全日病ニュース

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新型法人で厚労省が踏み込んだ論点と考えを示す

新型法人で厚労省が踏み込んだ論点と考えを示す

【医療法人の事業展開等に関する検討会】
幅の広い参加法人の類型、多岐にわたる論点課題で、早期の意見集約は困難か

 10月10日の「医療法人の事業展開等に関する検討会」に、事務局(厚労省医政局医療経営支援課)は、新型法人(新たに「地域連携型医療法人」と仮称)の一歩踏み込んだイメージと論点を提示し、議論の深化を図った。
 事務局は、また、持分のない医療法人(社会医療法人と特定医療法人は除く)に株式会社と同様の分割を認める考えを示し、賛否を求めた。(議論の詳細は11月1日号に続報)

 事務局は、新型法人の具体像を描く新たな論点として、以下の考え方を提示した。
(1)事業対象とする地域範囲は新型法人が定めて都道府県知事が認可する。
(2)新型法人には個人(診療所・病院)も参加できる。
(3)複数地域で病院等を開設している法人は当該地域の病院に限って参加を認める。自治体病院等も同様とする。
(4)社団型の場合に社員総会は各社員1議決権とする。
(5)新型法人に対する参加法人の関与は、①意見聴取・勧告を行なうという一定の関与、②協議・承認(不承認の場合は修正を指示)を行なう強い関与の、いずれかの選択制にする。
(6)新型法人の理事に地域の関係者を任命する。
(7)新型法人は原則として出資はできず、剰余金配当の禁止と残余財産の帰属先は現行医療法人制度と同様とする。
(8)新型法人の主な業務は複数の法人等における統一的な事業実施方針の決定とする。
(9)新型法人は参加法人等に資金貸付はできるが、贈与は認めない。
(10)新型法人に外部監査やHP等による財務諸表の公告を義務づける。
 事務局は、以下の点については、論点の提起にとどめた。
(11)地域内の介護事業実施者の新型法人への参加の是非。
(12)新型法人の理事長要件。
(13)参加法人等からの管理運営経費の徴収の是非。
(14)関連事業(介護・共同購入等)を行なう株式会社への出資(一定条件を付することも含めて)の是非。
(15)新型法人自身が病院等を経営することの是非。
 このうち、(3)は、例えば国立病院機構などの全国組織を想定し、その構成病院が当該事業地域で新型法人に参加できること、さらに、県立病院の場合も、個々の病院が当該事業地域の新型法人に参加できることを意味する。
 では、それら全国組織と新型法人との間に方針をめぐる意見の違いが生じた場合はどうするか。事務局案は両者の間に「調整規定を設けた上で参加を認める」とした。
 その前提には、当該事業地域であれば大学病院や市立病院等も参加可能とする考えがある。医療法人や社会福祉法人とも異なる開設主体の参加は政府の「日本再興戦略改訂2014」が求めていることでもあり、そのために、例えば、大学病院であれば、文科省が関連する法規定の改正を図ることになっている。
 構成員からの「地域連携型医療法人は医療法人の1類型と考えていいか」との質問に、事務局は「現在の医療法人の1つに位置づけることを念頭においているが、法制上の問題として、医療法に書き込むか否かはまだ検討中だ」と述べた後、「医療法を念頭に置きながら、新型法人の特殊性があればそれを反映した対応が必要かと…」と言い添えた。
 つまり、医療法人の1類型として医療法に規定することを「念頭において」はいるが、新型法人の特殊性をどう反映させるかを考えたときに、法制上の取り扱いとしてそれが適切であるか否かの結論を出し切れていない…というわけである。
 税法上の取り扱いを考えれば、新型法人は医療法に明記される必要がある。そして、参加法人が医療法人だけであれば新型法人は医療法人で何ら問題がない。
 しかし、仮に、自治体、大学法人、独立行政法人(国立病院機構)等を開設者とする病院が新型法人の位置につく可能性を考えると、それを一律に医療法人と規定していいか、関係部局あるいは省庁との調整がついていないこともあり、事務局は歯切れのない答弁になったものと思われる。
 この問題に関連して、抜本的な制度改革が予定されている社会福祉法人を代表する構成員から、難解な質問が出た。社会福祉法人には、来春の通常国会に提出する社会福祉法改正で、公益法人と同等以上の経営組織、運営の透明性、余裕財産の福祉サービスと地域公益活動への再投下など公益性を担保する財務規律が課せられる。
 そうした“公益並みの法人”と持分ある医療法人とが新型法人の下でグループを組んだ時に、新型法人を迂回するなどによって、社会福祉法人から持分ある医療法人に資金移動を行なうことは認められるのかという問題提起であった。
 社会福祉法人の構成員は、また、参加法人の間には課税・非課税の別があり、会計基準も異なる中、新型法人として連結した財務諸表の作成・公開は可能かとも疑問を呈した。
 新型法人に関する事務局の具体案は、これまで全体像が漠として隔靴掻痒の感があった中、あるいは議論の加速に資するものかとも思われたが、新たな論点は、具体的に議論すべき課題が多くかつ複雑なことを改めて明らかにしたに過ぎなかった。そのため、議論は逡巡を余儀なくされ、早期の意見集約の難しさを浮き彫りにした。