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ホーム全日病ニュース(2024年)第1050回/2024年3月1日号医療機能に応じた入院医療を評価するため様々な見直し

医療機能に応じた入院医療を評価するため様々な見直し

医療機能に応じた入院医療を評価するため様々な見直し

【2024年度診療報酬改定】地域包括医療病棟を創設し高齢者救急の急増に対応

 2024年度診療報酬改定について、2面に引続き概要を紹介する。2024年度改定でも医療機能に応じた入院医療を評価するため、入院医療において様々な見直しが行われる。特に、地域包括医療病棟の創設は急性期入院医療の再編の可能性を内包するとともに、高齢者救急の受入れ先としての役割が期待される。
 地域包括医療病棟は、高齢者の軽症・中等症の救急搬送者が増加している中で、◇救急患者の受入れ体制◇急性期の一定の医療資源を投入◇早期退院に向け、リハビリ、栄養管理等を提供◇適切な意思決定支援◇在宅医療、介護との連携を包括的に提供する機能を備えることを想定した病棟だ。看護配置10対1に加え、療法士、管理栄養士、看護補助者(介護福祉士)による高齢者医療に必要な多職種を配置することを求める。
 点数は1日3,050点となった。90日を超えると地域一般入院料3の点数になる。平均在院日数は21日以内で、在宅等復帰率は8割以上、一般病棟からの転棟割合は5%未満、救急車の緊急搬送または他の医療機関で救急患者連携搬送料を算定し当該他の医療機関から搬送された患者の割合が15%以上などの要件が規定された(下表を参照)。
 一般病棟入院基本料の急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度」は大きく見直され、平均在院日数は「18日以内」から「16日以内」に短縮される。「重症度、医療・看護必要度」のA項目(モニタリング及び処置等)の「救急搬送後の入院等」の評価が2日間になることや、B項目(患者の状況等)の評価が廃止になったことによる現場への影響が懸念される。

ICUに医師配置を緩和した区分新設
 高度・専門的な急性期医療の実績を評価する入院基本料等加算の診療報酬項目に、急性期充実体制加算と総合入院体制加算があるが、総合入院体制加算から急性期充実体制加算への移行が進むと、小児科や産科、精神科の医療が脆弱になるとの指摘が出ていた。このため、急性期充実体制加算に小児科、産科、精神科の入院医療の提供に係る要件を満たす場合の加算を設けた。また、悪性腫瘍手術等の実績要件のうち多くの基準を満たす場合と、それ以外であって小児科または産科の実績を有する場合に応じた評価も設けた。
 特定集中治療室管理料については、SOFAスコアが一定以上の患者の割合を特定集中治療室の患者指標に導入し、評価を見直す。また、この患者指標と専従の常勤医師の治療室内の勤務を要件としない区分を新設する(特定集中治療室管理料5・6(8,890点))。
 後者は、医師の時間外労働規制の施行を背景に、特定集中治療室等で一定の医師の配置要件の緩和を図る対応だ。この区分においては、遠隔ICUモニタリングにより支援を受けることを評価する特定集中治療室遠隔支援加算(980点)を設ける。
 療養病棟入院基本料も大幅な見直しとなる。現行では、医療区分とADL区分に基づく9分類の評価体系になっている。これを疾患・状態に係る3つの医療区分、処置等に係る3つの医療区分及び3つのADL区分に基づく27分類及びスモンに関する3分類の合計30種類の評価に見直す。また、中心静脈栄養の評価が、「患者の疾患及び状態並びに実施した期間に応じた医療区分」になる。
 具体的には、医療区分3に該当する場合の中心静脈栄養の定義が、「広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻または急性膵炎を有する患者を対象とする場合または中心静脈栄養を開始した日から30日以内の場合に実施するものに限る」となった。医療区分2については、医療区分3に明記した患者の疾患・状態以外を対象として、「中心静脈栄養を開始した日から30日を超えて実施するものに限る」となった。
 そのほか、◇医療区分・ADL 区分ともに1である入院料27(従前の入院料I)について、1日につき2単位を超える疾患別リハビリテーション料を包括範囲に含める◇療養病棟入院基本料の注11に規定する経過措置を廃止する◇新たに経腸栄養を開始した場合に一定期間算定可能な経腸栄養管理加算を新設する。

回リハ病棟は施設基準の要件増える
 回復期リハビリテーション(以下、回リハ)病棟の見直しでも、賃上げ対応や施設基準の見直しによりそれぞれの点数が引き上げられる。例えば、回復期リハ病棟入院料1の場合、2,129点から2,229点への引上げとなる。
 追加の施設基準としては、◇回復期リハ病棟入院料1・2について、専従の社会福祉士の配置を要件化◇回リハ病棟入院料1・3について、FIMの測定に関わる職員を対象としたFIMの測定に関する研修会を年1回以上開催することを要件化◇回リハ病棟入院料1・2について、地域リハビリテーション活動支援事業等の地域支援事業に、地域の医師会等と連携し、参加していることが望ましいこととする◇回リハ病棟入院料1・2について、口腔状態に係る課題を認めた場合は、適切な口腔ケアを提供するとともに、必要に応じて歯科医療機関への受診を促す─などがある。
 FIMの測定は定期的(2週間に1回以上)に行い、その結果を診療録等に記載することも要件化される。回リハ病棟入院料1へのGRIM基準による栄養状態の評価も要件化される。また、体制強化加算は廃止となる。
 また、2024年度改定は、リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的な推進がテーマの一つとなっている。ADL低下の防止を効果的に行うため、より早期からの取組みの評価や切れ目のない多職種による取組みを推進する対応を評価する。
 具体的には、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(120点)を新設する。入院した患者全員に対し、入院後48時間以内にADL、栄養状態及び口腔状態に関する評価を行い、リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理に係る計画の作成及び計画に基づく多職種による取組み(土曜、日曜及び祝日に行うリハビリテーションを含む)を行う体制を評価する。これに伴いADL維持向上等体制加算(80点)は廃止される。
 また、病態に応じた早期からの疾患別リハビリテーションを推進するため、疾患別リハビリテーション料に急性期リハビリテーション加算(50点)を新設する。ADL・認知機能が低い患者、特定の医療行為を必要とする患者または感染対策が必要な患者に疾患別リハビリテーションを提供した場合の評価となっている。

 

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