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ホーム全日病ニュース(2024年)第1050回/2024年3月1日号賃上げ対応で入院ベースアップ評価料などを新設

賃上げ対応で入院ベースアップ評価料などを新設

賃上げ対応で入院ベースアップ評価料などを新設

【2024年度診療報酬改定】感染防止対策や賃上げ対応の観点で初再診料等も引上げ

 中医協総会(小塩隆士会長)は2月14日、武見敬三厚生労働大臣の諮問に答申した。本号では、2024年度診療報酬改定のうち、賃上げ対応・基本料等の引上げの概要を紹介していく。
 2024年度改定では、「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革の推進」が重要課題に位置づけられた。重要課題への対応では、看護職員、病院薬剤師その他医療関係職種を対象に、2024年度で2.5%、2025年度で2.0%の賃金のベースアップを達成するため、賃上げ促進税制などの活用とあわせ、新たな診療報酬項目を新設する。
 さらに、この目標達成の対象者以外(40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者)に対する賃上げ対応として、初再診料・入院基本料等を引き上げることになった。

3つの点数で必要額の不足に対応
 看護職員、病院薬剤師その他医療関係職種を対象にした賃上げ対応の診療報酬項目では、3つが新設された。
 ①外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)等②外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)等③入院ベースアップ評価料である。基本的には、①だけでは、必要額が不足する場合に②③がある。
 これらの新設する診療報酬項目の賃上げの対象者として、看護職員やリハビリ職員など31職種その他職員を明示している。専ら事務作業を行う者は含まれない(医師事務作業補助者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業を除く)。医師と歯科医師も対象外である。
 算定する場合は、2024年度と2025年度に、定期昇給を除いた賃上げを行わなければならない。ただし、2024年度に翌年度の賃上げのため、繰り越しを行う場合等はこの限りではない。
 基本給、手当、賞与等のうち対象とする賃金項目を特定した上で、基本給または毎月支払われる手当の引上げにより行うことを原則とする。また、2024年度と2025年度の職員の賃金の改善に係る計画の作成が求められる。
 外来医療または在宅医療を実施している医療機関が算定できる「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」の点数は、初診時6点、再診時2点、訪問診療時は同一建物居住者以外の訪問診療で28点、同一建物居住者の訪問診療で7点となった。初診時は初診料、小児科外来診療料または小児かかりつけ診療料を算定している場合。再診時は再診料、外来診療料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料、小児かかりつけ診療料などを算定している場合となっている。
 「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」は、外来医療または在宅医療を実施し、入院医療を実施していない診療所が算定できる、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」だけでは、必要額が不足する場合の点数だ。具体的には、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」で得られる点数の見込みの10倍が、対象職員の給与総額の1.2%未満の場合に算定できる。賃上げ目標の必要額の半分に満たない場合を対象にするとの考えが背景にある。
 必要額に満たない不足額の程度は医療機関によって異なる。このため、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」は8つある。「初診時・訪問診療時8点・再診時1点」から「初診時・訪問診療時64点・再診時8点」までの組み合わせがある。
 病院または有床診療所が算定する「入院ベースアップ評価料」は、医療機関に生じる必要額の過不足をできるだけ少なくする観点からきめ細かく対応し、看護職員処遇改善評価料と同様に、165通り(1~ 165点)の点数となった。得られる点数の見込みの10倍が、対象職員の給与総額の2.3%未満の場合に算定できる。

通則を見直し入院基本料等を引上げ
 入院基本料等は引上げとなる。「40歳未満の勤務医師、事務職員等の賃上げを実施すること等」のほかに、◇栄養管理体制の基準の明確化◇人生の最終段階における適切な意思決定支援に関する指針を作成することの要件化◇医療機関において組織的に身体的拘束を最小化する体制の整備が新たに求められることによる評価の見直しとなっている。
 一般病棟入院基本料の急性期一般入院料1の場合で1,650点が1,688点になる。療養病棟入院基本料の療養病棟入院料1・入院料25(旧入院料G)の場合で968点から983点になる。回復期リハビリテーション病棟入院料の回復期リハビリテーション病棟入院料4の場合で1,841点から1,859点になる。地域包括ケア病棟入院料の地域包括ケア病棟入院料1の場合で2,809点から2,838点になる。特定機能病院入院基本料の7対1 入院基本料の場合は1,718点から1,822点への大幅増となっている。40歳未満の勤務医師の人数が多いことが理由となっている。
 栄養管理体制の基準の明確化については、入院料通則において、「標準的な栄養スクリーニング」と「退院時を含む定期的な評価等」を新たに求める。標準的な手法は、GLIM基準等を参考にすることが想定されている。
 人生の最終段階における適切な意思決定支援に関する指針を作成することの要件化については、入院料通則において、意思決定支援に関する指針を作成することを要件とする入院料等の対象を拡大する。小児特定集中治療室管理料や総合周産期特定集中治療室管理料などを除き、入院料を算定する医療機関が対象となる。地域包括診療料・加算、認知症地域包括診療料・加算を届け出ている医療機関も追加する。
 身体的拘束を最小化する取組みの強化では、入院料通則において、「組織的に身体的拘束を最小化する体制の整備」を規定する。緊急やむを得ない場合に身体的拘束を行う場合は、理由を記録しなければならない。医療機関に身体的拘束最小化チームの設置を義務化し、◇身体的拘束の実施状況を把握し、管理者を含む職員に定期的に周知徹底する◇最小化のための指針を作成し、定期的に見直す。精神科病院の場合は、別に精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定によるとした。

賃上げ対応を含め初再診料引上げ
 初再診料等は「外来診療における標準的な感染防止対策を日常的に講じることが必要になったこと、職員の賃上げを実施すること等」の観点から、初診料を3点、再診料と外来診療料をそれぞれ2点引き上げる。初診料は288点から291点になる。再診料は73点から75点、外来診療料は74点から76点になる。病院にとって、消費税対応を除き、初診料が引き上げられるのは2006年度改定以来の18年ぶり。

 

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