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ホーム全日病ニュース(2024年)第1058回/2024年7月1日号施設基準が厳しく地域包括医療病棟への転換が困難

施設基準が厳しく地域包括医療病棟への転換が困難

施設基準が厳しく地域包括医療病棟への転換が困難

【3病院団体調査】地域包括医療病棟入院料への移行調査(速報値)を公表

 全日病、日本病院会、日本医療法人協会の3団体は6月10日、「地域包括医療病棟入院料への移行調査(速報値)」を公表した。2024年度診療報酬改定で創設した「地域包括医療病棟」への転換を予定している病院は、回答した1,002病院のうち39病院で約4%にとどまることがわかった。
 施設基準が厳しいとの声が多数上がっており、厚生労働省から救済措置が示されたことの影響に期待しつつも、高齢者急性期入院患者受入れの量的確保が困難になることへの懸念を示している。
 3団体の加盟病院に調査を依頼し、6月3日時点で1,002病院から回答があった。救急搬送受入件数の状況をみると、ゼロ件が125病院、1~ 499件が313病院、500~ 999件が101病院、1,000件以上が463病院となっている。
 転換予定は39病院、検討中が141病院、転換予定なしは822病院だった。転換予定・検討中の病院の内訳は、急性期病棟全部転換が57病院、一部が91病院、地域包括ケア病棟のすべてが14病院、一部が7病院等。転換を予定する病院のうち、DPC対象病院は25病院、DPC非対象病院は14病院である。
 転換予定・検討中である理由をきくと、「急性期一般入院料1を維持できないため」が53病院で最も多い。次いで、その他の33病院を除くと、「増収・入院患者の確保が見込めるため」(27病院)、「地域や患者のニーズに合わせるため」(21病院)の順で多くなっている。また、「DPCを維持できない」との回答も9病院からある。
 一方、転換しない理由では、「現在の病棟機能を維持できるため」が442病院で最も多く、次いで「示された施設基準を満たせないため」(324病院)、「転換できる病棟を有していないため」(21病院)となっている。
 施設基準に関しては詳細に調査した。それによると、「『重症度、医療・看護必要度』の該当患者割合(必要度Ⅰで16%、必要度Ⅱで15%)と、入棟患者のうち入院初日に『B 項目3点以上』に該当する割合が50%以上」を満たせないという回答が多かった。
 続いて、「救急搬送の割合が15%以上」「平均在院日数21日以内」「在宅復帰率8割以上」「一般病棟から転棟したものの割合が5%未満」「ADLが入院時と比較して低下した患者割合5%未満」「常勤のPT、OTまたはSTが2名以上、専任の常勤の管理栄養士1名以上」「包括的な入院医療及び救急医療を行うにつき必要な体制を整備していること」「看護職員10対1」を満たせない病院が多かった。
 「地域包括医療病棟」に対する意見として、「地域包括ケア病棟への転棟が在宅復帰の対象とならない」「施設基準が厳しすぎる」「地域包括医療病棟の点数設定が低い」ことの改善を求める意見があった。
 調査結果の総評では、2024年度改定で急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度」の厳格化などにより、急性期一般入院料1を満たせなくなった病院が生じる一方で、「地域包括医療病棟」の施設基準が厳しすぎるため、移行しにくいことを問題視した。
 「地域包括医療病棟」は地域の医療提供体制において、特に要介護等の高齢者救急医療の受入れ先として創設された。しかし、届出ができなければ、地域医療で高齢者急性期患者の受入れ先の量的確保ができなくなる可能性がある。
 一方、5月31日の疑義解釈(その7)で、「施設基準を届け出たものの、一時的に特定の要件を満たすことが難しくなった場合、3か月を上限として、実績の対象期間から除外することを認める」ことになった。これについて、今回の調査で明らかになった「地域包括医療病棟」への移行困難な現状に対する一定程度の救済措置になるとの期待を示した。
 その上で、今後とも急性期一般病棟を中心とした「地域包括医療病棟」への届出移行の実態を継続して調査するとともに、高齢者急性期入院患者の受入れ動向を注視する考えを示した。

 

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