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ホーム全日病ニュース(2024年)第1050回/2024年3月1日号医療従事者の職業紹介事業で問題点の指摘相次ぐ

医療従事者の職業紹介事業で問題点の指摘相次ぐ

医療従事者の職業紹介事業で問題点の指摘相次ぐ

【社保審・医療部会】求人者向け特別相談窓口の設置やハローワークの強化で対応

 社会保障審議会・医療部会(遠藤久夫部会長)は2月9日、医療・介護・保育分野の職業紹介事業をめぐり議論を行った。医療・介護分野の人材不足が深刻化する中で、民間の職業紹介事業の役割も拡大しているが、高額な紹介手数料を支払っても早期離職してしまう事例も増えている。病院団体の委員からは、公的な職業紹介事業の強化や、悪質な民間紹介事業者への対応を求める意見が相次いだ。
 これまでの対応をみると、2017年改正職業安定法や関係指針で、手数料の情報開示義務や返戻金制度の推奨、就職後2年間の転職勧奨の禁止などを規定した。2020年度には適正な職業紹介事業者の基準を策定。2021年度には適正事業者認定制度もスタートしている。職業紹介事業者の法令違反の疑いに対しては、「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口を都道府県労働局に設置した。
 全日病副会長の神野正博委員は、「紹介手数料も原資は診療報酬であり、高額になるのはいかがなものかと思う。ただ、紹介手数料は市場の需給バランスで決まるので、喉から手が出るほど人材を求めている医療機関は、職業紹介事業者に足元をみられてしまう」と指摘した上で、医療機関が不当に取り扱われないようにするための対応を質問した。
 厚生労働省は、民間紹介事業者の苦情相談窓口や都道府県労働局の特別相談窓口への問い合わせが考えられるほか、厚労省として、指導監督の強化や優良な紹介事業者が選択される仕組みを検討していると説明した。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、都道府県看護協会の無料職業紹介事業であるナースセンターとハローワークの連携強化に期待を示した。
 産業医科大学教授の松田晋哉委員は、紹介される医療・介護従事者の質の評価の担保がなされていないことが大きな問題であると指摘した。また、看護補助者の確保が地域により困難になっている中で、資格を創設することの検討が必要と主張した。

医療措置協定の進捗状況を報告
 改正感染症法に基づく医療措置協定について、2023年12月15日時点の協定締結の状況が報告された。ただし報告されたのは東京都、兵庫県、山形県を含まない44自治体のデータであり、目標値に向けた進捗を評価するには、判断が難しいデータとなっている。
 結果をみると、確保病床数は全国の目標値が5万1,000床であるのに対し協定締結の見込みは3万3,723床で66%。うち流行初期確保病床数は同1万9,000床に対し同1万4,263床で75%となっている。発熱外来は同4万2,000機関に対し同2万5,959機関で62%。うち流行初期協定締結医療機関数は同1,500機関に対し8,443機関で、すでに目標値を大きく上回っている。
 医療措置協定は、地域における役割分担を踏まえ、平時から新興感染症に対応する医療と新興感染症以外の通常医療の提供体制を確保するためのもので、新型コロナで対応した最大規模の体制を目指している。内容としては、①病床確保②発熱外来③自宅療養者等への医療の提供④後方支援⑤医療人材派遣がある。これらについて、都道府県と医療機関が協定を結ぶ。協定締結作業は2023年度中に順次始まり、2024年9月末までに完了させることが目標となっている。
 神野委員は、病床確保の目標値と現況との乖離について、「病院団体としても会員病院にきちんと説明する必要がある。国には、医療機関が協定締結を躊躇してしまう理由があることを理解し、医療機関が安心できる、より明快な説明をしてほしい」と述べた。また、能登半島地震の被災地で医療提供を続けている恵寿総合病院で、入院患者の1割が新型コロナに感染しており、水が十分に確保できない中で苦労している状況が語られた。その上で、平時から有事に備えることの重要性を指摘した。
 加納委員は、2023年度補正予算における協定締結医療機関の施設・設備整備への補助事業を評価する一方で、陰圧室などは経年劣化するため、導入費用だけでなく、メンテナンス費用の補助の検討も要望した。

2023年度補正予算・2024年度予算案
 また、厚労省が医政局の2023年度補正予算と2024年度予算案を報告した。2024年度予算案は1,803億3,500万円で対前年度比1.0%増となっている。一方、2023年度補正予算は7,893億8,900万円と大きく、両者を足すと9,697億2,400万円と1兆円近くに達する。
 2023年度補正予算の金額が大きいのは、新型コロナの緊急包括支援交付金による支援(6,143億円)があるためである。次いで、感染症法改正に伴う対応としての個人防護具の備蓄等事業(158億円)、新興感染症対応力強化事業(148億円)、有床診療所等スプリンクラー等施設整備事業(72億円)などがあり、有事への対応で金額が大きな事業が並んでいる。そのほか、全国医療情報プラットフォーム開発事業(69億円)、看護補助者の処遇改善事業(49億円)、がん・難病の全ゲノム解析等の推進(43億円)などがある。
 2024年度予算案については、例年通り地域医療介護総合確保基金への充当( 公費1,028億6,600万円( 国732億9,900万円、地方295億6,700万円))が大きく、「地域医療構想の達成に向けた事業」、「在宅医療等に関する事業」、「医療従事者の確保に関する事業」、「勤務医の労働時間短縮に向けた事業」に活用する。
 そのほか、医政局の同基金を含めた分野別の施策の予算案をみると、◇地域医療構想(739億円)◇医療計画等に基づく医療提供体制(562億円)◇医師偏在対策等(9億円)◇医師・医療従事者の働き方改革(113億円)◇新型コロナの知見を踏まえた対応(41億円)◇医薬品・医療機器の創出力強化・安定供給(10億円)◇研究開発(59億円)◇医療の国際展開(9億円)◇医療DX(16億円)などがある。
 同日の医療部会では、「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について(通知)」、「『オンライン診療の適切な実施に関する指針』に関するQ&Aの改訂について(通知)」の報告もあった。

 

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