求めた。
 集中治療を行う入院料については、2022年度改定で導入した重症患者対応体制強化加算を届け出ていた治療室が4%であった。届出困難な理由としては、「看護師の確保ができない」、「急性期充実体制加算を届け出ていない」、「『特殊な治療法等』に該当する患者が1割5分以上であることが満たせない」などがあがっている。

地域包括ケア病棟の状況
 地域包括ケア病棟については、救急医療との関係をめぐり議論があった。
 地域包括ケア病棟(以下、地ケア)を有する病院で、救急告示病院である割合は、地域包括ケア病棟入院料1で80.7%、地域包括ケア病棟入院料2で86.2%であった。地ケア病棟を有する病院で、第二次救急医療機関に該当する割合は、地域包括ケア病棟入院料1で75.1%、地域包括ケア病棟入院料2で86.2%であった。
 2022年度改定では、一般病床で地域包括ケア病棟入院料・管理料を算定する場合は、第二次救急医療機関であること、または救急病院等を定める省令に基づき認定された救急病院であることが要件となった。ただし、200床未満の場合は、救急外来を有していること、または24時間の救急医療提供を行っていることで要件を満たせる。
 2023年3月31日まで1年間の経過措置が設定されており、調査時点で見直しは実施されていないことになる。
 地ケア病棟を有する病院について、救急患者を受けている頻度は、週7日が60.1%で最も多く、次に週ゼロ日が13.0%となっている。救急患者を受け入れている時間帯では、夜間・深夜も受け入れていると回答した医療機関が77.0%であった。救急患者の受け入れ件数は、400件以上の医療機関が多いが、ばらつきもあった。
 猪口委員は、2022年度改定の地ケア病棟の見直しで、様々な減算措置が導入されたことに関し、「(今回調査の実施が昨年11 ~ 12月であるため)経過措置のある減算措置の影響は、2023年度調査で出てくる」と指摘。「地ケア病棟での直接受け入れの増加など地ケア病棟の行動変化も2023年度調査でわかるかもしれない」と述べた。
 地ケア病棟を有する病院の救急受け入れ基準をみると、「患者の症状により受け入れ可否を判断している」割合が高かった。
 津留委員は、「高齢者施設等の患者を地ケア病棟で直接受け入れることを推進する話が出ているが、地ケア救急では患者をきちんと選別せざるを得ない状況が見て取れる。高齢者は、症状の発露が若年者よりも鈍いときがあり、急性期一般で経過観察して、実は重症だったということがあるので、適切に判断されている」と説明した。
 また、地域包括ケア病棟入院料1の病院の9割以上が在宅医療を提供していた一方、地域包括ケア病棟入院料2の病院では約6割であった。

回リハ病棟や療養病棟の状況
 回復期リハビリテーション病棟入院料については、2022年度改定で新設した心大血管疾患リハビリテーション料の届出状況が示された。届出を行っている医療機関の割合は16.9%。「届出を行えない理由(届出を行いたいが、行えない場合)」では、「循環器科または心臓血管外科の医師の確保が困難」や「心大血管リハビリテーションの経験を有する医師の確保が困難」が多かった。筑波大学医学医療系教授の田宮菜奈子委員は、「施設基準を厳しくしたので、予想通り。一定の目標は達成されたと言えると思う。今後は、回復期リハビリテーション病棟を含め、各病棟でのリハビリが不足しているという議論にする必要がある」と述べた。
 回復期リハビリテーション病棟入院料の新規入院患者の重症度割合は、2022年度改定で、回復期リハビリテーション病棟入院料1・2では4割以上、回復期リハビリテーション病棟入院料3・4では3割以上に引き上げられている。調査結果では、回復期リハビリテーション病棟1・2の重症度割合は、約40~ 45%。回復期リハビリテーション病棟3・4ではさらに基準を上回る傾向にあった。健康保険組合連合会参与の中野惠委員は、「基準の引上げで、実際に入院料を変更した病院があるかを確認すべき」と求めた。
 療養病棟入院基本料等については、2022年度改定で、「療養病棟における中心静脈栄養を実施している状態にある患者について、患者の摂食機能または嚥下機能の回復に必要な体制を有していない場合においては、療養病棟入院基本料の医療区分3の場合の点数に代えて、医療区分2の場合に相当する点数を算定する」こととされた。
 調査結果では、中心静脈栄養を実施している状態にある者への摂食機能または嚥下機能の回復に必要な体制の整備状況について、体制がない医療機関は32.7%であった。施設基準を満たせない理由では、「内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影を実施する体制を有することが困難なため」が66.2%で最も多い。今後の予定では、「88.7%が満たす予定はない」と回答している。
 猪口委員は、「61.8%の医療機関は体制があるということであり、多くの医療機関が頑張っていると言えるのではないか」と述べた。

医療従事者の負担軽減への対応
 新興感染症等にも対応できる医療提供体制については、多くの急性期一般入院料1では、2022年度改定で新設した感染対策向上加算1~3のいずれかを算定していた。地域包括ケア病棟入院料・管理料でも8割弱がいずれかの加算を届け出ていた。
 医療従事者の負担軽減などについては、病棟薬剤の負担軽減効果をめぐり議論があった。調査結果では、例えば、医師の負担軽減策の実施状況をみると、急性期一般入院料1、地域医療体制確保加算の届出施設の医師の負担軽減策として、「薬剤師による投薬に係る患者への説明」、「薬剤師による医師への情報提供」の割合が多かった。一方、病棟薬剤業務実施加算1の届出は全体の6割。届け出ていない施設では、「薬剤師の配置が困難」と回答が多かった。
 津留委員は、「病棟薬剤師は不足しており、取組はしている・ニーズも高いが十分な配置が出来ていない、根本的な問題がある」と発言した。
 また、医師事務作業補助体制加算を届け出ていた医療機関は68%。届出困難な理由としては、「救急医療にかかる実績」、「全身麻酔手術件数の実績要件」などがあげられた。
 猪口委員は、「医師事務作業補助体制加算は、医療従事者の負担軽減に大きな効果があることがわかっている。届出困難な理由で、救急医療の実績などがあがっているが、緊急入院患者数が基準に満たない病院でも効果はある」と強調し、要件の緩和を求めた。
 外来医療の調査では、オンライン診療の実施状況も調査している。オンライン診療で初診料等の施設基準を届け出ている回答施設31.9%。2022年10月でオンライン診療は1施設あたり平均9.5人に提供されていた。医学管理料では、特定疾患療養管理料が平均5.7人で最多となっている。
 津留委員は、「オンライン診療を受けた患者の感想」の同一設問の調査で、「患者票」と「インターネット調査」とで結果に大きな違いが見られることについての確認を促した。

 

全日病ニュース2023年7月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。