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ホーム全日病ニュース(2024年)第1050回/2024年3月1日号猪口会長などが2024年度診療報酬改定の答申受け会見

猪口会長などが2024年度診療報酬改定の答申受け会見

猪口会長などが2024年度診療報酬改定の答申受け会見

【四病協・日医】「重症度、医療・看護必要度」の見直しや地域包括医療病棟創設の影響を注視

 四病院団体協議会は2024年度診療報酬改定の答申を受け、2月14日に会見を行った(日本医師会の見解は3面に掲載)。全日病の猪口雄二会長は、2024年度改定では、改定財源のほとんどが賃上げ対応に用いられることを指摘。食事療養の基準も引き上げられたが、賃上げ対応と同様に、増える費用に対する収入増であり、厳しい病院経営の改善には結びつかないことを強調した。看護配置7対1病棟の「重症度、医療・看護必要度」の見直しや地域包括医療病棟の創設が、医師の働き方改革の始まりとともに、地域の救急医療体制や急性期入院医療の再編につながる可能性があるとの考えも示した。
 猪口会長は、「今回改定も多項目にわたる見直しがあるが、我々にとって大きいことの第一は賃上げ対応だ。改定率0.88%のうち、(看護職員など医療関係職種への賃上げで0.61%、40歳未満の医師や事務職員などへの賃上げで0.28%が充てられ)0.89%が賃上げ対応であり、(生活習慣病の管理の評価等の適正化による▲0.25%を含めても)改定財源のほとんどが人件費に使われる。病院に対しては、対応分がきちんと人件費に還元されることが求められている」と説明した。
 その上で、「政府は賃上げを政策目標としており、その実現のため、診療報酬での対応を行った。それに対して我々がどれだけ応えられるかということは大事な点だ」と述べた。
 また、病院団体として、物価高騰・賃金上昇への対応を政府・与党に強く求めてきたことを踏まえ、物価高騰については、「2023年度補正予算などによる補助金が出ているが、(医療保険での対応として)入院時の食費の基準が1食30円上がったことは、とても大きい。引上げは約30年ぶりで、やっとこれだけ上がったということだが、(ここまで引き上げずに我慢していた外注の業者にとっては、引上げのタイミングになるので)人件費と同様に、病院には残らない。病院の経営状況が悪い状況は変わらない」との懸念を示した。
 高齢者救急の受け皿として、多職種を配置し、急性期医療やリハビリテーション、退院支援、在宅医療・介護との連携などの機能を包括的に提供する新たな病棟である地域包括医療病棟が創設されることにも言及。「新病棟が必要とされる趣旨は概念的にはよくわかる。一方、急性期一般入院料1の『重症度、医療・看護必要度』がかなり厳しくなったので、それとの兼ね合いで新病棟の評価をどう考えるかということになる。点数は1日3,050点であり、様々な加算を取ることもできる。経営への影響をシミュレーションして届出の必要性を考えることになるだろう。医師の働き方改革により、救急医療の状況が変わり得ることも考慮に入れる必要がある」と述べた。
 日本病院会の島弘志副会長も、賃金上昇・物価高騰への対応が一定程度行われても、病院の厳しい経営状況が改善しないことへの危機感を強調した。島副会長は、新型コロナ対応の補助金や診療報酬特例がなくなり、少子化・高齢化で外来・入院患者が減少している中で、医業収支が赤字の病院が増えていることを指摘。労働力の減少を背景に、人材確保の困難は継続する。質の高い医療を効率的に提供するためには、医療DXの推進は不可欠であるとの認識を示した。その意味では、今回改定の方向性には一定の理解を示した。
 また、地域包括医療病棟の創設については、「高い点数が設定されたが、高齢者救急の受け皿として機能するためには、トリアージを行う医療機関との連携が極めて重要であり、(第三次救急医療機関からの)下り搬送を含め、地域の救急医療体制の構築が必要である」と強調した。
 中医協委員でもある日本医療法人協会の太田圭洋副会長は、「現場に大きな影響を与える大規模な改定は避けるべきと中医協総会で主張してきたが、6年に1度の同時改定であったこともあり、特に入院医療に関して、大規模な改定となってしまった」と述べた。
 「重症度、医療・看護必要度」の変更に対し、「今回も(出来高点数の合計で計算される)医療資源投入量が高い患者を評価する観点で厳格化する見直しが行われた。しかし、中小病院は内科系が多く、手術件数は多くなく、患者は高齢者が多い。高齢者は手間がかかり、人手がかかる。病院のコストがきちんと検証されないまま、今回の見直しが行われた。今回の見直しでは当然、看護配置7対1を維持できなくなる病院が出てくる」と指摘した。
 7対1病棟の転換先の選択肢となる地域包括医療病棟については、「重症度、医療・看護必要度」の基準値を含め、「厳しい算定要件が設定されており、本当に現場にとって使いやすいものになっているかの確認が必要」とした。全体として中小民間病院に厳しい内容となっており、「(14日に)苦味が強いチョコレートをもらったような気分だ」との感想を述べた。
 日本精神科病院協会の平川淳一副会長は、賃上げ対応について、2022年10月から実施された看護職員処遇改善評価料の対象が救急医療を実施する医療機関の看護職員に限定されていたのに対し、今回の対応は精神科病院を含めすべての医療機関が対象となっていることを評価した。
 また、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進する観点から、精神疾患を有する者の地域移行・地域定着に向けた重点的な支援を提供するため、精神科地域包括ケア病棟入院料が新設されることが、精神科入院医療に与える意義を強調した。平川副会長は、「精神医療においても、サブアキュートの患者の受入れなどが評価される一方で、長期入院の患者が多い精神科病院にとっては、厳しい環境になっていく」と述べた。

 

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  • [1] 超高齢者の救急搬送とACP|第1044回/2023年11月15日号 HTML ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20231115/news06.html

    2023/11/15 ... 地域包括ケア病棟は、ポストアキュート、いわゆるサブアキュート、在宅 ... トリアージになりがち。その結果、高度急性期病院に搬送され、急性期病棟へ ...

  • [2] NEWS 12/1

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2013/131201.pdf

    四病院団体協議会は、高齢者の救急受入れ、在宅医療支援、医療・介護連携、ケアマネ. ジメント支援の機能を持って地域包括ケアシステムを下支えする中小病院を「地域 ...

  • [3] 積み重ねた独自の情報で医療崩壊に挑む

    https://www.ajha.or.jp/about_us/50years/pdf/50years_08.pdf

    の患者を24時間体制で受け入れる(Sub-acute)。 ・人員基準等. 医師・看護師は ... △トリアージの色により傷病者を分. ける。 徳島県ホウエツ病院で、2月28日全日病.

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