全日病ニュース

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特定行為 手順書の記載事項で事務局案の4項目を了承

特定行為
手順書の記載事項で事務局案の4項目を了承

【看護師特定行為・研修部会】
41の行為案は12行為についての議論継続を確認。特定行為区分は一定の結論

 研修を修了した看護師が手順書にもとづいて特定行為を実施する制度の具体案を検討している医道審議会の「看護師特定行為・研修部会」は、10月2日の会合で、(1)特定行為とする診療補助の内容、(2)研修単位とする特定行為の区分、(3)手順書について議論。
 特定行為区分に関して一定の結論を得たほか、手順書の定義と記載事項は事務局(厚労省医政局看護課)が示した案で臨むことで合意した。手順書の記載事項は、今後、省令で正式に定められる。

 部会の議論は、まず、本制度における「医師(歯科医師)と看護師の法的責任」の確認から始まった。これは、前回(9月10日)の議論で委員の間に共通認識ができていなかったことが判明したため、事務局が省としての見解を明確にしたもの。
 配布資料には、「特定行為の実施で事故が発生した場合の責任は個別の事例に応じて司法判断により決められるが、指示を出した医師(歯科医師)と特定行為を実施した看護師は、それぞれ個別具体的な状況における過失の有無に応じて責任が判断されることになる」(要旨)と明記され、部会はこの見解をあらためて確認した。
 次に、特定行為として省令に書き込まれる41項目のうち「特に検討が必要な12項目」の取り扱いをどうするかが議論された。
 「12項目」とは、昨年10月のチーム医療推進会議で合意した41の特定行為案に対して、関係方面からの意見にもとづいて「とくに注意を要する行為」を12件抜き出したもの。前回も議論されたものだが、議論を次に進める上で合意の積み上げが必要なことから、再度の議論となった。
 12項目を特定行為から除外することを求める意見がある一方、例えば、在宅系の委員からは「41の行為には急性期で求められるものが多い」「ほとんどが病院現場で必要な行為だ」といった違和感が示され、「特定行為を見直す期限を明確にしてはどうか」という注文も出るなど41項目そのものへの疑問も提示され、議論は再び制度創設で合意する前に戻りかねないものとなった。
 ただし、多数の委員は既定の方針として、12項目を含む41項目をもって制度の具体的な設計を進めることを支持したため、桐野座長(国立病院機構理事長)は「12項目以外は了承とし、次回また議論したい」とする一方、「多くの委員は41項目を了承したと理解する」として、「(本日の)以降の議論は41項目を前提に進める」と締めくくった。
 議論は、特定行為に関する研修のプログラムを組む基となる、特定行為をその類似性で分けて研修の最低単位とする「特定行為区分」の検討に移った。
 「特定行為区分」について、事務局は2つのパターンからなるA・Bの2案を提示した。両案を比較検討した意見が示される中、桐野座長は早い段階で「皆さんの意見によるとA案に沿って考えていくことになる」とまとめたが、岩澤看護課長は「とりあえず仮の結論ということにして、また議論してはいかがか」ととりなした。
 3つ目の議題である手順書は、議論当初「プロトコル」と称されていた。医師の包括指示を具体的指示に落とし込む“作業指示書”ともいうべきもので、これによって個々の特定行為を実施する上での安全性が確保される。
 したがって、手順書の記載事項が法令化されることによって、当該各看護師は、特定行為を実施する上でのスタンダードを得ることができる。
 6月に成立した医療介護確保推進法で改正された保健師助産師看護師法は、手順書を「医師又は歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるためにその指示として厚生労働省令で定めるところにより作成する文書又は電磁的記録」と定義。
 そこに記載すべき内容を「看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲及び診療の補助の内容その他の厚生労働省令で定める事項」と規定している。
 その「省令で定めるその他の事項」をどうするかということで、事務局は、①手順書の対象となる患者、②特定行為を実施するに際しての確認事項、③医師(歯科医師)への連絡体制、④行為実施後の医師(歯科医師)への報告方法、という4項目を提案した。
 手順書は実施が見込まれる特定行為ごとに作成する。では、この手順書は誰がつくるのか。桐野座長は「各病院が現場の状況を踏まえてつくるが、直接には、医師と(特定行為を実施する)看護師が話し合って詳しいことを記載することになる」と説明した。
 「病院はよいが、(在宅医療を手がける)診療所が手順書をつくるのは大変だ。地域共通の手順書があってもよいのではないか」との意見に、事務局は「省令は手順書のエッセンスを項目で示すものだが、連絡体制等の書き振りをどうするか検討したい」と答えた。
 委員からは「日本救急医学会のプロトコルのような精緻なものが必要」「各病院で違った対応になるのではないか」といった声もあがったが、神野委員(全日病副会長)は「連絡体制や報告方法は各病院で違うだろうが、それ以外はある程度標準化してもよいのではないか」と発言。各病院の手順書は記載事項を原則的に一致させることで一定の質を確保すべきとの見解を表わした。
 桐野座長は「(事務局が提示した)4項目でよいとしたい」と議論をまとめた。
 神野委員は、また、医師の個別的指示にもとづいて特定行為を実施する一般の看護師に対する院内研修は努力目標ではあるものの、法的義務ではないこと、したがって要件等の縛りがないことの確認を求めた。
 この質問に、事務局は「ご指摘のとおりである」と答えた。