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ホーム全日病ニュース(2024年)第1050回/2024年3月1日号医療従事者の賃上げ実現に四病協として協力姿勢示す

医療従事者の賃上げ実現に四病協として協力姿勢示す

医療従事者の賃上げ実現に四病協として協力姿勢示す

【厚労省・四病協等】賃上げ等の診療報酬改定&マイナ保険証利用促進のオンラインセミナー開催

 厚生労働省は2月16日、四病院団体協議会、全国国民健康保険診療施設協議会との共同開催で、「賃上げ等に関する診療報酬改定&マイナ保険証の利用促進に関するオンラインセミナー」を開催した。全日病の猪口雄二会長が挨拶し、政府が目標とする医療従事者の賃上げの実現に、四病協として協力する姿勢を示した。各病院が実際の賃上げを行うための支援ツールを厚労省が用意していることを紹介し、各病院が賃上げに取り組むことを求めた。
 また、医療DXの推進のため、その基盤となるマイナ保険証を多くの患者が利用する取組みも促した。
 猪口会長は最初に、病院を取り巻く現状について、「病院は民間病院であっても経常利益は1~2%程度であり、コロナ禍で経常収支が好転したようにみえるが、それは一時的な収益増でしかない。病院がわずかな経常利益で経営を行っている中で、物価高騰・賃金上昇という経済状況が生じた」と述べた。その上で、「これに対し、2024年度改定では、賃上げを重要課題とした対応が行われることになり、入院基本料等の引上げやベースアップ評価料の新設につながった」と説明した。
 診療報酬での対応は、「看護職員やリハビリ専門職、事務職員、若手医師など幅広い職種に目配りした対応となっているので、大きく拡充される賃上げ促進税制も活用して、各病院でできるだけの賃上げに取組んでほしい」と要請した。
 医療DXの推進についても発言。「これからの医療において、医療DXは欠かすことのできないインフラとなる。政府は12月に健康保険証の発行を終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行するとの方針を示している。混乱なく移行させるには、それまでにできるだけ多くの患者にマイナ保険証で受診してもらい、メリットを感じてもらうことが必要となる。各病院の窓口においては、(『健康保険証をお持ちですか』ではなく)『マイナンバーカードをお持ちですか』と声をかけていただくなど、マイナ保険証の利用促進に積極的に取り組むことをお願いする」と述べた。

賃上げの計算支援ツールを提供
 続いて、厚労省の担当官が、医療従事者の賃上げの詳細を説明した。2024年度改定では、物価高に負けない「賃上げ」の実現を目指し、◇病院、診療所、歯科診療所、訪問看護ステーションに勤務する看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種の賃上げのための特例的な対応として、0.61 %の改定◇40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置として、0.28%の改定があり、医療従事者の賃上げに対応する。
 医療機関は2024年度と2025年度の2年間の賃上げを計画する必要がある。改定率0.61%の対応では、新設されるベースアップ評価料により、対象職種の給与総額の2.3%相当になるように設定されている。
 配分方法については、◇2024年度にまとめて引上げを行うパターンと◇2年間で段階的に引上げを行うパターンがある。例えば、給与総額が1億円である場合に、2024年度にまとめて引き上げるとすると、230万円×2年間となる。段階的な引上げでは2024年度に165万円とし、2025年度に230万円+65万円とするような場合が考えられる。
 医療機関等に対しては、①賃金引上げ計画の作成②計画に基づく労使交渉等③計画に基づく給与規程の改正④施設基準の届出と期中の区分変更の届出⑤賃上げ状況の報告(2024年度・2025年度)の作業が発生する。
 ベースアップ評価料を算定する医療機関等は、施設基準の届出書とあわせて、賃金引上げの計画書と報告書を地方厚生局等に提出する必要がある。ベースアップ評価料が原則としてベアに充てられていることを地方厚生局等が確認する。
 さらに、計画書と報告書では、ベースアップ評価料による賃金引上げの状況だけでなく、自主財源等も含めた全体的な引上げ状況と、ベースアップ評価料の対象とならない40歳未満の勤務医師等(改定率0.28%分)の職種の状況も聞く予定としている。別途、抽出調査も実施する予定だ。
 また、厚労省は、ベースアップ評価料計算支援ツールについて、厚労省ホームページを通じて提供しており、エクセルにより「対象職員の給与総額の計算」、「ベースアップ評価料の算定見込みの計算」、「医療従事者の賃上げ見込みの計算」ができる。
 厚労省の担当官は、「マイナ保険証利用促進のための取組・支援策」の説明も行った。
 オンライン資格確認の利用件数に占めるマイナ保険証の利用件数の割合は2024年1月時点で4.6%にとどまっている。一方、デジタル庁のアンケート調査によると、マイナンバーカードの携行者は保有者の約5割を占めていた。
 これを踏まえ、厚労省は、マイナンバーカードの携行者が、医療機関・薬局でマイナ保険証を利用すれば、マイナ保険証の利用率が大きく伸びる可能性を示唆。医療機関・薬局の窓口での声掛けの効果が期待できるとした。
 また、2024年度改定でのマイナ保険証利用関係の診療報酬による対応のほか、新たな支援金の説明を行った。対象期間は2024年1~ 11月。マイナ保険証の利用率が2023年10月から5ポイント以上増加した医療機関等に支援金を交付する。交付額は利用率の増加量と総利用件数に応じて増加する。

 

全日病ニュース2024年3月1日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/topics/4byou/pdf/230502_2.pdf

    2023/04/28 ... 今般の政府のご方針に沿うためには、喫緊に医療・介護従事者. の賃上げを実現することが重要です。 一方、多くの介護施設においても、コロナ禍および物価 ...

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    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2022/220610_1.pdf

    2022/06/10 ... 新型コロナウイルス感染症の影響の長期化及びコロナ禍における物価高騰のため、コロ. ナの影響を受けている医療機関において、食材料費の値上げなど食事の ...

  • [3] 2023.12.15 No.1046

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2023/231215.pdf

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